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2005年11月30日(水)

『凶器の貴公子』

テーマ:ミステリーとか
凶器の貴公子

 ボストン・テラン/著、田口俊樹/訳、文春文庫


『神は銃弾』 で颯爽とデビューしたボストン・テランの翻訳3作目。


『神は銃弾』では、容赦のないバイオレンス・シーンと主人公達の徹底したリアイリステックな言動を、まったく無駄のない文体で描写したボストン・テラン(と訳者の田口氏)です。

主人公と主人公に協力する女性、そして圧倒的な悪であるカルト教団の教祖に至るまで、登場人物たちの心理状態や感情を描く筆致には一切の湿り気が感じられませんでした。主人公達に語らせるセリフには感傷的な言葉などなく、ただ、事実を語らせるのみ。しかし、主人公達が遭遇する現実があまりにも辛く厳しいため、淡々と語る事実を読んでいるだけで、気持ちが揺さぶられるのでした。

登場人物達が見たり経験したりした過激な情景や事実、それらを描くために著者ボストン・テランと訳者の田口氏が選ぶ言葉は、扇情的なシーンとは対照的に美しく繊細です。

衝撃的な作品でした。



今作もまた、過激で容赦のない物語と、それらを描写する繊細で巧みな言葉遣いやセリフを堪能することが出来ます(ただ、さすがにデビュー作ほどの鮮烈さはなくなりました。慣れというのは怖いものです)。


主人公は、角膜移植を受けた25歳の青年。

ドナーとなっていたのは同年代の青年であり、彼は謎の死(自殺?他殺?)をとげていました。

その死んだ青年の追悼集会に参加した主人公が、角膜提供者の父親や恋人と関わっていくうちに、ドナーとなった青年の死の真相究明と、その父親の周辺にうごめく怪しい仕事に巻き込まれていく・・・、といったストーリーです。


テラン1作目の『神は銃弾』も、2作目の『死者を侮るなかれ』も、女性の描き方がすごくカッコよかったのですが、今作では、主人公の青年デイン・ラッドの描き方に特徴があります。

もちろん今作でも、テランが描く女性キャラクターは素晴らしい。デインに角膜を提供したドナーの恋人で、デインと出会ってからは彼の内に潜むものに引かれていく女性エシー・ロー。このエシーとデインの関係の描き方は、いままでのテランにはなかった、なにか優しい触感(変な言い方だな)の描き方でした。


話を主人公デイン・ラッドに戻します。

デインの好青年的な外見の内に秘められた凶暴性。一見、紳士的であるが、それがなぜか本質では無さそうな雰囲気を醸し出している。デインに対して私が感じたこのような感覚、物語の中盤まで読み進めていくうちに、この感覚が正しかったことが判ります。著者ボストン・テランは中盤以降もデインの謎の言動を描きながら、デインという人間の本来の姿を明らかにせず、読者の想像を掻き立てます。デインというキャラクターに対するモヤモヤした不確かな感覚はクライマックスまで持ち越されます。“こいつはいったいどんな男なんだ!?”、“正体はいつ明かされるんだ!?”という感じをズット抱えたまま読み進んでいかなければなりません。


さて、クライマックスです。唖然です。あっという間の出来事のうちに、登場人物たちの趨勢が決まってしまいます。

その中にあって、主人公デインの行動は・・・・・?このクライマックスはアクションてんこ盛りです。この作品の本質ではありませんが。


エンディングでは、デインと魂の一体性を感じるまでになっていたエシー・ローが、独り静かに呟く場面で終わります。


で、結局、デインは何が目的だったんだ? 奴の正体は?? という疑問はアヤフヤなままです。

デインはクライマックスに臨む場面の直前でエシーに手紙を書き、彼女に対してだけは自分が何者であるかを明かします。その手紙の内容は最後まで読者に開示されることはありません。結局、デインが何者であり、目的はなんだったのかを明確にした場面は描かれません。

読んでいる過程で、デインの正体や目的について、おおよその予想はできるものの、確かなことは読了後も判りません(単に私に理解力が無く、鈍いだけなのかもしれませんが)。読者の想像のままに・・・、あるいは、読者の理解力しだい・・・、かもしれません。

それでも、“暴力の詩人”ボストン・テランの描き出したこの物語は堪能できます。



今作品での暴力描写は前2作に比べればたいしたことはありませんでした。とはいえ、ボストン・テランが描く物語は暴力に溢れています。しかし、結末は悲惨ではありません。ただ、どの作品も物悲しい。そして美しい。

それは、彼が、“人とは、どこまでいっても孤独な生き物である”、ということを充分承知した上で物語を紡ぎ出しているからなのだと思います。全ての作品に共通した感覚だと思います。

40歳を越えた中年男には堪える物語、作家です。

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2005年11月28日(月)

『死神の戯れ』

テーマ:ミステリーとか
死神の戯れ

ピーター・ラヴゼイ/著、山本やよい/訳、ハヤカワ文庫


現代イギリス本格ミステリーの大御所ピーター・ラヴゼイが、犯人の視点から描いた一風変わったブラック・コメディ作品です。


巧みな会話と持ち前の美貌で、男性、女性を問わずに魅了する英国国教会の牧師オーティス・ジョイは公金横領や殺人をなんとも思わない人間です。

教会予算の使途が不明であるとの疑惑が出たとたんに、教会の会計を担当していた人物が突然死んだり、オーティスの周辺では失踪したり謎の死を遂げる人物が頻出します。しかし、信徒たちは牧師であるオーティスに疑惑の目を向けることはありません。


社会的信頼の高いポジションにあることを利用してオーティスは非道の限りをつくします。

イギリスの片田舎のイイ人達が次々に犠牲になっていきます。

まさに人の姿をした死神の所業です。


アメリカのクライム・ノベルやノワールでは、このような先天的に罪の意識を感じない人物、いわゆる“サイコ”が主人公となる物語は、よくあるのですが、イギリス・ミステリーでは非常に珍しいのではないかと思います。

現在のイギリスでも、現実としてこのようなソシオパスによるサイコな事件が起きていることを予想させます。日本でも同じですが・・・。


この作品、ピーター・ラヴゼイが描くサイコ・サスペンスですから、場面、場面にグロテスクな描写はまったくありません。オーティスとその周辺の人物達の会話や行動はいたってユーモラスで、のんびりしています。オーティス本人はまったく当たり前の日常感覚で殺人を行い、平然とその後も教会活動を行います。それだけに、オーティスの殺人行動と、それを行う動機が突出していて異様な雰囲気を醸し出しています(まったく、なんていう屁理屈で人を殺すんだ!)。

不気味だけど、なんとなく笑っちゃう・・・。

まんまと、作者ピーター・ラヴゼイの思惑にハマってしまう私がいます。


さて、オーティスの所業が周囲から疑われ、警察が本格的に捜査を開始するのは物語の終盤です。その終盤には、オーティスに思わぬ協力者が現われます。

結末は、・・・・・、オイオイ、そうくるか、って!!

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2005年11月26日(土)

『 fo(u)r 』

テーマ:メモランダム

何年かぶりでCDを買った・・・のがこれ、CHEMISTRY の 『 fo(u)r 』 。

我ながらミーハーだな~。


どちらかと言えば、読む本はマイナーなものが多く、ベストセラー本などにはすぐには飛びつかないのだけれど、音楽に関しては昔から非常にミーハー!


このCD、良いバラードがいっぱい入っていて、イイ。


CHEMISTRY, CHEMISTRY×Crystal Kay
fo(u)r

ついでに、380円のDVDも購入。『シャレード』。

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2005年11月25日(金)

『まじょのけっしん』

テーマ:児童書・絵本とか
まじょのけっしん

中島 和子/著、 秋里 信子/絵



過日紹介した 『さいごのまほう 』 の続編です。


前作で、最後の魔法を使って魔女が変身した “いいもの” は、ベンチでした。

小高い丘の上の、古いクスの木の下に、そのベンチはありました。もう長いこと居続けて、ベンチはかつて自分が魔女だったことも忘れていました。


ある日、そのベンチに腰掛けた少女は、すわり心地の良いベンチがすごく気に入りました。そしてベンチもまた少女のことが気になりました。


少女は毎日決まって夕方にベンチに座って、バスから降りてくる父親の帰りを待っています。父親を待つ間、少女は自分を暖かく包み込んでくれるベンチと会話をしているかのような気分です。



ある日、古びたベンチを撤去しようという話が聞こえてきました。ベンチは恐れます。もう一度、魔女に戻ろうと思っても、最後の魔法を使ってしまってから、もう随分時がたっています。すでに力もありません。


真夜中、古いクスの木の枝の間から差し込む月光がベンチに不思議な力を与えます。

そして翌朝、クスの木の下には一人の老女が座り込んでいました。


魔法の力を得た魔女は、少女のために再び変身します。はたして何に?


児童向けの他愛のない話ですが、休日のちょっと空いたヒマな時間に読むにはちょうどイイです。なんだかイイ気分にもなりますし・・・。

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2005年11月24日(木)

『ハヤカワ文庫解説目録2005.7』

テーマ:ミステリーとか

ミステリー読みには、こいつは必須アイテムだ! と思って書店のレジからもらってきました。


1ページに6作品の概要紹介記事が掲載されています。1作品について140文字程度での紹介です。それでも早川書房から出版されている全文庫作品を340ページ程度で紹介することは無理のようです。かなり抜けている作品もあります。


早川文庫の作品、さすがに結構読んでいます。しかし、その読み方にはかなりムラがあります。特定の作家に集中しています。

ある作家の作品は全て読んでいるかと思うと、別の作家の作品はまったく読んでいなかったりと、私の場合、気に入った作品があると、それを書いた作家の作品をたて続けに読む傾向があります(そういう傾向の方は多いのかナ?)。


他の方のブログを見て、面白そうな作品を見つけたり、また、時にはお薦め作品を紹介していただいたりして、それらを読んでみて、それでその作品が面白かった場合、同じ作家の書いた他の作品にも手を伸ばすことがあります。

すると、また、“読まなければいけないリスト”が増えていって、読書に追われるようになってしまいます。


このような状態では、ひとつの作品をじっくり愉しむことができなくなってしまう。

かといって、オモシロ作品の守備範囲を狭めることもしたくないし・・・、

これで結構、本の読み方も難しい問題であるナ、と思ったりするわけです。つまらん心配事ではありますが。

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2005年11月20日(日)

『さいごのまほう』

テーマ:児童書・絵本とか
さいごのまほう

中島 和子/著、 秋里 信子/絵


小学校低学年向けの本です。


年老いた魔女が力を振り絞って最後の魔法をかける。

その最後の魔法として選んだのは・・・、変身。


なにに変身するか?

魔法使いじゃないですよ。 それでは反則になってしまいます(笑)。

魔女は、「いいもの」になろう、と決めます。

その「いいもの」とは?


いいもの・・・・・、自分にとっての「いいもの」、自分以外の誰かにとっての「いいもの」。

魔女が選んだのは、後者の「いいもの」です。


ほんのりした感覚に浸れます。

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2005年11月19日(土)

『時間の分子生物学 時間と睡眠の遺伝子』

テーマ:自然科学とか
時間の分子生物学

 粂和彦/著、講談社現代新書


前半は生物時計(体内時計)の話。後半はその生物時計も大きく関係する睡眠についての話です。


およそ地球上に生息する生命のほとんど(全て?)が、体内に時計を持っているとのことです。

生命が持つ、あるいは感じる、24時間周期や1年周期などのリズム。

なぜ、生物時計が必要なのでしょうか?


次に必要なことを準備するため.

将来を予測して活動できる生命は、予測できない生命に対して、有利に生き残ることが出来るでしょう。そのため、現存する生命ほとんど全てに生命時計が内在されている、というのは最も理解しやすい理由です。


季節を知るため.

冬に子どもを生んでも食物がなくては生き残ることが出来ません。季節を知ることはそれだけ重要で、そのために生物時計が必要です、というのも頷ける話です。


方角を決めるため.

方位と時刻が一対一に対応することから、ある時点の過去と現在の太陽の位置を知れば、一定時間に太陽がどれだけ移動したかで方角を知ることができるため生命時計が必要となる。渡り鳥などには必須の能力です。


驚くことに、前世紀の最後の数年間で、生命時計のメカニズムや、そのメカニズムを支配する遺伝子とその個々の働きまで、生命時計に関するほとんどのことが解明されてしまったとのことです。


しかし、この本の後半部・・・

もう1つの主題である“睡眠”、この睡眠については現在でも謎だらけであるという、まったく対照的な内容となっています。

何故、人間には睡眠が必要なのか? どのくらいの時間眠るのが良いのか?

こういった昔からの疑問に対しては未だに客観的・科学的に答えられるところまでには至っていないようです。こういうことについては、各人の経験的な良し悪しから脱していない、というのが現状のようです。

ただ、眠り病ともいわれる「ナルコレプシー」という病気の原因遺伝子の発見を契機に、睡眠に関する研究の突破口がみつかってきているとのことです。


講談社出版文化賞科学出版賞を受賞しただけあって、誰にでも読みやすく書かれています。

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2005年11月18日(金)

『平凡社ライブラリー解説目録2005』

テーマ:メモランダム

『平凡社ライブラリー解説目録2005』 平凡社


平凡社ライブラリーは手ごわい。

哲学、思想・イデオロギー、芸術・・・、私の苦手とする分野の本がいっぱい。マニアックでアカデミック・・・、私にはそういった印象が強い。


でも、中には面白そうな本があった。

網野善彦の著作が数点と、『鼻行類』という題目の本。


『鼻行類』 ハラルト・シュテュンプケ/著、日高敏隆・羽田節子/訳

「南太平洋のハイアイアイ諸島で見つかった鼻で歩く謎の哺乳類。その驚くべき生態を緻密な図とともに紹介。世界の動物学者に衝撃を与えた世紀の奇書。」


↑ こんな紹介されたら読まなきゃいけなくなるじゃないか~!

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2005年11月17日(木)

『鉱石倶楽部』

テーマ:ファンタジー・SFとか
鉱石倶楽部

 長野まゆみ/著、文春文庫



放課後の理科教室の教卓に置かれた一冊の鉱物図鑑。緑色の天鵞絨(びろうど)張りで、表紙が金色の糸で縫い取られている本。

二人の少年がその重い図鑑を持ち出そうとしたとき、扉で一人の男と鉢合わせた。

「その図鑑を持ち出しては困るよ。これから授業で使うのだからね。」

少年達は、この学校に夜間学級があることなど知らなかった。

興味を持った少年達は、その鉱物図鑑を使った授業に参加する。授業は、静かに、そして熱心に進められていく・・・。



「ゾロ博士の鉱物図鑑」という、なんとも不思議な短編ファンタジーで幕開けられた本書。



第2部は、水晶、螢石、白雲母、薔薇石英、月長石など、18の鉱物にまつわる不思議な物語。そこに登場するのも先ほどの二人の少年。



第3部は、7編の不思議な詩。これら一編一編の詩にも鉱物となぜか砂糖菓子が関係します。



全ての作品に、鉱物のカラー写真が載せられています。この文庫自体がミニ鉱物図鑑の様相を呈しています。



この作品、鉱物に対する理科的な興味というよりは、ただ綺麗なものを鑑賞したい、ファンタジーを味わいたい、という感覚で読む(観る)ことをお薦めします。





(追 記)

この本は、「ディックの本棚 」のディックさんに紹介していただきました。感謝。

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2005年11月16日(水)

『集英社新書 解説目録 2006年版』

テーマ:なんでも読んでみよう


これもまた書店でもらってきた無料のカタログです。

集英社の新書は現時点でおよそ320冊が刊行されているようです。それらが9カテゴリに分かれています。


 A 政治・経済

 B 社会

 C 哲学・思想

 D 歴史・地理

 E 教育・心理

 F 文芸・芸術

 G 科学 2

 H ホビー・スポーツ

 I 医療・健康


この目録に載っている作品で読んだのは6冊(歴史2冊,心理1冊,科学2冊,スポーツ1冊),


 『信長と十字架 -「天下布武」の真実を追う』

 『僕の叔父さん網野善彦』

 『人はなぜ逃げおくれるのか -災害の心理学』

 『全地球凍結』

 『安全と安心の科学』

 『イチローUSA語録』


今後読みたいと思ったのは6冊(歴史4冊,文芸2冊)でした。

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