「君の声が聞きたかったんや・・・」この言葉は、松下幸之助が、私の会社の社長が若かった頃の深夜にかかってきた電話での有名な一節である。松下さんにこんな言葉を直接いわれたら、私なんかすべてを犠牲にしても松下さんのために生きてしまいそうだ。

この言葉を25年まえに入社したときに私は知った。新人の頃、深夜、会社の寮で同僚とお酒を飲んで酔った勢いで同期の女の子へ電話することになった。ジャンケンに負けた私は、ダイヤル(当時は)を回した。そのときの私の第一声が「君の声が聞きたかったんや・・・」であった。電話に出たのは彼女の父親で、酔って深夜に電話をかけてきたことを怒鳴られた。結局、土曜日は合コンどころか、彼女の実家へ謝りに行くことになった。その彼女は、現在の妻である。このフレーズは私にとって忘れられない言葉となった。

昨日、早朝のプレゼンに臨んだデザイナーのK君は、デザイン3案を持参し、目を真っ赤にしていた。徹夜でデザインを仕上げたのだ。一昨日の夕方、K君と打ち合わせをしたとき、彼が用意していたデザインがいまひとつであった。いろいろと話し合って明日のプレゼンには2案用意するようにお願いした。彼が他にも大きな仕事を抱えていることは知っていたが、プロは常に最高のパフォーマンスを求められる。

私はその夜、床に付くまえに携帯のアラームを午前3時にセットした。そして、アラームで3時に起きてメールを打った。「頑張ってる!? 今回の仕事が成功すれば必ず道は開けます。あともう少し頑張ろう!」深夜、誰もいないオフィスで一人液晶画面に向かいながら仕事をしていたら、励ましメールが届き、こんな時間に心配してメールをくれた私に対してK君は感激したという。私の気持ちは複雑であった。メールを打つとトイレに行って、そのまま寝てしまったのだ。

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