2012年03月27日(火)

『ビブリア古書堂の事件手帖2 栞子さんと謎めく日常』

テーマ:ミステリーとか

『ビブリア古書堂の事件手帖 2 栞子さんと謎めく日常』  三上 延/著、 メディアワークス文庫(2011)


古本とその古本に係わる客に秘められたミステリーを解く物語。連作短編集。シリーズ2作目。


探偵役は、古書店主の篠川栞子さん。

助手は、店員の五浦大輔23歳。←本作のナレーター、ワトソン役である。


前作は娘の同級生に借り、今作は勤務先の同僚に借りた。 1作目の記事はコチラ


プロローグ 坂口三千代 『クラクラ日記』 文芸春秋・Ⅰ

第一話 アントニー・バージェス 『時計仕掛けのオレンジ』 ハヤカワ文庫NV

第二話 福田定一 『名言随筆 サラリーマン』 六月社

第三話 足塚不二雄 『UTOPIA 最後の世界大戦』 鶴書房

エピローグ 坂口三千代 『クラクラ日記』 文芸春秋・Ⅱ



前作に比べると主人公栞子さんの現実離れした鋭すぎる推理は影をひそめ、少々現実的になった。リアルになった。より身近になった。

だが、『時計仕掛けのオレンジ』の章は偶然が過ぎた。そう来るだろうとは思ったけど・・・。


第三話とエピローグの流れは、シリーズ全体に仕掛けられた謎に繋がっている?

シリーズ全体の謎=栞子さんの母親に係わる謎解きへの伏線が今作で張られた?と考えると、三作目以降も結構楽しめそう。

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2012年03月25日(日)

『ねじまき少女』

テーマ:ファンタジー・SFとか
THE WINDUP GIRL (2009)
『ねじまき少女』  パオロ・バチガルピ/著、 田中一江・金子浩/訳、 ハヤカワ文庫SF(2011)


SFはね、物語舞台の科学的設定・世界観が肝心だと思うわけです。


遺伝子操作の弊害が顕在化した時代にあって、疫病と農作物の伝染病の蔓延により、耐性のある遺伝子組み換え食品しか栽培できない世界。そんな世界を支配するのは幾つかのバイオ企業。

石油の枯渇によって動力源をゼンマイに頼ることになった世界。ゼンマイを巻くのは、象を遺伝子操作することによって誕生させたメゴドントと呼ばれる巨大動物。メゴドントを使役して機器を駆動させる。



中国、EUが分裂し、アメリカが消滅し、ベトナムが崩壊し、ミャンマーが飢餓に喘ぐ中、遺伝子バンクを有するタイ王国は生き残っている。

だが、地球環境の変化による海面上昇、それによる水没の危機に晒されているタイ王国の首都バンコク。

遺伝子バンクを取引材料として、世界的バイオ企業との協調関係を基盤としてタイ王国の生き残りを図ろうとする一派=通産省。

タイ王国に流入しようとするあらゆる物資の遺伝的汚染を阻止すべく、外国産物資や外国人に対する検閲を受け持つ環境省。

両者が対立するタイ王国の政情。



とまァ、物語の舞台設定はかなり複雑。

だが、近未来の一つの形として納得できる世界観である。作品に流れる退廃的な雰囲気もイイ。SF作品としては、申し分のない世界を構築しているのだろう。相当の成功を収めているのだと思う。

でなければ、SF作品に与えられる権威ある賞を幾つも受賞することはなかっただろう。



だが、私の場合、私の理解度の低さもあって、この作品世界に入り込むのに下巻半分までのページ数を必要としてしまった・・・。3/4も。

しかも、この世界観の舞台で演じる登場人物たちに対し、共感なり反感を抱けるようになるまでには更にページ数を費やすこととなった。その頃には、物語はクライマックスに至っていた・・・。



主要登場人物。

環境省の理念を意図的に曲解し、外国産物資と外国人の排斥を強硬に実践する部隊“白シャツ隊”の隊長ジェイディーと副官カニヤ。

バイオ企業幹部として、タイ王国の遺伝子バンクへの接触を図ろうとするアンダースン・レイク。

アンダースンが隠れ蓑として経営するエネルギー生産工場の経営・経理を手伝うイエローカードと呼ばれる中国人難民ホク・セン。

そして、“ねじまき少女”エミコ。 “ねじまき”とは遺伝子工学によって作り出された日本産アンドロイドで、ぎくしゃくとした動作ゆえにそう呼ばれる。



この物語世界で、いったい誰に焦点を当てて読めば良かったのか???

どの登場人物へも感情移入ができないまま物語は終わってしまった。。。

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2012年03月11日(日)

『野蛮なやつら』

テーマ:ミステリーとか
SAVAGES (2010)
『野蛮なやつら』  ドン・ウィンズロウ/著、 東江一紀/訳、 角川文庫(2012)

カリフォルニアのラグーナ・ビーチ育ちの2人の若者ベンとチョン。彼らは極上のマリファナ栽培と売買で成功を収めている。彼ら2人の幼馴染みのオフィーリア嬢はどちらとも関係を持ちながら、3人は巧くやっている。

この3人が一方の当事者。


もう一方の当事者たちはメキシコのバハ麻薬カルテル一味。女頭目のエレナ・ラウテル。カルテルの保安部長、要は暴力部門担当のラド。この2人が、ベン&チョンの強力な敵となる。

物語の全体像は極めて単純。麻薬がらみの抗争劇だ。


文学性だとか、ちょっとした教訓めいた話をまぶしたりだとか、読者に感動を与えようとか、そんなことは一切考慮されていない、ブレのない徹底したエンターテイメント作品。潔い。

主人公3人のキャラクターを前面に押し出したキャラ小説でもある。

下品な犯罪小説でハチャメチャ。

だが、ポップ。勢いがある。


登場人物がラップしていたり、クロスオーバーしていることはないが、同著者の作品 『犬の力』 『フランキー・マシーンの冬』 の世界と通じている。

続編は、これら2作品とリンクするらしい!?

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2012年03月10日(土)

『冬の灯台が語るとき』

テーマ:ミステリーとか
NATTFAK (2008)
The Darkest Room (2009)
『冬の灯台が語るとき』  ヨハン・テオリン/著、 三角和代/訳、 ハヤカワ・ポケット・ミステリ(2012)

3月も、もう10日か。今月初めての記事・・・。


それにしてもコレ、いいよ~っ。


スウェーデン南東部沿岸に位置し、本土とは1本の橋で繋がれているエーランド島。南北に長く伸びるこの島の冬を舞台にしたミステリ。


単純なミステリではない。この島の地理的条件や文化・歴史などが密接に関わり、非常に奥深い物語が構築されている。

物語の歴史的要素を担う象徴として配置されているのが、エーランド島の東海岸に隣り合って立つ2つの灯台。そして、その灯台の近くには一つの屋敷がある。かつては、灯台を建てるために集められた職人たちが宿にしていた場所であり、その後は灯台守の家族が暮らしていた所でもあり、今は、物語の主人公家族が新たに移り住んだところである。

主人公はヨアキム・ヴェスティン。その妻カトリン。6歳の娘リヴィア。2歳半の息子ガブリエル。一家は首都のストックホルムから移ってきたばかり。夫婦で家の改修や内装を手掛け、徐々に住み良い環境に仕立てているところだ。


物語は、カトリンの母で画家であるミルヤ・ランベの手記で始まる。

ミルヤの手記は、カトリンに向けて書かれたものだ。ミルヤの描いた本の内容は、灯台と屋敷、そしてそこに関わった人々の歴史についてだ。ミルヤ自身、かつて母(カトリンにとっては祖母)と二人で、灯台に隣接する屋敷で暮らしていたことがあったのだ。

ミルヤが書いた灯台と屋敷とそこに暮らした人々の悲喜劇。幾つもの年代の物語が、現代のヴェスティン一家の物語の間に差し込まれ、それら昔の死者たちの話が現代の主人公たちの物語に関わってくる・・・。


現代劇の冒頭部。

ケチな屋敷荒らし3人組が物語に登場し、そいつらがヴェスティン一家にどのように関わってくるのだろうと想像する。ヴェスティン一家に待ち受ける悲劇が予想され、感情が泡立つ・・・。

しかし、物語前半部では、泥棒たちはまだヴェスティン一家に関わらない。一家は大丈夫だ、とホッとする気持ちに振れる。しかし突然、別の悲劇が一家に襲い掛かる。この場面で、感情は一気にネガティブな側に振れ戻る。


前半部。

悲劇に見舞われたヴェスティン一家、そこに追い打ちをかけるように起こる屋敷の異変、娘リヴィアが呼びかける影、これらの話を読んでいるときの感情は、まるで長く緩い下り坂を進むように、ゆっくりとネガティブな方に傾いて行く。感情の動きは決して早くも大きくもないのだけれど、気持ちは確実に落ち込んで行く。

これから本書を読もうと思っている方はココを乗り切っていただきたい。後半部・クライマックスには、静かだが確実に心動かされる物語の展開が待ち受けているから・・・。この前半部の物語が活きてくるから・・・。


後半部。

主人公は、自分たちが暮らすこの屋敷と灯台に関わった死者たちの気配を感じながらも、徐々に日常の生活を取り戻して行く。

灯台と屋敷に関わった人々のことをもっと知りたいと思うようになった主人公は、島の歴史に詳しい一人の老人と知り合う。この老人こそ、著者の前作『黄昏に眠る秋』 にも登場したイェルロフ老である。

イェルロフと、彼の死んだ兄の孫でエーランド島に赴任してきたばかりの婦人警官ティルダ。彼ら二人が密接に物語に関わってくる後半部は、ミステリ的要素の濃いプロットに変化してくる。さらに、物語に及ぼす死者たちの影も濃くなってくる・・・。

後半部を読んでいる時の感情は、前半部を読んでいる時とは反転し、プラス側へと徐々に移行する。


クライマックス。

この物語に隠されてきた謎と秘密<現代と過去の>がじわじわと明かされる過程が丹念に描かれる。

そして、あの泥棒3人組が、ヴェスティン屋敷に存在すると云われる絵画---<カトリンの母ミルヤが画家であるのは、ミルヤの母(カトリンの祖母)もまた画家であったことの影響だった>---を目当てに侵入を企てる。

死者が現世に甦って来ると云われるクリスマス、エーランド島を襲った冬の大嵐・猛吹雪の晩、ヴェスティン一家と泥棒たちと婦人警官ティルダ、それぞれの思惑と行動が交錯する晩、物語は一気にサスペンスする。

エピローグ。

最後の謎が明らかになると共に、ヴェスティン一家の将来に光明が見えて物語は閉じられる。


いや~っ、ホント、コレ良かった。

年度末の仕事の合間あいまの空き時間を見つけて読んでいたものだから、読み終えるのに1週間も掛かったんだけど、その間は本書を開く瞬間が実に待ち遠しかった。

早くも2012年のトップ10入り確実の作品が現れた(と思う)。

お薦めです。


さらに嬉しいことに、「エーランド島ミステリ」は4部作なのだそうだ。第3作春編は、本国ではもう上梓されているそうだ。



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