ハンチントン病の利点

ハンチントン病の方は奇妙な利点がいくつかある。子だくさんでがんになりにくいとという点である。後者のがんになりにくいという点は人体最大のがん抑制遺伝子P53遺伝子とかかわっている。ハンチントン遺伝子を持っておらっる方はP53遺伝子の血中濃度が高いことがわかっている。元来P53遺伝子はがん化した細胞をアポトーシス(自己融解)させる機能を持っているのだが、ハンチントン病はこの遺伝子をもっている生物のみ発症することがわかっている。直接的に考えればP53遺伝子の機能そのものが線条体の壊死を起こしハンチントン病を発症させているようであるが、そんなに簡単なからくりではあるまい。

またこのP53遺伝子はがんを防ぐだけでなく免疫能を高めることも知られている。免疫能の上昇は生殖能力を高めることが多産につながるようである。またハンチントン病の遺伝子は様々な認知能力を高め性的魅力が高まることも知られている。このことも子だくさんの一因になっているようである。

 

ハンチントン遺伝子から見えることは

 人間の遺伝子の持つ2面性がこの遺伝子から垣間見える。つまり良かれと思われる遺伝子が実はちょっとした数の違いで破滅的な疾患を引き超す。これは他の遺伝子にも当てはまるものがある。自閉症の遺伝子があるとすれば「理科系の能力がたけていて一つものに集中して視野を狭くしていく」このベクトルはいい方に出れば研究者やエンジニアなどの才能に秀でるのであるが悪い方にでれば「自閉症スペクトラム」の自閉症となり得るようである。このことは世界の理科系の秀才が集まるシリコンバレーの住民の子供たちには自閉症の発症率がとびぬけて高いことからも実証されているようだ。

現時点では破滅的な遺伝子も遺伝操作技術の進歩や医療・科学の発展が将来もしかするとハンチントン遺伝子のCAG配列の多さが優れた未来人誕生を引き超す可能性もあるかもしれないと感じているのは私だけではないはずだ。

 

Chiara Zuccato/Elena Cattanero:ハンチントン遺伝子のパラドックス、日経サイエンス201611月号(SCIENTIFIC AMERICAN日本版)原題名The Huntington’s Paradox (SCIENTIFIC AMERICAN August 2016) :70-752016

 

増井徹、齋藤加代子、菅野純夫:遺伝子診断の未来と罠、日本評論社、東京、2014

 

Elena Cattanero/Dorotea Rigamonti/Chiara Zuccato(ミラノ大学COE神経変性疾患研究所):ハンチントン病の謎、日経サイエンス20033月号(SCIENTIFIC AMERICAN日本版)原題名The Enigma of Huntington’s disease (SCIENTIFIC AMERICAN December 2002) :54-602003

 

ハンチントン病の利点、日経サイエンス20084月号(SCIENTIFIC AMERICAN日本版)(SCIENTIFIC AMERICAN) :16-182003

 

福嶋義光(監修):遺伝医学やさしい系統講義、メディカル・サイエンス・インターナショナル、東京、2013

 

岡田尊司:発達障害と呼ばないで、株式会社 幻冬舎、東京、2012