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2005年08月31日(水)

『岩波文庫解説目録2004年』

テーマ:メモランダム

『岩波文庫解説目録2004年』


書店のレジの脇に置いてあった無料の「案内書(カタログ)」です。


およそ200ページにわたって、1ページあたり5作品の解説が載っています。

1作品について、約150文字程度の解説です。

ということは、全部で約1000作ほどの解説が記されていることになります。


この約1000作品のうち、私が自信を持って読んだ、といえるのは次のとおりです。


 ガリア戦記

 銀河鉄道の夜

 蜘蛛の糸・杜子春

 古寺巡礼

 小僧の神様

 ハックルベリー・フィンの冒険


ほとんど読んでませんネ~。

子供時代・学生時代ほとんど読書をしなかったことが今さらながら・・・


『ファーブル昆虫記』などは、全部で10冊もあるとは・・・、子供のときに読んだ、と思っていたのはホンの一部分だったんですね。

『南総里見八犬伝』も全10冊あって、これも子供の頃、NHKの人形劇(新八犬伝)とそのノベライズを読んだだけで・・・、物語の内容を知っているかのように思っていましたが、実は全部は知らないんじゃないかと思えてきました(いや、きっとそうだ)。


この他にも、『ロビンソン・クルーソー』とか『ガリヴァー旅行記』など、実は知っているつもりで、ほんとのところ結末がどういった話だったか思い出せない作品がかなりありました。こういった作品については、内容の一部分しか思い出せません。


子供の頃、読んだ、あるいは読んでもらったはずの作品について、実はほとんど覚えていないモノが、なんと多いことか・・・。


などと、目録をパラパラとめくっただけでも、いろいろな考えや想像をめぐらせることができて、かなり楽しめます。 本屋さんでタダで手に入るし、お薦めです。

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2005年08月30日(火)

『シティ・オブ・ボーンズ』

テーマ:ミステリーとか
シティ・オブ・ボーンズ

 マイクル・コナリー/著、古沢嘉通/訳、早川書房



LA市警ハリウッド署刑事ハリー・ボッシュ・シリーズ第8弾です。



ハリウッド郊外丘陵地帯の森の中から犬が運んできたのは人間の大腿骨の一部だった。

鑑定の結果は少年の骨であること、その骨は20年以上も前のものであること、死因は鈍器による頭部への殴打であることなどを示していた。

まもなく、現場付近に住む、逮捕歴のある小児性愛者の男が容疑者として浮上する。

ボッシュらの取調べの最中、容疑者の素性がマスコミにリークされる。



容疑者とされた男は、無実を主張し続け、抗議の遺書を残し自殺を図った。

非難される警察。市警最高幹部アーヴィン・アーヴィング副本部長は、ボッシュに退職を勧告する。

限られた時間の中で捜査を進めるボッシュ。事件の様相は二転三転する・・・。





事件に隠された謎の解明やストーリー自体には、別段目新しさや意外な展開は少ないように感じられました。オーソドックスなミステリー、ハードボイルドもの、という感じです。これがシリーズものではなく、単発の独立した作品だったら、凡庸な作品という評価になるかもしれません。



しかし、本作はシリーズに大展開を与えた作品として、特異な位置に置かれるものです。



これまでにも、ボッシュが過去のトラウマに向き合ったり、陰惨な事件に遭遇したり、そして、それらによって心の奥底に何かを溜め込んでいったりするたびに、その時点のボッシュの心情を象徴したような“陰影の濃淡”が物語の内容にも反映されていきました。それがシリーズ作品としての展開に変化をもたらしてきたように感じていました。

その“陰影の濃淡”とは、どんより救いの無い暗い物語になるか、暗いけども未来にわずかな光が見えるような物語になるか、ということです(ボッシュ・シリーズに明るい作品はありません)。

このように、今までも度々図られてきた(と思われる)‘シリーズの流れの変化’は、この作品での大どんでん返しに比べれば小さなものでした。



ラストは、まさに衝撃の展開・・・、何故・・・? 次作でその理由が明かされるのでしょうか?

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2005年08月27日(土)

『猫楠(ねこぐす) 南方熊楠の生涯』

テーマ:マンガとか
猫楠―南方熊楠の生涯

 水木しげる/著、角川文庫


今週半ば、出張で仙台に往復した際、新幹線の中で読んだマンガです。

現代の妖怪、水木しげる氏が、明治から戦前にかけて生きた妖怪、南方熊楠(みなかた くまぐす)の半生を描いた作品です。


この南方熊楠という人、粘菌というものを始め、植物学や、神話・野蛮な風習、宗教、猥談、男色、幽霊や妖怪などに興味を持ち、研究していたということです。一言でいうと、在野の博物学者、と云うことなのでしょうが、どうやらそれだけでは収まらない、タダモノではなかった人物のようです。

よほどの魅力なのでしょう、この人について書かれた本がいろいろとありました。


南方熊楠という名前だけはだいぶ昔から聞いていて、どうやらオモシロそうな人物で、もう十年以上前から、この人について書かれた本を読んでみたいと思っていたのです。

たまたま、新幹線に乗る前にチョットした時間があって、ぶらついていた駅構内の本屋で目に入ったのが、水木しげる氏が描いたこの作品でした。

数ある“南方熊楠モノ”の作品の中で、すぐに読めそうなマンガということ、しかも水木しげるが描いているということに惹かれて読んでみました。


ところで、私は、オカルト的なことを、これ見よがしに他人に語る人を信用していません。

幽霊を見ることができるとか、霊魂と交信することができるとか・・・、アホか!ってな感じです。

だからといって、信仰や霊的なものに帰依する人々を否定するものではありません。そういったものを個人的に考え、信じることは有ってもイイことだと思っています。

私は、オカルト的なものは各人の脳内に現出するものであって、物理的空間に現出するものだとは思っていません。しかし、他の人が、その人の頭の中のできごとを自身の中で如何様に考え、処理し、他人に語ろうが一向に構いません。それを他人に語る際に謙虚さと楽しさを持ち合わせていれば・・・ですが。他人に対して、偉そうに押し付けなければ結構ですよ、という立場です。


ご存知のように、妖怪・幽霊的なものを語らせたり、描かせたりしたら右に出るものはいない水木しげる氏、そして水木氏が描く南方熊楠には、そういったオカルト的なものを考える際、語る際の純粋さが伝わってきます。本当に好きなんだなー、というのが伝わってくるのです。他人のためではなく、自分の楽しみ、興味のために夢中になって行っている姿勢が、私のような(片寄った)科学万能思想主義者?にも共感を覚えさせるのです。


ともかくも、水木氏の描く南方熊楠は非常に魅力的な人間でした。もう少し他の本も読んでみようと思わせてくれました。

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2005年08月26日(金)

『夜より暗き闇』

テーマ:ミステリーとか
   
夜より暗き闇〈上・下〉


 マイクル・コナリー/著、古沢嘉通/訳、講談社文庫




LA市警ハリウッド署刑事ハリー・ボッシュ・シリーズ第7弾にして、テリー・マッケイレブ・シリーズ第2弾です。



テリー・マッケイレブは『わが心臓の痛み 』という作品の主人公で、心臓移植をした元FBI心理分析官です。



異なる小説の主人公が、同一作品に登場する。ダブル・キャスト作品・・・ということは、二人が協力し合って事件を解決に導く・・・?

当代随一のストーリー・テラー、マイクル・コナリーが描く物語がそんな単純なものになるはずがありません。



この作品では、マッケイレブがボッシュを追います。

マッケイレブから見たボッシュが描かれるのです。



知り合いの警官から殺人事件への協力を依頼されたマッケイレブ。やがて被害者と関係のあったボッシュ刑事の行動に疑惑が生じます・・・。

マッケイレブから見たボッシュ、それは、彼の実力は認めるものの、“俺が正義だ”的なアブナイ自警主義警官です。



マッケイレブのメモ、

   ・・・・・

   使命感を持つ男―――復讐の天使

   ・・・・・

   母

   事件

   司法制度―――“たわごと”

   ・・・・・

   神の手―――警察―――ボッシュ

夜より暗き闇―――ボッシュ



事件を追う過程でマッケイレブが掴む手掛かりは、犯人がボッシュであることを示していきます。



一方のボッシュは、全米の注目の的となっている別の殺人事件の法廷で、検察側証人として容疑者を追い詰める役割を担っています。しかし、裁判の最中、容疑者の態度はまったく揺らぐことがありません。何が容疑者に自信を与えているのか?裁判は思わぬ苦戦に陥ります。



法廷での争いの最中に、マッケイレブによって自分が別の殺人事件の容疑者に挙げられていることを知ったボッシュの行動は・・・。

マッケイレブとの再会に、ボッシュは・・・。



この物語の後半で、ボッシュはマッケイレブに打ち明けます。

第4作『ラスト・コヨーテ 』で起こった未解決事件の真相について・・・。

“夜より暗き闇”・・・ボッシュの心の奥に巣くう闇、について。


そして、ここから、ストーリーは一気にクライマックスに向かいます。







ボッシュの“心の闇”は、過去のトラウマ(ベトナム戦争、実母の死)から、現在の事件(第4作『ラスト・コヨーテ』と第6作『堕天使は地獄へ飛ぶ 』で起こった事件)が産み落とした闇へ、と変化してきています。






ところで、作者コナリーは、今作ではこれまでの作品と異なる新たな叙述方法を試みています。

第三者であるマッケレイブの視点から主人公ボッシュの言動を描いていることです。






しかし、この叙述方法、これまでのようにボッシュが自らの心情を語ることがないため、いまひとつ、ボッシュの心の揺れ動きについての描き方が弱いように感じます。

ボッシュが抱える“現在の心の闇”について、もう少し深く掘り下げて描いてほしかった・・・。このシリーズの最大の‘売り’は、そこ(ボッシュの心の闇、ついては社会の闇)にあるはず・・・。

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2005年08月25日(木)

『堕天使は地獄へ飛ぶ』

テーマ:ミステリーとか

    
旧題(単行本刊行時)堕天使は地獄へ飛ぶ

 マイクル・コナリー/著、古沢嘉通/訳、扶桑社



LAPD殺人課刑事ハリー・ボッシュ・シリーズ第6弾です。



土曜の夜、ボッシュが手にした受話器。しかし、電話の向こうの声は期待していた相手の声ではなかった。

ボッシュはアーヴィング副本部長からの電話で、LAダウンタウンのケーブル鉄道‘エンジェルズ・フライト’頂上駅に部下を率いて集合するよう命令を受ける。副本部長自らが現場に出向き、ボッシュの捜査チームをじきじきに参集させる。ただの事件ではないはずだ・・・。

被害者の1人は黒人女性。もう1人はLA市警と因縁のある黒人の人権派弁護士ハワード・エライアス。

週明けの月曜日、エライアスは新たな訴訟に取り掛かるはずだった。その相手はLA市警だった。



人権派弁護士 vs LA市警、マイノリティ・人種問題、犯人は警官?、警察組織の関与は?

マスコミ、LA市警、市民は騒然とする。



またしても事件はLA市警に内在する暗部に関わっていくことになる。



公式に発表された事件の犯人。それにより、LA市内は一触即発の状況下に・・・、暴動寸前・・・。市警本部ビルのまわりには群集が集まり、上空には報道ヘリが旋回し、地上には各局の取材班がライブ放映の準備を整えている。



クライマックス。

公式発表の結果に釈然としないボッシュ。細かいところで辻褄が合わない。考え抜くボッシュ、証拠品をもう一度洗い直し、やがて・・・真相にたどり着いた・・・、その時まさに、LA市内に暴動が起こり、・・・驚愕のラスト・・・堕天使は地獄に飛んだ。





今作は、誰が?何故?女性を、弁護士を殺したのか?という謎、そして、その解決に至るまでのボッシュの思考と行動を充分に楽しむことのできる作品です。

これまでの6作品では一番純粋に謎解きに重点をおいた作品といえると思います。



それでも、作者コナリーは、相変わらずボッシュに苦悩を課すことを忘れません。

LA市警内部の政治的思惑の中で、ボッシュは個人倫理と組織論理の狭間で苦悩します。さらには、妻となったエレノアの不可解な行動に対しても・・・。

しかし、前作までに見られたような激情的で息苦しいまでの苦悩ではありません。前作までの幾多の陰惨な事件と、自身の過去との対峙を経て、ボッシュの内面は少し変わった?様に思えます。

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2005年08月22日(月)

『トランクミュージック』

テーマ:ミステリーとか
  
トランク・ミュージック〈上・下〉


 マイクル・コナリー/著、古沢嘉通/訳、扶桑社ミステリー



LAPD殺人課刑事ハリー・ボッシュ・シリーズ第5弾です。

前作で休職していたボッシュが今作で復帰します。



ロールスロイスのトランクに詰め込まれた白人男性の死体がパトロール警官に発見されました。“トランクミュージック”、マフィアが使う殺人の手口の名称です。



久しぶりに殺人現場に出向いたボッシュは、二人の部下を相手に捜査の指揮を執り出します。ボッシュには高揚感とともに安らぎの感覚が湧き上がってきます。根っからの刑事、事件捜査が天職であることを自覚した瞬間です。



前作まで、ボッシュが扱う事件には、ボッシュ自身の個人的な過去が大きく関わってきていました。そのため、事件そのものの謎解きに焦点が当てられるよりも(もちろん、事件のプロットの変化や謎解きも面白いのですが)、ボッシュの暗い過去や心情の変化、彼の行動規範などを描くことに重心がおかれていました。このような作品の傾向は第2作『ブラックアイス』 で顕著になったように思われます。

第5作であるこの作品で初めて、ボッシュは自分の過去とは関係ない事件に取り組むことになります・・・。



前々作(第3作)『ブラック・ハート 』では、第1作からずっとこのシリーズに見え隠れしていた“ドールメイカー連続殺人事件”の真相に迫りました。この第3作では、ボッシュが過去の捜査で射殺した連続殺人犯が無実ではなかったかとの疑いを懸けられ、法廷での女弁護士との戦いから、自身のブラック・ハート(心の中の暗闇とでもいうべき場所に存在する自分)を振り返ります。そして過去の亡霊と自身のブラック・ハートからの開放を成そうとします。

前作(第4作)『ラスト・コヨーテ 』では、休職中であることを利用し、30年以上前に殺された実母の死の捜査を行います。そして真相を探り出し、もう1つのブラック・ハートに決着をつけたのでした。

ここまでの4作で、ボッシュは幾つもの過去の亡霊から開放されたかと思っていました。第5作以降、このシリーズの特徴ともいうべき、ボッシュの内面に踏み込んだ描写や、“ボッシュを描くこと”に対して、どのような展開を図るのか、興味を掻き立てるものがありました。



死体発見現場の様子から、マフィアなどの組織犯罪の疑いが持たれたため、事件の扱いに対して、FBIや組織犯罪捜査課、そして、内部監査課が横槍を入れてきます。

このように、事件の背景やボッシュの捜査・謎解きに至る過程を描くほかに、またしても、ボッシュ個人と警察組織との戦い、といういつもながらのプロットが、この作品でも描かれています。

このようなことから、この第5作は原点の第1作に回帰したように思えます。



また、この作品では、ボッシュにとっての運命の女、第1作『ナイトホークス』 で登場した元FBI特別捜査官エレノア・ウィッシュに再会します。

エレノアとの再会と第1作への回帰。

ボッシュ・シリーズの新たな展開が図られた?作品です。

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2005年08月21日(日)

『ラスト・コヨーテ』

テーマ:ミステリーとか
   
ラスト・コヨーテ〈上・下〉

 マイクル・コナリー/著、古沢嘉通/訳、扶桑社ミステリー



物語の冒頭。この小説の主人公、LAPDハリウッド署殺人課の刑事ハリー・ボッシュは精神科医のもとでカウンセリングを受けています。

重要参考人の扱いをめぐる意見の対立から上司につかみ掛かり、強制休職処分を受けていたボッシュに対する復職の条件として、カウンセリングを受けることが課せられていたのでした。

精神分析医カーメン・イノーホスは、ボッシュに自己破壊衝動が潜在すること、休職の原因となった出来事を忘れるためには、何か忙しくしていることを求めます。



“使命”とも“自らの聖杯”とも感じている刑事という仕事に打ち込むことができなくなったボッシュにも、この時期、たまたま忙しくしていられることがありました。

3ヶ月前の地震で半壊した自宅の修理でした。



サンフェルナンド・ヴァレーという場所はアメリカ有数の地震多発地帯です。地名のとおり“谷”状の場所なのですが、日本の谷とはちょっと違います。対岸が見えないほど広大です。この地では、歴史上何度も地震が起きています。

1994117日(兵庫県南部地震が1995117日ですから、ちょうど1年前です)に起きたノースリッジ地震は、LA中心部からわずか30km程度の距離、深さも15kmと浅い震源でした。50名を越える死者を出し、高速道路の桁を落下させ、アメリカ史上最大の経済損失を被った地震でした。

・・・などという余計な話はさておき・・・



ボッシュの家は、ノースリッジ地震で被害を生じ、危険家屋であるとの認定から、当局の検査官からは居住が認められていません。しかし、ボッシュは検査官の目を盗み、自分で少しずつ修理を施しながら、このまま住み続けようとしています。

しかし、ボッシュがドアの修理の出来栄えに満足を覚えたのは一瞬でした。自分が忙しくしていられるもの、それは自宅の修理でなない・・・。カーメン・イノーホスとの会話の中で浮かんだこと・・・、事件を追うこと以外に自らを満足させることのできるものはない・・・。



LAPDの文章保管施設に赴いたボッシュは、1961年の殺人事件のファイルを入手します。被害者は売春婦、名前はマージョリー・ロウ・・・、ボッシュの実母・・・。

こうしてボッシュは、ずっと心の片隅にあった実母殺害事件の謎に取り組むことになります。ワンマン・アーミー、ボッシュの単独捜査がこうして始まりました。



30年以上前の母親の事件を担当した元刑事を追ってボッシュはフロリダに飛びます。フロリダでの捜査から、母親殺しに関わる人間がLAに居ることを掴んだボッシュはLAに帰ってきます。

そして、LAで質問をしてまわるボッシュの近辺では次々と死体が・・・。

ボッシュがはじめた30年以上も前の母親殺しの捜査は、思わぬところで現代のLA市警やLA 政界の人間とも関わっていきます。



クライマックス。ボッシュは30年前の事件、現代のLA市警と政界に生じた事件を一気に解決へと導きます。

最終的にすべての事件の真相を知るのはボッシュの他に、精神分析医カーメン・イノーホスがいます。

ボッシュは何度かのカウンセリングを受ける過程で、いつしかカーメンを信頼し、彼女もまた仕事に忠実で誠実なプロフェッショナルであることを認めていきます。今回、この精神分析医カーメンが、事件や謎に対するボッシュの思考を整理する上での絶好の聞き役になっています。



事件解決の裏では、真相を知るボッシュを復帰させるべく、LA市警幹部による精神分析医カーメン・イノーホスへの圧力が掛かります。つまり、ボッシュに対する肯定的職務復帰評価報告書の提出が求められるのです。それを知ったボッシュは、カーメンの職務に対する誠実さを守るために、報告書の提出を拒むよう、市警の圧力に屈しないように頼みます。ボッシュ自身が市警を辞めることになる覚悟をしながら・・・。

刑事という仕事に誇りと情熱をもつボッシュを誰よりも理解しているカーメンは、ボッシュの辞職を止めさせようと説得します。カーメンは、市警への報告書提出を延期すると言い、その間、ボッシュには休暇を取り、良く考えるよう進言するのです。

彼女は言います。「自分がこれでコヨーテを見るのが最後だと思うのはいやだもの」



コヨーテ・・・、地震で被災した自宅の近くでボッシュが時折見かけていた、決して人には懐かない獣・・・、ボッシュを比喩しているのでしょうか!?

私は、カーメンの最後の一言で、「ラスト・コヨーテ」という本書の題名が何を意味しているのかが判ったような気がします。





さて、最後に、ボッシュ・シリーズに登場するヒロインについて・・・

このシリーズに登場するヒロインは、その誰もがボッシュを理解し得る知性と、何らかの心の傷を持っています。その傷を持っているからこそ、ヒロイン達はボッシュを理解することができるのでしょう。

この作品にも魅力的なヒロインが登場します。フロリダに飛んだボッシュはそこで、画家を目指す女性ジャスミン・コリアンと出会います。お互いに自分と同質の何かを感じ合った二人は惹かれあいます。

しかし、本作でのヒロイン、ジャスミン。人物造詣はなかなかイイのですが、さして物語や事件の核心に関わるようなことがありません。ただ、ボッシュの心情の動きに彩りを添える人物として登場しているだけのような感じがしました。ラストを読むまでは・・・。

ラストでは、再びフロリダにジャスミンを尋ねるボッシュに救いが訪れます。

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2005年08月20日(土)

「東大教師が新入生にすすめる本」2004年「UP」4月号アンケートより

テーマ:なんでも読んでみよう

以前(2005年4月15日記事 )、『東大教師が新入生にすすめる本』、文春新書、文藝春秋編 というのを紹介しました。その本では、1994年から2003年までの分についてが記載されていました。


このWEB(http://www.utp.or.jp/bulletin/up0404/0404kyoushi.html )では、2004年の分についてが記されています。


約30名の教師の方が、各書を薦める理由、各書についての評論、若かりし頃に読んだ際の想い、などが率直に述べられています。それらお薦めの本の中の一部は、新入生にとってだけでなく、学生時代が遙か彼方となってしまった私にとっても、参考になるものがたくさんあります。


その中で、複数の方が挙げられていた、 『ヨーロッパ文明批判序説──植民地・共和国・オリエンタリズム』 工藤庸子(2003) という本が印象に残りました。

題名からしても、なんかオモシロそう!? と思って、調べてみましたが、高価!!  どうしよう。時折、BOOK OFFを覘くか?・・・とここまで書いて、図書館というものがあるのを思い出した。

ここのところ、ご無沙汰だったので、忘れていた・・・。


文藝春秋
東大教師が新入生にすすめる本
工藤 庸子
ヨーロッパ文明批判序説―植民地・共和国・オリエンタリズム
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2005年08月16日(火)

『茄子 1』

テーマ:マンガとか
茄子 (1)

 黒田 硫黄/著、講談社アフタヌーンKC


8編が収録されたマンガ集です。

どの作品にも、なにげなく‘茄子’が描かれています。


5・6編目の「アンダルシアの夏」という、ツール・ド・フランスのようなロードサイクル競技を題材とした作品は、確かアニメ化だか映画化だかされたような記憶があります。見ていませんが・・・。

映画化?アニメ化?されただけのことはあり、イイ作品でした。


しかし、それ以上に、1・2編目の「3人」という作品が私のツボにはまりました。

田舎でひとり、茄子を作り、本ばかりを読んで暮らす中年の男のところに、18才の少女と13才の少年が転がり込みます。


ある日中、13才の少年は、昼の最中に制服姿で電車に乗っている少女を見て、“日常を何の目的も無く過ごし、自分を持て余している”人間であることを見抜きます。少年は少女に声を掛け、それ以来、2人はアテの無い旅(家出)に出ているという設定です。2人の間ではイニシアチブは少年の方にあります。


中年男に対し、少年は不遜な言葉遣いで食事や風呂を要求します。中年男はその態度を気にも留めることなく食事や風呂を提供します。

翌朝、3人は畑に行きます。中年男は畑仕事をし、弁当を食べ、木陰で本を読みます。少女は木陰で昼寝。少年は、中年男のペースに引きづられる少女を見ていて面白くありません。

夜、少年は中年男の車を持ち出そうとしますが、車ごと崖下に転落して病院行き。少女も中年男の家を出ますが、アテもなく、途中、他人に拾われて駅まで。少女は、これまた他人に付いて、行き着いた駅前の飲み屋から中年男の家に世話になった礼の電話を掛けます。


特にどうということのないストーリーですが、なんとなく、アイロニーというのか、虚無感というのか、私には巧く表現できない雰囲気が漂うマンガです。

中年男の、食って、本を読むこと以外にはさして興味を持たない、めんどくさがりやのキャラクターがイイです。

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2005年08月15日(月)

『深夜プラス1』

テーマ:ミステリーとか
深夜プラス1

 ギャビン・ライアル/著、 菊地光/訳、ハヤカワ文庫





とらさんの「手当たり次第の本棚」( http://ameblo.jp/kotora/ ) 2005-08-14の記事を読んで刺激されました。



『深夜プラス1』、1965年イギリスで発表された冒険サスペンス小説です。

このジャンルの小説では古今東西のベストです。



舞台はパリ。4月。カフェにいる主人公ルイス・ケインに、電話に出るよう壁のスピーカーが指示します。ルイス・ケインは、大戦中はレジスタンスの勇士でした。

彼を呼び出すスピーカーから流れる名前は‘カントン’・・・、戦時中の彼のコード・ネーム・・・。



ケインは電話ボックスの受話器を取ります。

‘ムッシュ・カントン?’

‘いや、カントンという人は知らない。そちらは?’

‘昔の友人なのです。ムッシュ・カントンに会ったら、弁護士のアンリが話したいと伝えていただきたい’

‘その弁護士のアンリはどこにいるのだ?’

‘隣の電話ボックス’

・・・・・

こうして、ケインは、かつてのレジスタンス仲間からの仕事の依頼を受けます。



以上が、この小説の導入部です。 私、この導入部好きなんです。なんか洒落ていて。何度読んでもニヤけてしまいます。





弁護士アンリ・メランからの依頼内容は、あるワケありの男、名前はマガンハルト、をブルターニュで拾い、陸路でリヒテンシュタインまで連れて行く、というものでした。

ケインが護送するマガンハルトは、フランス警察に追われていたり、また、彼がリヒテンシュタンに到着するのを望まない連中がいたり、という、前途の多難さが予想される仕事です。



さて、ケインはマガンハルトを拾う前に、相棒となるガンマン、ハーヴェイ・ロヴェルと会います。

この二人の会合シーンもイイのです。

お互いの拳銃に対するコダワリを切っ掛けに、自らの信条を仄めかせ合います。プロ同士の仕事の取り組み方に対する、静かな駆け引き・・・です。



ケインとロヴェルがマガンハルトを護送する際に使う車はシトロエン。このシトロエンの受け渡しの場面もイイ!!



一つ一つのなにげないシーン・場面すべてに、プロフェッショナルな人間や、武器・アイテムに対する著者の拘りが垣間見えます。



主人公達は、数々の妨害、執拗な攻撃をかい潜りながら、シトロエンを疾走させます。



ストーリーの大枠は単純です。

しかし、目的に至るまでの過程、登場人物一人ひとりの背景・信条や生き方などを丁寧に描き、物語に厚みを持たせています。



ラスト・シーン・・・。

ルイス・ケインの相棒ハーヴェイ・ロヴェルに対する仕打ち、そして、その時のセリフ・・・、ケインの心情を表す描写・・・、まさに、“しぶい”という一言がピッタリのラストです。



冒険ミステリー小説のオールタイム・ベスト。

読後にカタルシスをもたらしてくれること間違いなし!! です。

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