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2008年04月28日(月)

『Y氏の終わり』

テーマ:ミステリーとか
The End of Mr.Y (2006)
『Y氏の終わり』  スカーレット・トマス/著、 田中一江/訳、 Hayakawa Novels(2007)

19世紀イギリス文学界の異端、トマス・ルーマスという作家によって描かれたとされる 『Y氏の終わり』 という一冊の本。読んだ者は死ぬ、とされる呪われた本。

博士号取得過程の学生である主人公アリエルが、偶然この本を手に入れたところから物語りは動き出し、読者を迷宮へと誘い込む・・・。


主人公アリエルは、現代と仮想空間を行き来し、『Y氏の終わり』を付け狙う謎の男たちの正体、行方不明となった指導教官の行方、そして彼女自身がみているこの世界の心象、などの謎を追う (・・・・謎から逃げる、と言った方がいいかもしれない?) わけだが、この物語の進行の過程で出てくるのが、次のような言葉。


言葉と暗喩。

電子とクォーク。

多次元宇宙、パラレル・ワールド。

ホメオパシー、万能薬。

デリダ、ハイデッガー、ボードリヤール、シュレーディンガー。

・・・・・・・・・

SF?、オカルト?、ミステリ?

物理学?、哲学?、神学?   ジャンル間を渡り歩く不思議な物語だ。。。



“トロポスフィア”という仮想空間のアイデアが秀逸だった。

主人公アリエルと引退した女性学者ルーラ。クライマックスで、この2人の女性の間で交わされた、「思考=物質」という、私にとってはかなり意外だった哲学的かつ科学的な展開。

このような観点でこの物語を構築した著者の独創は“スゴイ!”としか言いようがない。これだけの独創性を発揮しながら、ストーリー、プロットを破綻させていない。

トロポスフィアという舞台の設定(理屈)が非常に良くできているため、クライマックスからラストにかけてが実に面白くなっていった。


ここ何年かで読んだ小説の中では最も異質だった! 最初は取っ付き難かったが、ひとたび物語世界に没頭できてからは、そこからはジェット・コースターだった。
哲学・神学やら思想史にまったく無知な私でも面白く読めた。 お薦めです。

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2008年04月25日(金)

『ぐるりのこと』

テーマ:エッセイ・随筆とか
『ぐるりのこと』  梨木 香歩/著、 新潮文庫(2007)


思ったこと、感じたこと、考えたことを言葉や文章にするのは、なんと難しいことだろう。

恐らくは、自分の頭の中で渦巻く事柄の数千分の一、数万分の一でさえ、表出させることができない。

脳内で発火したニューロン、シナプスのネットワーク化、これらの働きのうちの殆どが表に出ずに消えてなくなっているに違いない。ホンの僅かの瞬間、生き残ったシナプスのネットワークのごくごく一部・断片だけが、言葉や文章として出てくるのだろう・・・・・私の場合・・・・・何とも、もどかしい限りである。


ところが、梨木さんは、頭の中のことを表に出すのが、実に旨くて巧くて上手い。(さすがプロの作家さんだ。)

些細な日常の風景。旅行先で出会ったヒト。報道された事件。その他もろもろ・・・。梨木さんは、それらについて、些細なことに注視し、真面目に深く考える。考えたこと、思ったことを文章にする。

繊細な感性を持ちながら、それでいて思索に際しての立ち位置が明確で強固なので、彼女の言い分がわかり易く、共感もできる。



さて、この本の中で比較的大きな weightを占めて表現されていたのが“境界”という言葉であった。


個と群

自分と他人

日常と非日常

西欧(キリスト教文化)とイスラーム(ムスリム)

今と昔

連続と断絶

・・・・・・・・


境界・・・、私の場合はどうかな?などと、なんとなく考えてしまう・・・


自分は自分、という立場を前面に出しがちで(というか、自分勝手で)、少々周りと噛み合わなくてもあまり気にしない私。

一方で、会社という組織に属さなければ日々の糧が得られないものだから、組織の都合にも合わせる私。あるいは、自分の意に介さなくても、他人様(世間)との軋轢が面倒なので、手っ取り早く大勢に迎合する私。

このように、通常は、自分(個)と世間(群)との境界を、時と場所によって使い分ける。使い分け自体がいけないことなどとは少しも思っていない。ただ、その使い分け方が私自身の中で一貫しているか? 自分で納得できているのか? そこが問題だ。(他人様にとってはどうでもいいことだが・・・)


梨木本を読んだ後は、少しだけ余計なことを考える・・・




【これまでに読んだ 梨木香歩 作品】

『西の魔女が死んだ』

『からくりからくさ』

『りかさん』

『家守綺譚』

『エンジェル エンジェル エンジェル』

『村田エフェンディ滞土録』
『春になったら苺を摘みに』

『裏庭』


梨木本総括:「スキのある文章・・・」



これで、今のところ、文庫で出ている梨木さんの本は全部読んでしまったようだ。(もし、他にもあるようだったら教えてください。)

次は、「糠床」の話でも読んでみようか???


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2008年04月19日(土)

『袋小路の男』

テーマ:なんでも読んでみよう

『袋小路の男』   絲山 秋子/著、  講談社文庫(2007)


絲山秋子作品を読んだのは、これで二作目。 以前読んだのはコレ


■袋小路の男

■小田切孝の言い分

■アーリオ オーリオ     という3つの短編が収録されている。


この作品、「WEB本の雑誌」で7人の評者のうち5人が☆☆☆☆☆(満点)を付けていた

この本に関しては、どうやら私と世間との間には隔たりがあるようだ。


最近は、世間で評判の作品を読んで、そこそこ面白いと思えるものが増えたように思っていたのだが・・・?


この作品が面白かったら、次は芥川賞受賞作品を読もうと思っていたのだが、しばらくはいいや。。。
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2008年04月18日(金)

『ウエンカムイの爪』

テーマ:ミステリーとか

『ウエンカムイの爪』 熊谷達也/著、 集英社文庫(2000)


『邂逅の森』 が面白かったので、読み終わった後直ぐにこの作家の作品を2冊入手した。そのうちの1冊。

熊谷達也氏のデビュー作。


脱サラした動物写真家の吉本が北海道の山中でヒグマに遭遇する。

ヒグマに襲い掛かられるかに見えた寸前、吉本とヒグマの間に現われた若い女。彼女はヒグマの前に立ちはだかり、手を掲げ、不思議な言葉(?)をヒグマに投げ掛ける。

ヒグマは森の中に帰り、女もまた森に消える。九死に一生を得た吉本・・・。


著者が、ヒグマとヒトの闘いを通して描いていることは、ありきたりのことかもしれない。。。けど、読ませる。


200ページ足らずの薄い本。無呼吸で読めてしまう。

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2008年04月16日(水)

『路上観察学入門』

テーマ:なんでも読んでみよう


『路上観察学入門』  ちくま文庫(1993)


今でこそ、マンガやアニメなどに代表されるポップカルチャーが、「オタク文化」などと云って、国を挙げて(権威筋に)もてはやされているが、この本に記事を載せている面々は、そんなポップカルチャーやサブカルチャーなどにカテゴライズされたものの枠をはるかに超えたところに、既に数十年も前から目を付け、興味を持続させ、それらの観察と記録を実践してきている。



いい年した大人が、一見遊びかとも取れる事を大真面目に行う。他人にとっては無価値であるが、自分達の価値観に合致するもの、面白いと思えるものに対する強いコダワリを持つ。

風変わりで奇天烈であるが博学。・・・とにかく博学、とてつもなく博学。

そんなとんでもない人達、日本のエンサイクロペディスト達が、“考現学”とか“路上観察”について書き、語った歴史的な書物である。


かねてから、密かに読まなければならないと決めていた本。それを今更ながらに読んだ。確かに名著であった。


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2008年04月12日(土)

『邂逅の森』

テーマ:ミステリーとか



『邂逅の森』  熊谷 達也/著、 文春文庫(2006)


私が毎日使うターミナル駅の本屋では、ずいぶん前からこの本を平積みにして“パワープレイ”している。

おそらく面白そうだと、私の嗅覚も察知いていたのだが、2月・3月は仕事の繁忙期であったせいで、新刊の購入は控えていた。そんなところ、先週末、「ブ」で発見した。


実際、ページをめくる手が止まらないオモシロ本だった。


大正から昭和初期、東北地方の寒村に生まれたマタギの男の半生を描いた物語。

獣を殺め、様々な糧を山から得ながら生き、家族を支える・・・、山の神を敬い、掟に従い、仲間たちに忠実なマタギの男たち。

様々な生い立ち、背景を抱え、一日中太陽を浴びることなく地下深くで働く鉱山の男たち。

山奥の貧しい村に生まれ、売られていく娘。その娘のその後。

こういった人間たちが実に良く描けていると思う。


主人公の富治(とみじ)という男の生き方、富治の妻になる女の想いに揺さぶられる。


いい歳した大人が読んで、何かしらの感慨深いものを抱くことのできる作品。お薦めです。

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2008年04月11日(金)

『現代数学小事典』

テーマ:自然科学とか
『現代数学小事典』 (ブルーバックス)

第Ⅰ章 数学基礎論

第Ⅱ章 代数学

第Ⅲ章 解析学

第Ⅳ章 幾何学

第Ⅴ章 トポロジー

第Ⅵ章 応用数学


数学そのものの理屈もさることながら、このような数学が出来上がってきた経緯・歴史と、それらに関わった多くの数学者たちについてページを費やしている。これが結構、読み物として面白い。

なぜか、このような数学やら科学やらの開発史を読むのが好きだ。


全部を通読したわけではないが、会社の机の引き出しに入っていて、ときおりパラパラめくっては、1人の数学者に関する箇所を順番に読んでいく。仕事の合間の息抜き。


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2008年04月07日(月)

『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』

テーマ:ファンタジー・SFとか
DO ANDROIDS DREAM OF ELECTRIC SHEEP ? (1968)



『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』 フィリップ・K・ディック/著、 浅倉 久志/訳、 ハヤカワ文庫(1977)


映画「ブレードランナー」の原作としてあまりにも有名な作品。


映画は何度も見た。お気に入りの一つ。映画の方が気に入りすぎていて、原作を読んでガッカリしないか心配だった。

通常は、後から映像化された方が気にいらなくて、原作本の方に肩入れしてしまうことが多い。

この作品は通常と逆のパターンになるのがイヤで、原作本には手を出さないでいた。


まァ~、映画と本は別モノとして観て、読めば、そんなに構えるほどのことではない。

この原作本、まァーまーな出来栄えといえる。


原作本では、人間とアンドロイドの相違はなにか? について、エモーショナルな観点を前面に出している。

読み物として、こういった観点に重心が寄るのは当然のことだろう。

今の時代だから、“当然”と思えるが、この本が上梓された1968年としてはこういった解釈の仕方は画期的だったのかもしれない!?

(なんせ、アポロ11号が月面着陸する前の年だもんなァ!)


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2008年04月04日(金)

『イッツ・オンリー・トーク』

テーマ:なんでも読んでみよう


『イッツ・オンリー・トーク』  絲山 秋子/著、 文春文庫(2006)


「イッツ・オンリー・トーク」 と 「第七障害」 の2編の中編が収納された薄い本。

表題の方はデビュー作だそうだ。

その表題作 「イッツ・オンリー・トーク」 が圧倒的にイイ。 「第七障害」の方はどうでもイイ。


出だしが抜群。 “いい加減冬に飽きた”なんて、いいセリフだ。“冬に飽きた”のが、その後の行動に対する何の理由にも、何の動機付けにもなっていないところがイイ。


全体的に乾いた文体で、主人公の女性の内面をアッサリと書いている。こういう描き方は好みだ。どことなくブコウスキーぽいところも感じられた。


解説を書いている書店員の方が言っていた、“絲山B” の作品だったら他のも読んでみるかな。

・・・と言いながら、どれが、“絲山B”の作品なんだか判らないナ・・・


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2008年04月03日(木)

『宗像教授異考録 第七集』

テーマ:マンガとか

『宗像教授異考録 (7)』  星野 之宣/著、小学館ビッグコミックススペシャル(2008)


半年ぶりの宗像教授。

この第七集にも3篇の中編が収録されている。


■第1話 「赤の記憶」

やはり、第4集に登場した魔女(?)イザベラが登場した。

宗像教授とイザベラは、岩手県の山奥の寒村に住む老婆の話を聞きに訪れた。が、その老婆は今朝、亡くなったという。。。その晩、宗像とイザベラは村人たちから襲撃される・・・。

グリム兄弟が採り上げる前の「赤ずきん」は血なまぐさい結末だった。

それと同様の話が日本の昔話「カチカチ山」や「瓜子姫」にもあった。

ヨーロッパと日本、異なる地域で同じ内容の寓話が成立している。そこには人々の共通した習慣とタブー・システムがあった!?

宗像とイザベラは、村のタブー・システムに触れた!?



■第2話 「砂鉄八犬伝」

古事記や日本書紀に記された日本武尊(ヤマトタケル)の東征・西征ルートと砂鉄の産地が重なる!?

常陸国風土記に記されたことが示唆することとは、九州有明海沿岸地方(鹿島)の製鉄と装飾古墳の文化を持つ一族が入植して、茨城県に鹿島が誕生したということなのか!?


九州を基盤とした王学園大学。その王学園が、関東の大学の統合・併合へと乗り出している最中、宗像教授は千葉県犬吠崎の近くに位置する里見大学の助教授に招かれる。

その助教授に宗像が紹介されたのは、「犬」の字が付く苗字を持つ8人の学生たち。彼らは偶然に(?)里見大学に集まったのか??


「里見八犬伝」の八剣士と、古代の砂鉄・製鉄に纏わる集団の九州から関東への移住が、なぜか大学合併問題と絡み合う物語。星野之宣の豪腕がうなる。



■第.3話 「吉備津の釜」
岡山県、かつての吉備の国。鬼の城(きのじょう)周辺の遺跡から人骨が発見された。これが物語の発端。それが、結末では男と女の愛と復讐の物語となっている・・・。ん~、良く判らない話だったゾ???


星野漫画は、強引さが過ぎて、訳判らんことがときたまあるんだ。だが、長年のファンである私は、それも良しとする。。。



【 星野 之宣 作品 関連記事 】


宗像教授異考録  第六集

宗像教授異考録  第五集

宗像教授異考録  第四集
宗像教授異考録  第三集
宗像教授異考録  第二集
宗像教授異考録  第一集

宗像教授伝奇考

MIDWAY 歴史編

MIDWAY 宇宙編

ブルーホール その1

ブルーホール その2

巨人達の伝説


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