高度異形成~上皮内がんは浸潤がんに進行するのか?(その2) | NANAのブログ

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子宮頸がん検診(細胞診)では、他のがん検診と違って、「前がん病変」とか「異常病変」と言われるCIN3(高度異形成・上皮内がん)が極めて高い頻度で発見されています。

 

産婦人科医師たちが発表した論文によれば、20~30代の若年女性が検診を受けると100人に1人という非常に高い割合でCIN3(高度異形成・上皮内がん)が見つかると報告されています。

しかし、検診で発見されるCIN3(高度異形成~上皮内がん)には過剰診断が極めて多く、それに対して行われている不要な治療=過剰治療によって生じている不利益(健康被害)は非常に深刻な問題だと言わなければなりません。

 

【 過剰診断・過剰治療とは?】

 

がん検診で発見され「がん」と診断されているものの中には、生涯に渡って症状を起こさず命も脅かさない「がん」が相当な割合で存在していることが近年、明らかになってきています。そういった本来は治療の必要のない「がん」を発見し診断することを過剰診断、治療することを過剰治療と呼んでいます。

 

過剰診断過剰治療の問題は世界中の研究者や専門家からも医療において懸念すべき重要なテーマであると認識されてきており、それは子宮頸がん検診に限らず甲状腺がんや前立腺がん、乳がん、肺がんなど、殆んど全てのがん検診において発生していると考えられています。

 

特に子宮頸がん検診では、「がん」の過剰診断とは異なって「前がん病変」とされるCIN3(高度異形成・上皮内がん)の過剰診断が極めて多く発生しており、過剰治療による健康被害が甚大であることを強く指摘しなければなりません。

 

子宮頸がん検診で発生している過剰診断と過剰治療の問題については以下のリンク先のブログ記事でも詳しく解説しているので是非、参照ください。

 

若い女性の皆さんへのメッセージ

 

『産婦人科医・婦人科腫瘍医の行ってきた治療行為について「子宮狩り族」と批判するのは不当か?』

 

「子宮頸がん」でないのに、CIN3で年間1600人の子宮が奪われている~過剰診断・子宮狩りの現実(ほたかさんのブログより)

 

日本産科婦人科学会のトピックス~CIN3(高度異形成)の大部分は自然消失・退縮する(ほたかさんのブログより)

 

また、世界最先端のがん研究機関と言われる米国NCIの研究者たちも過剰診断と過剰治療の問題を重大視しています↓

 

『がんの過剰診断ー重大なこの問題にフォーカスする』

 

◾◾◾◾◾◾◾◾

 

次に、CIN3(高度異形成・上皮内がん)の病理診断の問題について少し触れます。
異形成と呼ばれている病変の病理学的な分類は、欧米や日本との間で多少の違いがあります。例えば米国に比較して日本はより細かく分類する傾向があり、またよく言われるように、海外と日本の病理診断にずれや不一致が生じることは少なくありません。日本の病理医の間でも診断が一致しないこともあります。
このことは、検診で「異常」を発見された同じ受診者でも、担当した病理医や産婦人科医によっては、手術(円錐切除や子宮摘出)になったり「経過観察」や「異常なし」になったりすることを意味しています。

 

近藤誠氏は著書『がん放置療法のすすめ』の中で、前回のブログ記事で紹介した文献〔3〕を引用した上で、次のように述べています。(P58)

「この報告には、少し問題があります。生検でがんと診断することはできますが、子宮切除のような手術をして組織検査をしなければ、がんが上皮内にとどまっていると確定診断できないからです。・・・つまり、その報告で(ゼロ期が1期に)進行したとされたものは、実際には最初から1期(浸潤がん)だった可能性があります。」

 

子宮頸がん検診で行われる“細胞診”は、子宮頸部粘膜表面から擦り取った細胞を顕微鏡で診るだけなので、それだけではがん細胞が粘膜上皮を越えて浸潤しているかどうかはほとんど分かりません。
そこで次のステップとして、子宮頸部から米粒大くらいの組織を採取する組織診が行なわれます。組織診では、がん細胞が粘膜上皮を越えて浸潤しているか否かをある程度診断できます。ある程度と限定するのは、組織診はあくまでスポット的なものでしかないので、複数箇所から組織を採取して浸潤が見つからなくても採取していない部位に浸潤がないとは限らないからです。


つまり、がん細胞が粘膜上皮内にとどまって浸潤していないことを最終的に確定診断するためには、近藤氏が指摘するように、子宮頸部を円錐切除するか子宮摘出して、標本を細かく念入りに調べる必要があります。
また、円錐切除の場合は断端部(切除した組織の切断端部)にがん細胞があれば、さらにもっと広範囲な切除もしくは子宮摘出を行なってみないと確定的な診断は下せないことになります。


高度異形成や上皮内がんは腫瘤を形成しないものがほとんどなので、コルポスコピー(拡大鏡を使った検査)でも正常組織との境がはっきりしないことがあります。円錐切除で切り取った組織の断端部に異常・病変細胞が見つかれば、切除した組織で浸潤がみられなくても、異常細胞を取り残したということで子宮摘出になったりします。


また高度異形成や上皮内がんでは、異常細胞が上皮を越えて浸潤していなくても頸部粘膜表面での広がりが大きい場合があり、その時には切除が広範囲になったり子宮摘出が行われたりします。その時には手術による合併症や後遺症のリスクもより高まります。

何年にも渡って経過観察する過程で組織診が何度も繰り返されれば、最初に見つからなかった浸潤部分が発見される確率が上がることになります。また未発見の浸潤部分のがん増大も、発見される確率の上昇に寄与するでしょう。

上皮内がんの経過観察を報告した論文は数多くありますが、それらの観察症例の多くは1960年代~1980年代と古いものです。
PubMedでそれらの論文を検索するとReferenceにはさらに時代が古い50年代~70年代の論文が引用されています。
その古い時代は、欧米でも日本でも浸潤がんの罹患率が、若年層においても現在よりはるかに高い(数倍~10倍近く)時代でした。検診もほとんど普及していない時代なので症状があって発見された症例も多かったはずです。

以上のような、細胞診や組織診の特性と診断の限界、また古い時代の患者の罹患特性(若年層でも浸潤がんの罹患率が今よりずっと高かったこと)などを鑑みると、文献〔1〕~〔4〕(前回ブログ記事を参照)などで報告された「上皮内がんの経過観察をしたら〇年後に〇%の浸潤がんへの進行があった」という観察報告には、最初から(発見されなかった)浸潤部分のあった症例が浸潤がんと診断されず、検査を重ねることで後から浸潤部分が発見されるケースの存在が十分に考えられます。


そして何より、先のブログ記事(『子宮頸がん検診による過剰診断・治療の異常な発生頻度』)で示した統計データからの推算結果が、異常なまでに高い過剰診断の割合、言い換えれば高度異形成や上皮内がんは10~30年後でさえ、その圧倒的多数は浸潤がんには進行しないことを示しています。

 

するとその先には、CIN3(高度異形成・上皮内がん)と呼ばれている「病変」の自然史とはどういうものなのだろう、それは浸潤がんに進展する連続性をもった病態と単純に位置づけられるものなのかという根本的な疑問が浮かび上がってきます。

 

子宮頸がん検診を推進し、その「多大な効果」を唱えている産婦人科医の多くは、「CIN3(高度異形成・上皮内がん)は2年くらいでその約3割が浸潤がん(子宮頸がん)に進行する」というような解説をしています。

しかし、冷静な論理的思考ができる人であれば、産婦人科医たちのそういった言説には少なからずの誇張と欺瞞があることに気づくはずだと思います。

 

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