セットアップ(3)何故右を向きやすいのか? | ゴルフを科学する★理系のための理論的ゴルフの勧め!

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ゴルフのスイング理論を中心に、ゴルフルールからツアー情報に至るまで、ゴルフについて幅広く語ります。上級者、あるいは理系の方向きの内容です。屁理屈が多いのはご容赦下さい。

皆さんは、アドレス時にボールより前にある目印(スパッツ)にフェイスを合わせ、それにスクエアになるように体をセットアップされると思います。

ところが、これが難しい。
私を含めて、私の周りには肩とスタンスが右を向く人が圧倒的に多いです。

皆さんはいかがですか?

スパッツにフェイスを合わせ、スクエアになるように体をセットアップし、再度目標をチラッと見た瞬間、「やけに左を向いているな」と思うことはありませんか?

それで少しずつスタンスを右に向け直し、結果はプッシュアウトや引っ掛け。

周囲に聞くと、「スクエアに構えると、左が広く見えすぎて気持ちが悪い」とか
「スクエアに構えると、どうも左を向き過ぎている気がして、引っ掛けることが多い」というような感覚が多いようです。

どうしてスクエアに構えているはずなのに、左を向いている感覚があるのでしょうか。

今回はその理由を考えてみたいと思います。

色々な理由が考えられますが、ある眼科医に聞いた話ですが、人が物を見る時には、視界の中央でとらえるよりも左下でとらえるのが心地良いのだそうです。

ピン等の目標を見る時も、真正面に見えるよりは左下に肩越しに見えた方が心地良いので、顔を右に向けたくなるのだそうです。

それにつられて、体とスタンスが右を向いてしまうのです。

別の理由としてアドレス後に目標を再確認する時に、顔を起こし、上体と顔を一緒に目標に向けるようにすると、せっかくスクエアに構えた肩のラインが左を向いてしまうことが挙げられます。

それを補正しようとしてスタンスを右を向けると、上体と顔を元に戻した時には肩は右を向くことになります。

この現象は、目線が上りやすい打ち上げホールで特に起きやすいです。

アドレス後に目標を見る時には、上体の形を維持したまま、頭の高さ(目線の高さ)を変えないように、首だけを左にクルっと回すようにしましょう。

頚椎の回旋は左右に50度程度なので、完全に目標方向を向ける訳ではありませんが、視界の隅でチラッと一瞬だけ見れば十分です。

長々と見ないようにしましょう。

また、ウィークグリップでは、スタンスをスクエアに構えると右肩が前に出てスライスのイメージが強まるので、右を向き易いです。

但し、この場合はスタンスは右を向いていても、肩のラインはスクエアになっているので問題ありません。

最後に、最も大きな原因として、遠近法を無視してしまうことが考えられます

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右のレールはフェイスの向き。
左のレールはスタンスの向きです。

両者はどこまで行っても平行で交わることはありませんが、遠くから見ると、一点に収束します。

レールの間隔を70cmとして、数百メートル先では70cmは数センチ、あるいは数ミリの幅でしかありません。

しかし、ここで錯覚が起きます。

ここは超難関コースで有名な、広島リージャスクレスト(ロイヤルコース)のロングホール2打目地点(2013/10撮影)↓

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残り240y程あります。
フェイスをピン方向に合わせ(白線)、スタンスと肩はそれに平行な赤のラインに合わせます。

両者のラインの間隔は70cmとします。

すると、赤ラインの延長線はピンの左70cmを向いているはずで、打つ場所からはその70cmは数ミリにしか見えないでしょう。

ところが、赤のラインの延長線を、遠近法を無視して、そのまま目の前の景色の中に投影すると、ピンの左数十メートルを向いているような錯覚に陥ります(赤の破線)。

これは、3次元の奥行きのあるものを、2次元の絵画のようにとらえてしまうことから来る誤りです。

これらの様々な要因が複合して、左を向いているように錯覚するのです。

スクエアに構えることはプロでも難しいことで、ショット毎にキャディーに後ろからアドレスの向きを確認させるプロもいます(基本を大切にする欧米のプロに多い)。

スクエアに構えるには、スクエアに構えた時の風景に慣れるしかありません。

そのためには、練習場で闇雲に球を打つのではなく、アライメントスティックやアイアンを足元に置いて、スクエアに構え、その時の景色の見え方に慣れるようにします。

右を向く癖のある人がスクエアに構えると、目標は気持ち悪い程右に見えるはずです。

また、スクエアに構えると、出球はプッシュ気味に右に出るように見えます。

ラウンド中の注意点としては一度構えた後に目標を見る時には体を起こさず首だけ回旋させること。

あるいは、一度構えたら、景色を見ずにさっと打ってしまうのも一法です。

いっそ、肩のラインをピンに合わせるのも有効です(陳清波プロの方法)。

もちろん、球はピンの右70cm方向に出ますが、丁度ドローしてピン筋に帰って来ます。

陳清波プロは、アプローチでも肩を目標に向けると言っていました(アプローチもドロー、という意味)。

また、私の経験では、ボールの前方ではなく、後方のスパッツに合わせると、意外としっくりとスクエアに構えられます。

グリップとアドレスと、テークバックの最初の40cmでショットの結果は決まると考えています。

しかし、どういう訳か、これらの部分のレッスンはおざなりになっていることが多いように思います。

何故でしょうか?