2012-03-13 08:24:10

読売新聞の記事について

テーマ:ブログ

本日の読売新聞(朝刊)で、和泉高校に関する記事が掲載されましたので、この記事につき、コメントさせていただきます。記事の内容は、今年行われた和泉高校の卒業式で国歌「斉唱」をしなかった教員に関する内容です。


昨年、大阪府では、公立高校の卒業式などの式典の際に、教職員は起立して国歌を斉唱する旨の条例が制定され、今年の卒業式に際しては、大阪府の教育長から、すべての教職員に対し、起立・斉唱をするように文書による職務命令が出されました。教育委員会からは、複数回にわたって、全校長に対し、この職務命令を各学校で徹底するよう指示がありました。


私は、この職務命令が出された際に、起立は容易に確認できますが、斉唱(歌うこと)については、確認が難しいと思いました。確実に確認しようとすれば、誰かが起立しているすべての教職員の口元まで近寄って歌っているかを確かめないといけなくなりますが、これでは、せっかくの卒業式の雰囲気が台無しになり、生徒や保護者のための学校の卒業式としては相応しくないと考え、「どのようにして『斉唱』を確認すればよいか」につき教育委員会に相談しました。


その結果、教育委員会からは、「遠目でよいので起立を確認しつつ、上を向いたり、下を向いたりなど、明らかに歌っていない教職員をチェックしてくれればよい」との指示を得ました。


卒業式では、教頭や首席教員が教育委員会からの職務命令・指示に従い、教職員の起立・斉唱を確認しましたが、「3名が歌っていなかったように見えた」との報告がありました。私は、再度教育委員会にその旨報告し、教育委員会からの指示に基づき、事実関係を各教員から確認することになりました。


3名のうち、2名が「歌っていました」、1名が「歌いませんでした」と答えました。いずれの教員との対話も円滑に進み、反抗的な言動を見せた人もおらず、一定の思想に基づく主張を展開した人もいませんでした。2名の教員は「次回の入学式では誤解されないようきちんと歌います」と答えていますし、1名の教員も「いままでずっと歌って来なくてもよかったので、つい・・・次回からはちゃんと歌います。すみません。」との明快な答えをもらっています。


卒業式の際に起立して国歌を「斉唱」する(東京都の)職務命令の適法性については最高裁判所がすでに適法であると判示しています。大阪府の条例は、選挙で選ばれた府議会議員によって決議されています。行政機関は、法の執行者として、議会が成立させた法(条例)を遵守し、司法(最高裁判所)の判断を尊重します。私は校長という教育行政機関の一員として、上司である大阪府教育委員会からの職務命令・指示を遵守しました。これが憲法が要請する民主主義であり、三権分立です。


もし、教育行政職員である学校の先生が、上記のように議会が制定し、最高裁判所も適法だと認めているルールを無視してよいのなら、条例の下位規範である学校の校則を生徒に守るよう教育する資格さえ失うことを実質的に意味します。「先生はルールを無視してもよいが、君達はクラスの代議員や生徒会を通して決まったルールを無視してはダメだよ」という話は幼稚園児でも納得できない話です。


今回は、「不起立」でなく「不斉唱」が取り上げられましたが、最高裁判決(平成24年1月16日)では、職務命令違反の教員の懲戒に当たっては、学校の秩序や起立を乱した程度も考慮して、慎重な判断が下されるべきであると判示されています。生徒や保護者の方が容易に現認できる「不起立」に比べ、「不斉唱」の違法性は低いと考えられます。従い、今回のように、反省もしており、「次回はちゃんと歌います」と言っている教員に対しては、懲戒に至らない「注意」で足り、確信犯的に「不斉唱」に踏み込むことを認める教員には懲戒処分の第一歩である「戒告」を「不起立」の教員と同様に与えるのが相当だと(私見として)教育委員会には伝えています。当然、最終的な処分については私の上司である教員委員会が判断・決定します。


上記のとおり、今回の件では、「不斉唱」の先生は、十分に私の話したことを理解してくれて、次回からはきちんと法を遵守してくれるものと信じています。この先生は人物的に素晴らしい人で、生徒の面倒もよく見てくれます。しかし、長年大阪(日本といってもよいかも知れません)にはびこって来た「教職員だけはルールに従わず、わがままを言っても許されるのではないか」というある種の”因習”が今回のようなことにつながっているのではないかと思います。


私は民間で弁護士をしていましたが、基本的に教職員は、純粋な人が多く、生徒のためによかれと思って仕事をしている人がほとんどです。ですから、必要以上に教職員(公務員)を叩いてはいけないと思います。ただ、上記の”因習”は絶対に是正する必要があります。生意気なことを言えば、「因習を憎んで、人を憎まず」です。この因習を是正するために、条例ができたのだと考えています。それを執行する教育委員会が、職務命令を出し、かつ、「斉唱」の確認方法についても指示を出しながら、肝心なところで「ちょっとやり過ぎだ」と梯子を外すようなことを言うのであれば、現場の人間としては「やりようがない」というのが偽らざるところです。


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