「もう…アパートは飽きたばい…何か違うところはなかとね?鉄砲ん弾は、もう撃ち尽くしてしもたろか?」
不動産物件評価を下すにあたって、訪れた中野不動産に言う。
アパートの間取りは、四角いスペースの中に3~4部屋と便所、洗面所、風呂の3点セットを上手に配置し、どこも似たり寄ったりとした作りになっており、アパートの取材が重なると、どうも飽きが蔓延してくる。
「アパートは、どこでん四角の中に似たごたっ部屋を配置したしてあっとばい…そがんとをごっとい…見たっちゃ、なんて書けばよかとやいろ…も~文章が湧き出てこんばい!」
中野不動産に対し駄々をこねると、社員一同「う~ん!」と唸り、
「…そしたら、売り物件にしましょうか…?」
(そいでよかったい!鉄砲ん弾は、ま~だあっとたい。アパートばっかい紹介せんちゃ、たま~に、そがんとを織り込めばよかとんば…はは~ん、売り物件は金額の張るけん、なかなか売買が成立せんとやろか…?アパートに入居すっとは、あんまい金額のかからんけん入居しやすかとやろ…アパートは、入退室がけっこう発生すっとやろばってん…売り物件は、なかなかやろけんね…)
中野不動産事務所を出て、小船越交差点より長崎方面へ向かい、ちょっとだけ進んだところで左折、細い道をくねくね更に進んだ突き当たりに目当ての中古住宅の売り物件があった。
「おっと~!ここらは割と新しか団地じゃなかね?」
外壁の色といい作りの形といい、個性を発揮した住居群が軒を連ねている。
「はい、ミニ団地ですね…」
(あいどん…国道から入ってここに来んまで、ちい~った道が狭かったね…あいどん、オイがとは軽自動車やったけん…スースー来たばい…)
案内の中野不動産のオトコは、玄関から家の中にソクソク入っていき、空き家になっている室内の空気を入れ替えようとしてか、しきりに雨戸を開放している。その作業には目も向けず、敷地を歩いて一周すると…
(家の周りは、けっこう余裕があっぱい!オイが家よいかゆったりしとっ!)
家の周りを一周して、開け放された玄関に来ると…
(うん…さすが一軒家の玄関…広かし、明るか!明るかはずたい、洒落た出窓まで付いとる)
玄関から室内を見渡すと、空き家になっているためか建具はすべて開け放たれており、和室、ダイニング、キッチン、キッチンの流しまで、広い室内が一望できる。
「やっぱ…一戸建て住宅!作りが変化に富んどっぱい!こがんところばっかい見てさるけば、面白かばっかいないどん…」
案内の中野不動産のオトコに話しかける。
入居世帯を多く詰め込もうと効率的な設計が施されたアパートと違い、一戸建て住宅は、玄関に出窓が見られるように、家主と設計士の個性が発揮された作りとなっており、新たな発見に目を楽しませてくれる。
「…そ~ですね…」
(『そ~ですね』って、こがん物件を持っとって、早よ~う出せばよかとんば…鉄砲ん弾を隠したごとして、アパートばっかい紹介して…)
玄関より廊下に上がり、一番近い部屋が8畳の和室である。アパートは、どうしても6畳しかとっていないが、8畳ともなるとやっぱり広さを感じる。アパートにはない床の間があるのも一戸建ての象徴か…
(床の間の隣は…オイが家は、床の間の隣は仏壇になっとっとないどん…)
折りたたみの引き戸を開けると、中は『がらんどう』であり、向かって右が床の間、真ん中が仏間、左が押入れ、と我が家の配置とまったく一緒である。しかし我が家は6畳。やっぱり8畳は広い。
8畳の和室の隣は、和室と建具で仕切られたダイニングと台所。ダイニングと台所は、フロアが一体でも中途半端に壁で仕切られているが、それでも一体感が残り、広さを感じさせてくれる。
台所は、フロア、流し台、吊戸棚とも茶色で統一されているが、3方向からの採光で明るい室内を実現しており、テーブルを置いてここを台所兼食事場所とすれば心が弾む楽しい食卓となるのではなかろうか…そうすれば、ダイニングはくつろぐだけの憩いの場所か…
洗面所と風呂は、ダイニングと接続しており、洗面所を通って風呂に入ることになる。洗面所には東向きに窓が設けてあり、洗面しているとき朝日が射し込んでくると、その一日の学校の勉強に、会社の仕事に対し、俄然やる気が湧き出してくるのではなかろうか。
(ありゃ、便所がなか!アパートは、便所、洗面所と風呂が3点セットばってん…)
「便所は、どけあっと?」
中野不動産のオトコに聞くと、ダイニングを出て廊下から便所に進入する、のだという。
(便所、洗面所と風呂は隣同士になっとっとばってん…進入路が別個になって実用的には3点セットになっとらん!ここらも一戸建てのよかところやろ…)
便所も風呂も南側に窓があり、明るく、どちらを利用するにも快適に用が足せる。特に風呂に入るのは、夜になりきらない明るいうちが最高の贅沢!と思い込んでいる筆者にとっては、ありがたい作りである。
一階部分の見学が終わり、2階へと階段を上ろうとすると、中野不動産のオトコが階段横のドアを開け…
「ここに隠し部屋があるんですよ…」
階段下を利用したけっこうな広さの物置である。
「ほ~!よかね!」
軽くいなして階段を上ると、階段の壁には、明かり取りの窓が2方向に設けられており、設計建築の配慮が感じられる。階段を上りきると…
「ここにも物置があります。屋根裏を利用した物置ですね…」
「へぇ~!よ~作っとんね!家主と設計士が、よ~相談して設計して作ったとばいね!」
屋根裏部屋は、入り口は狭いものの奥行きがあり、部屋の天井には蛍光灯まで吊り下げられている。
(この家は、ないでも、よ~片付くばい!)
二階は、6畳の洋間と建具で仕切られた6畳の和室と4畳の洋間で実用的には二部屋か。4畳の洋間は、夫婦の寝室にしてもよし、箪笥置き場にしてもよし、和室とのコンビ部屋である。6畳の洋間、和室の二部屋とも2方向からの窓の採光で明るい部屋であった。
「この中古住宅、いくらね?」
「1100万円です!」
「安さ~!」
(オイが家は、土地1000万、家1000万!そいも30年も前!30年前、その値段で土地と家が手に入ったとすれば、こがん楽なことはなかったろ~に…)
「そ~ですね…アパートに入るための家賃にちょっとだけ上乗せた金額を負担して払っていけば自分の財産を築くことが出来るとですけどね…」
小船越町の中古住宅…お手ごろな買い物件である。