なごやんのBCL史(3)アルプスの谷間
私は小さい頃から童謡や世界の民謡、民俗音楽が好きで、NHKテレビの「みんなの歌」はお気に入りの番組でした。「みんなの歌」では世界の様々な国の民謡をたくさん紹介していました。
そんな中でしっかりと耳に残っていた曲が「♪われらがたのしき ふるさとエンメンタール」 で始まるスイス民謡の「アルプスの谷間」です。ヨーデルの入った3拍子の美しい曲です。
【*NHKでは、当時、切手を貼った返信用封筒を送ると無料で楽譜を送ってくれました。】
そのアルプスの谷間から世界に発信している放送局がありました。スイスの首都ベルンにある「スイス放送協会(SBC)」の外国向け放送(スイス放送、後のスイスラジオ インターナショナル SR I )です。
「アルプスの谷間」で歌われるエメンタール(Emmental,エンメ谷)はベルンを流れるアーレ川の支流、エンメ 川 に面した谷です。ですから、スイス放送はまさにエメンタールの声でした。
スイス放送は日本語放送は行っていませんでしたが英語放送があり、毎週日曜日に放送される「Melody Train Mailbag Show」という一種のDJ番組は世界中で人気を博していました。
ある時、私は受信報告と一緒にこの番組に「アルプスの谷間(スイスドイツ語名Emmentaler Lied,Emmentaler Jodler)をリクエストしました。
スイス放送の受信証の文言は個人宛で、特定のフォームがなく、私の受信証には「リクエストをエディターに回しておきました。」と書いてありました。
その後、「1月10日の放送でその曲を流しました。」という手紙をもらったのですが、その手紙は紛失してしまいました。⇒出てきました!(2016.4.17追記)
その後もたびたび質問したり音楽をリクエストしたりしました。
スイス放送の放送開始前には「Luegid vo Bärg und Tal ("山や谷がどんな風かみてごらん"、あるいは"山や谷はどんなかな"というような意味*)」という、スイスではよく知られている一種のわらべうたで、日本で言えば「夕焼け小焼け」みたいな曲がインターバルシグナルとして流されていました。
【*スイスドイツ語はドイツのドイツ語と単語も含めかなり違うので、別の言語として考えた方がよく、訳も自信がありません。】
そして、「スイスの時計が○○時をお知らせします。ピッ、ピッ、ピッ」ときます。さすがスイスです。
私は日曜日によくスイス放送を聴きました。ニュースも役に立つのですが、何と言っても「Melody Train」が目当てです。
受信状態の悪い時はなんともなりませんが、そうでない時はアルプスの谷間から響くヨーデルに癒されました。
その後も何度か質問やリクエストにこたえてくれました。
時にはスイスの切手も送ってくれました。私が昆虫好きだと知ると蝶や蛾の図案の切手とか。
スイス放送には概してドイツ的な生真面目さが漂っていましたが、時にはこんな冗談も返してくれました。(新潟でも連日30℃~35℃の真夏日が続いて、「やけどしそうだ!」と書いて出した報告書への返事です。)
「ずっと暑くていいじゃないですか。こっちは悲惨ですよ~。」・・・そうでしたか。
「super stamps」・・・私が低額の記念切手をあて先の部分を残し、封筒一面に何枚もびっしり貼って受信報告を送ったことでしょう、多分。
スイス放送は国際短波連盟の人気投票でも絶えず上位にランクインしていて、私も随分楽しませてもらいました。私も毎回上位に投票していました。
そのスイス放送の国際放送も歴史の波(I T の普及)には勝つことができず、国の予算削減とも相俟って1990年代にはインターネット中心になり、現在ではSwissinfoという情報サイトに集約されています。
Swissinfoには日本語ページもあり、スイスの話題を提供しています。
ただ、残念ながら国際放送(SR I )は現在存在しません。
まさに、"日本むかし話"でした。
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