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1.はじめに
新聞記事によると、6月8日に開催された衆院憲法審査会は、「天皇制」をテーマに各党の自由討議を実施したとのことです。そのなかで自民党は、現行憲法で「象徴」とされている天皇について「憲法上、元首と位置づけることもあり得る」とし、さらに国旗や国歌、元号を新たに憲法に明記する必要性も述べたとのことです。

・自民、天皇の「元首」明記提案 衆院憲法審|日経新聞



記事中の自民党の主張をみると、2012年に自民党が発表した憲法改正草案と似た内容のようです。

2.天皇を「元首」と規定すること
まず天皇を「元首」と規定することについて考えてみます。元首についてわが国の憲法の多数説は、元首の要件のなかでとくに重要なのは、外国に対して国家を代表する実質的機能(条約締結や大使の信任状を発受する機能等)であるところ、天皇は形式的・儀礼的な行為しか認められておらず(憲法7条5号、8号、9号等)、実質的に行うのは内閣または内閣総理大臣なので、内閣または内閣総理大臣を元首と解しています(芦部信喜『憲法 第6版』47頁)。

上述の自民党の憲法改正草案1条をみても、自民党は国民主権を維持する意向のようです。わが国がイギリス等のような立憲君主制をとるのではなく、国民主権の政治形態をとるのなら、現行どおりの規定が妥当であるように思われます。

3.国旗・国歌の憲法への規定化
つぎに、国旗・国歌を憲法に規定することについてです。まず第一に、立憲主義の観点からは、国民の義務を憲法に規定することは謙抑的であるべきです。第二に、日の丸・君が代を通じて国家に対する忠誠義務を求める動きにつながるおそれがあります。個人と国家という二つの価値が衝突したとき、国家が優先されるおそれがあります。現行憲法は個人の基本的人権が目的で、統治機構(国)はそのための手段であるという構造となっています(憲法11条、97条等)。それを180度転換させるおそれがあります。第三に、この明文化が思想・良心の自由(憲法19条)を侵害するおそれがあります。

上述の自民党の憲法改正草案はこの点の改正理由として、「国旗・国歌をめぐり教育現場で混乱が生じている」ことをあげていますが、国民一人一人の人格的アイデンティティを尊重し、そこに干渉しないことこそ、憲法が思想・良心の自由を保障する真の意味があります(伊藤真『増補版 赤ペンチェック自民党憲法改正草案』32頁)。

4.元号の憲法への規定化
さらに元号を憲法に規定することについてです。現在、法律の元号法で運営されているものをあえて憲法に規定しようとすることは、天皇制を強化し、国民主権を後退させる意図が窺われます。国旗・国歌と同様に、元号も国民一人一人が個人の判断で決めるべきです。(伊藤・前掲32頁)。

5.その他
なお、冒頭の記事によると、自民党は今月、改憲項目として①9条改正、②教育無償化、③大規模災害などの際に国会議員の任期を延長する緊急事態条項、④参院選の「合区」解消の4項目を中心に議論する方針を決めたとのことです。

大規模災害などの際に国会議員の任期を延長する緊急事態条項については、以前このブログでふれたとおり、現行憲法54条2項の参議院の緊急集会がまさにそのために準備されているので不要です。むしろトルコ等で緊急事態条項が権力者の独裁の道具にされている事実を直視すべきです。

また、参院選の「合区」解消というのは、詳細が不明ですが、もし憲法44条、14条が定める一人一票の原則を放棄する内容であるなら、これは憲法改正の限界を超え、許されないものとなります。

■関連するブログ記事
・学校の無償化と憲法改正について

・自民党憲法改正草案の緊急事態条項について考える

・衆参同時選の際に緊急事態が発生したときのために改憲し緊急事態条項を新設すべきか?

・内閣総理大臣は憲法改正の提案をしてよいのか?

・片山さつき氏の天賦人権説否定ツイートに対する小林節慶大名誉教授の批判

憲法 第六版



増補版 赤ペンチェック 自民党憲法改正草案


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