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弁護士 小原友紀子

仕事から帰ってきてみたら、   
  『もう、あなたとは生活していけないので実家に帰ります。離婚してください。』
との書き置きを残して、妻が荷物をまとめて家を出ていっていました。
家のことは妻に任せきりにしていたため、私は、パソコンのパスワードも通帳の場所もわからず、日々の炊事洗濯にも困る状態です。
私が困ることをわかっていて何も言わずに出て行った妻の行動は、
悪意の遺棄じゃないですか?


法律相談で、男性からこのような質問を受けることがあります。

この事例で、妻が裁判で離婚を求めた場合、妻の上記行動が悪意の遺棄になるでしょうか? 悪意の遺棄だと裁判所に認められると、妻からの離婚請求は「有責配偶者からの離婚請求」ということになり、離婚が認められるハードルは上がります。 そのため、もし、夫が妻と離婚したくない場合には、悪意の遺棄を主張しなければなりません。また、妻としては悪意の遺棄と言われては困るため、上記のような出て行き方をすることは避けなければなりません。 そのためにも悪意の遺棄にあたるか否かは重要な観点です。

では、この事例は悪意の遺棄にあたるでしょうか?

悪意の遺棄とは、正当な理由なく、同居、協力義務を履行しないことをいいます。 正当な理由がある場合、すなわち合意による別居や病気療養中であるための別居などの同居拒否は「遺棄」にあたりません。 まずは、感触をつかんでいただくために悪意の遺棄の代表的な判例をご紹介しましょう。 1. 置き去りの事案---浦和地判昭和60年11月29日 夫が半身不随の身体障害者で日常生活もままならない妻を自宅に置き去りにし、正当な理由もないまま家を飛び出して長期間別居を続けた。 【判決要旨】 夫は半身不随の身体障害者で日常生活もままならない妻を、そのような不自由な生活、境遇にあることを知りながら自宅に置き去りにし、正当な理由もないまま家を飛び出して長期間別居を続け、その間妻に生活費を全く送金していないから、夫の前記行為は民法770条1項2号の「配偶者を悪意で遺棄したとき」に該当する。

2. 置き去りの事案---名古屋地判昭和49年10月1日

夫が妻に行先を告げず突然家出して消息を断った事案。

【判決要旨】 妻に行先を告げず突然家出して消息を断った夫は、正当な理由なく妻との同居義務及び協力扶助義務を尽くさないことが明らかであり、その他一切の事情を考慮しても本件婚姻の継続を相当と認め得ない。 3. 別居せざるを得なくさせる事案---神戸地判昭和26年2月15日

夫が、妻を(夫の)弟の家の電灯も畳もない一室に居住させ、主食類を与えてはいたものの約2年近く妻に対し妻らしい扱いを一切しなかったため、ついに妻が婚姻継続の望みを絶って実家へ帰った事案。 【判決要旨】 正当な事由なく妻を同居させない夫は、妻を、悪意をもって遺棄したものというべきである。 なかなか、ここまでの事案は少ないという感想を持たれる方が少なくないのではないでしょうか。

冒頭の家出した妻も、
・妻が置手紙をしていること(行き先や別居の理由が明らかにされていること)
・離婚を検討するために別居すること
の点で正当理由が認められそうです。
結論から言うと、冒頭の事例は悪意の遺棄とは言いがたいのではないでしょうか。

  では、置き去りにされた場合、離婚原因に全くならないのでしょうか?

そんなことはありません。 民法770条1項2号の悪意の遺棄まではいかなくても、770条1項5号(婚姻を継続しがたい重大な事由)が認められる可能性はあります。



以下では、悪意の遺棄は認められなかったが、婚姻を継続しがたい重大な事由があるとして離婚が認められた例をご紹介しましょう。 4. 夫があまりに多い出張、生活費を入れない例---大阪地裁昭和43年6月27日

夫が仕事の出張などで一ヶ月の大半を家庭外で過ごし、しかも生活費をほとんど入れないまま8年近くが経った。

【判決要旨】 夫がたとい仕事のためとはいえ、余りに多い出張、外泊等家族を顧みない行動により、妻に対する夫としての同居協力扶助義務の義務を十分に尽くさなかったことをもって今直ちに原告に対する「悪意の遺棄」に当たるとするにはやや足りないけれども、なお「婚姻を継続しがたい重大事由」があるとするに十分であり、その責任の過半が夫にあることもまた明らかである。 5. 妻が実家に帰ったまま戻ってこなくなった事案---横浜地裁昭和50年9月11日 病気療養のため実家に戻った妻が、家に戻るよう説得に来た夫や夫の両親に罵詈雑言を浴びせた。

【判決要旨】 妻の両親及び妻が夫を罵詈雑言したのに、夫らに対し謝罪する意思が全くなく、妻は夫らを責めるのみで自己を反省しようとは全くせず、これにより夫は右のような妻と共同生活をすることが不可能となり、両者の婚姻関係は回復しがたいまでに破綻したということができ、右に至った責任は夫側にないことは明らかであり、それに双方の年齢、婚姻継続期間、子どもはいないこと等を考慮すれば、夫には婚姻を継続しがたい重大な事由がある。

このように、悪意の遺棄は認められなくても、婚姻を継続しがたい重大な事由があるとされることがあります。



悪意の遺棄や婚姻を継続しがたい重大な事由の有無など民法上の離婚原因は、判断が難しい点ではありますが、裁判で離婚をする際には必ず必要となるため、自分にはどれがあるのか、どれなら裁判で認められるかを、慎重に判断することが重要です。
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