ハンチントン遺伝子が脳に働く作用

近年の研究でハンチントン遺伝子はニューロンを丈夫にしてストレスに強くすることが分かっている。またマウスの脳でハンチントン遺伝子をオフすると細胞が死に神経症状が現れる。またハンチントン遺伝子が脳回路の形成と神経シグナルの伝達を促す「脳由来神経栄養因子」というたんぱく質の生産を促進することが分かっている。

 

CAG配列の繰り返しの数とハンチントン遺伝子

ハンチントン遺伝子は元来脳・神経系統の発達には必要不可欠なもので進化の過程で特に重要な遺伝子であることが分かっているが、しかしそれもCAG配列の繰り返し35回までである。繰り返しが36回を超えると突然ハンチントン病を発症してしまう。ある意味歓喜と狂気の境目が36回でありそこに遺伝子の戦略を見ることができるといえる。ハンチントン遺伝子そのものは生物の脳・神経系統の分化から発達にかけて重要なことは近年の研究で明らかであり、CAG配列の繰り返しの数が増えるということは高等生物になり神経系統・脳の発達に寄与している。しかし36回という数字を超えると破滅的な現象を起こすということは神経系統の発達にハンチントン遺伝子以外の別の遺伝子の関与もあるであろう。

 

Chiara Zuccato/Elena Cattanero:ハンチントン遺伝子のパラドックス、日経サイエンス201611月号(SCIENTIFIC AMERICAN日本版)原題名The Huntington’s Paradox (SCIENTIFIC AMERICAN August 2016) :70-752016

 

増井徹、齋藤加代子、菅野純夫:遺伝子診断の未来と罠、日本評論社、東京、2014

 

Elena Cattanero/Dorotea Rigamonti/Chiara Zuccato(ミラノ大学COE神経変性疾患研究所):ハンチントン病の謎、日経サイエンス20033月号(SCIENTIFIC AMERICAN日本版)原題名The Enigma of Huntington’s disease (SCIENTIFIC AMERICAN December 2002) :54-602003

 

ハンチントン病の利点、日経サイエンス20084月号(SCIENTIFIC AMERICAN日本版)(SCIENTIFIC AMERICAN) :16-182003

 

福嶋義光(監修):遺伝医学やさしい系統講義、メディカル・サイエンス・インターナショナル、東京、2013

岡田尊司:発達障害と呼ばないで、株式会社 幻冬舎、東京、2012