(政権選択)小泉構造改革路線のその先の政権公約を | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

(政権選択)小泉構造改革路線のその先の政権公約を



結語にある「政権選択の衆院選で自民、民主両党に何より求められるのは、魅力的な党首と国の将来像を明確な形で示す政権公約だ。2つとも欠けたままでは有権者は不毛の選択を強いられる。政党政治が再生できるかどうかの歴史的な岐路であり、日本経済再生の条件でもある」は、正論である。

また、佐々木毅教授の「時間という希少資源がどんどん失われていくことが一番深刻だ」という指摘も、正論である。

新報道2001の3月12日調査で、「次に行われる衆院選では、どの党の候補者に投票したいですか」で、自民18・0%、民主24・4%、未定47・6%となっている。この未定の47・6%は、支持政党なしの無党派層であり、不毛な選択を嫌っての様子見なのである。

問題は、この47・6%が投票したくなる政党に、自民党、民主党のいずれが早くチェンジできるかである。その際、両党に問われるのは、小泉構造改革路線の総括である。05年の郵政総選挙で、民意は「小泉構造改革路線」を国益に資するとして選択したからである。だから、民意は与党に衆院の3分の2以上の議席を与えたのである。従って、民意は、小泉構造改革路線を継承、発展するとの前提条件付きで、安倍、福田、麻生政権を容認してきたが、郵政民営化見直しをはじめとする小泉構造改革路線の転換は、約束不履行だとして、NOを突きつけることになるだろう。

一方、民主党は07年の参院選の民意を誤認して、小泉構造改革路線を否定してきたが、今回の小沢氏の「政治とカネ」の問題で、民主党自体に古い自民党が内在していることが露呈したのである。

両党が民意の信を失っているのは、05年に民意が選択した小泉構造改革路線をいずれもないがしろにしているのではないかと疑われているからである。いずれが、小泉構造改革路線を正しく総括し、小泉構造改革路線のその先を政権公約にして、新しい自民党に、新しい民主党にチェンジできるかによって、未定の47%の支持政党なしの無党派層が、05年と同じように「国益に資する」選択をすることになるだろう。

郵政民営化見直し問題も、消費税問題も、公務員制度改革問題も、当然そうした視点で考え、行動しなければならない。(3月21日記)


(参照記事)日経新聞「日本経済の選択」⑤西田睦美・編集委員の「リセットへ政権公約を」

「政治への信頼が地におちている。統治能力に疑問符がついたままの麻生太郎政権。与野党対立でスピード感に欠ける衆参ねじれ国会。そこに次期首相候補の小沢一郎民主党代表の公設秘書が、西松建設からの違法献金事件で逮捕されるという激震が襲い、民主党への期待感も急速にしぼんだ。政権交代がかかる次期衆院選で相対するはずの自民、民主両党の党首が、ともに有権者から不信の目で見られている。

佐々木毅学習院大学教授は『自民も民主も問題を起こし、経済危機の中で政策遂行をどうするかという本筋が見えない。政治へのあきらめならまだ救いがあるが、絶望に変わるのが怖い。時間という希少資源がどんどん失われていくことが一番深刻だ』と憂える。

自民、民主両党の『負け比べ』の様相で、不人気な相手の投手の続投を互いに願うもたれ合いの構図を、佐々木氏は『麻生さんと小沢さんの弱者共存体制』と称する。現在の政治の混迷の一因は、2005年の郵政選挙で圧倒的な支持を得た小泉純一郎首相が、党則を理由にわずか1年で辞任したことにある。衆院選の審判を受けずに、安倍、福田、麻生の3つの政権が生まれ、なし崩し的に郵政民営化をはじめとする小泉構造改革の路線転換が進んだ。

政権交代も視野に入れる霞が関の官僚機構は、サボタージュを決め込み、公務員制度改革や地方分権改革にはしつような抵抗を続ける。超党派の強い政治力で取り組むべき年金や医療制度の抜本改革は、与野党協議の機運すら生まれない。

この閉塞感を打ち破るには、衆院解散・総選挙で政治をいったんリセットし、有権者の意思で将来を託せる政権を選ぶしかない。来年度予算と関連法案の成立後、できるだけ早く選挙を実施できる環境を整える必要がある。自民、民主両党はマニフェスト(政権公約)の策定が急務だ。

昨年秋の自民党総裁選で明確な公約を掲げなかったことが、麻生首相の大きな弱みになっている。今になって首相は衆院選の争点について『消費税を含む税制の抜本改革を第一に言わなければならない』と力説するが、総裁選の時には税制改革のビジョンを何ら示していなかった。

首相がこだわる11年度からの消費税率引き上げには、党内に根強い慎重・反対論がある。増税の前提となる経済成長戦略や行財政改革と併せ、政権公約で何を訴えるのか。首相は選挙後の4年間を見据えた中期的な政策プランの党内論議を主導する責任がある。『改革政党』を前面に掲げた前回選挙を踏まえれば、小泉改革の総括も避けては通れない。

昨年秋に政権公約の概要を示した民主党も、検討作業を再加速させるときだ。『子ども手当』の創設など総額約20兆5千億円の新規施策の財源を、予算の無駄遣い根絶でまかなうという中身は説得力が乏しいものだった。決定的に欠落していたのは、リーマン・ショック後の世界的な経済・金融危機への処方せんだ。さらなる景気対策の財源を何に求め、経済再生の力点をどこに置くのか。マクロの経済政策の輪郭が見えない。

基本政策のぶれも、民主党の政権担当能力に疑いを抱かせる。小沢氏が代表に就任するや、年金財源にあてるための消費税増税が封印され、道州制も消えてしまった。仮に違法献金事件の政治的責任をとって小沢氏が辞任することになれば、その基本政策はどこまで引き継がれるのか――。

政権選択の衆院選で自民、民主両党に何より求められるのは、魅力的な党首と国の将来像を明確な形で示す政権公約だ。2つともかけたままでは有権者は不毛の選択を強いられる。政党政治が再生できるかどうかの歴史的な岐路であり、日本経済再生の条件でもある」