先週のつづき。
ミダスメタルの銅磨き仕上げのカウンター。
毎朝4時に起きて現場の日々が続きます。
菊地さんと今年の新人2人の3人が今回の施工メンバー。
今年の新人は2人ともセンスが抜群なんです。
過去ブログでお伝えした「グラデーションの版築仕上げ」の時もそうでしたが、本当に「勘」が良い。
今回もとても新人とは思えない活躍ぶりでした。
ここで大事になるのが「今どきの若手の育て方」です。
私はまず、2人にこのミダスメタルという材料はどういう材料で、どういう仕組みで出来ていて、完成像を詳しく説明して、それから道具の説明、使い方、注意ポイントを説明します。
これがと〜っても大切。
これをきちんと理解すると、自分で考えて工夫するようになります。
坂口渉君には全長5メートル程のカウンターを最後まで1人で仕上げさせました。
でもお客様の大事な商品です、絶対に失敗する事は許されません。
そこで私の大事にしている「今どきの若手の育て方 その2」
大丈夫かな?とちょっと心配な時は質問します。
「何に注意をしてる?」とか「これからの施工手順を教えて?」とか。
すると「次はパッド無しの1200番を縦横に通して掛けて、次ぎにパッド付きの1200番でもう一度仕上げしようとしています」などと返ってきます。
今の子達は理論立ててきちんとものを考えられるので、こうして質問する事は本人の理解度をさらに高めるし、任せる側の安心にも繋がります。
同じく新人の千夏。
といっても千夏は昨年の途中入社なので、坂口君よりちょっと先輩。
千夏は抜群のセンスを持っています。
仕組みを教えるだけで彼女の場合はすぐ出来ちゃう。
さらに自分で工夫はするし、仕上がりも凄い。
カウンター角の丸味のある部分の仕上げも本当に上手かった。
菊地さんとは相棒の関係で、この全長17メートルのカウンターを仕上げてくれました。
日曜日夜に塗り付け、火曜日の朝から毎日研磨作業の繰り返し・・・
日々変化して行くその姿に、他の職種の作業員みなさん「これすげ〜な〜」って驚かれていました。
まさに現場のヒーロー状態。
でも、実は毎日毎日が不安と緊張の連続でした。
磨き上げていけば行くほど、細かい粗が出てきて「菊地さん!もう一回研ぎ直そうか?」と私。
でも「これ以上削ったら下地が出るかもしれない・・・でもこのままでは自分達が満足行く作品にならない・・・もう一回チャレンジしましょう!」そんなやりとりが毎日続きました・・・
その時の1枚。
必死とはこういう状態なのでしょうね。
写真からでも「絶対に成功させるんだ」という意気込みが伝わります。
現場では研磨機の音だけが鳴り響き、3人はそれぞれ、黙々と目の前の壁と向き合っていました。
そのお陰であと一歩のところまで来ました。
角の丸味も素晴らしい〜
そして日曜日。
この日は最終のワックス作業。
新人2人はこの一週間で研磨作業のベテランとなりました。
渉がワックスを塗り付け、千夏が最終磨きで追いかけていく。
菊地さんと「本当に今回は2人に助けられたね〜」ってしみじみ・・・
そして完成です!
まずは坂口渉君が1人で最後まで仕上げた作品
作業終了後は記念写真を撮っていました。
彼にとってもとても素晴らしい体験になったと思います。
お店の竣工時には下に見える照明ボックスからライトアップされてさらに輝きをますでしょう〜
そして全長17メートルの銅磨き仕上げのカウンター
お店の厨房をぐる〜っと囲う一体型のカウンターです。
かっこいい〜
こうして私たちのと〜んでもないチャレンジが無事終わりました。
また一つ成長出来たかな。
2018-04-23
2018-04-16
2018-04-13
いつもお世話になっているデザイナーさんから「中屋敷さん、今デザインしている飲食店で大きなカウンターがあるんですけど、ちょっと変わった仕上げやりたいんですけど、研ぎ出しかな~と思うんですが、何かオススメの仕上げ提案していただけますか?」とご相談をいただきました。
お店の概要と図面を見せていただき、「これなんかバッチリじゃないですか?」オススメしたのがこちら。
ミダスメタル銅の磨き仕上げ
「これ最高にかっこいいですね!」と、デザイナーさん。
ところがこのミダスメタルという仕上げ、一番のネックが「価格」なんです。
ミダスメタルとは1m2あたり、材料費だけで5万円近くもするというとんでもない材料なのです。
とりあえず見積もりを出させていただき、それからしばらく時が経ちました。
ふと…
「そういえばミダスメタルどうなったかな?やっぱり金額が高くて不採用になっちゃったかな?」と思い立ったその週間!いきなりメールが届きました。
そのメールには現場の工程表が添付されておりました。
なんとミダスメタルが採用になっていたのです!
ところがその工程表を見るとなんと10日後から乗り込みになってるではないですか~
おまけに工期も全然ない〜
正式な見本も出していないし・・・材料の確認もしなくてはならないし・・・と大慌て~
カウンターの下地を作ってもらう木工屋さんとの打ち合わせ、最終見本の作成、材料の手配等を超特急でやっつけてなんとか乗り込み日に間に合いました〜
まずはプライマーを塗布して下地処理。
今回の職長さんは菊地昇さん。
下地処理から下塗りを無事に終え、いよいよミダスメタルの仕上げスタートです。
こちらのお店は大きな商業施設の中の1店舗。
したがって他のお店は毎日営業中です。
なので今回の仕事は音の出る作業はお店がやっていない夜間しかできません。
この日は夜8時から現場に入り、音の出ない養生などの準備作業から開始。
この日の作業はミダスメタルの塗りつけ作業。
私は材料配合担当としてお手伝い。
ずら〜っと用意されたミダスメタルの材料。
なんと、総額100万円近い材料です~
準備を終え、音出し可能な午後10時から作業スタート!
ここからは写真撮っている余裕も全くありませんでした。
気がつくとこの日の作業が終わったのは翌朝午前四時。
夜8時から朝4時まで水1本飲んだだけで、休みなしのぶっ通し作業。
ほんと死ぬかと思った
乾燥養生を置いて火曜日。
朝4時過ぎに会社を出て、5時からお店開店の10時まで作業します。
第一工程は特殊なブラシで表面の樹脂を落とすという作業。
最初塗り付けた時は写真右側のようにただの茶色なんですが、表面の樹脂を落とすと金属が出てくるんですよ〜
こんな感じ〜
ほんと、不思議な材料なんです。
はい!キレイな銅仕上げのカウンターの出来上がり〜
とはいきません。
ここからが一番大変なんです。
ここから表面を何工程にも研ぎ上げてツルツルにしていきます。
ミダスメタルの難しいところは仕上げ材の塗り厚がたったの1ミリ程度しかないので、ちょっとヘタをして研ぎすぎると下地が出ちゃうんです。
なので、とーーーーっても、とーーーーっても神経を使う作業なのです。
当初の施工計画は難易度の高い荒研ぎまでは菊地さん1人で全て行い、比較的ミスのしずらい最終磨き作業を塗りつけ作業の時に手伝ってもらった今年の新人2人にやってもらうという計画でした。
ところが菊地さんの荒研ぎ作業を見ていて「こりゃこのままでは間に合わない」と感じ、急遽計画を変更し、翌日から若手2人に入ってもらうしかないということになりました。
研ぎから磨き作業、最終仕上げまで7工程もあるのに工期は残り5日間しかない。
失敗したから塗り直すなんてできない。
そんなプレッシャーから眠れない毎日が続きました・・・
続く・・・