7日(月)の『クローズアップ現代』で、「うつは“心”から治せるか?」と題し、うつ病の治療法として、従来の薬物療法に加えて、認知行動療法に期待が高まっていることが紹介されていました。

心理学の勉強にも関わる内容で、自分自身の勉強にもなりました。


うつ病で悩む患者さんの数は100万人を超え、増え続けています。

うつ病の治療は、抗うつ薬を使用するなど薬物療法が中心に行われていますが、症状は改善しても、1年以内に再発し、慢性化する人も少なくないそうです。うつ病の再発を減らす治療として注目されているのが、認知行動療法です。


まず、《認知行動療法でうつ病をどう治していくのか?》


認知行動療法とは?

例えば仕事で失敗した場合。

健康な人  → 仕方がない、また次に頑張ろう!と思い直すことができる。

うつ病の人 → 自分には能力がない。自分はダメな人間なんだ!と思ってしまう。こうした悲観的、否定的な認知の仕方を改め、社会生活に戻って行動できるようにするのが認知行動療法!


薬は脳に作用して症状を和らげる対処療法なのに対し、認知行動療法は、うつ病を引き起こす原因となる否定的な考え方、マイナス思考を根本から変えるため、再発率も低いと考えられていると紹介されていました。


実際に、臨床心理士による認知行動療法カウンセリングの模様が流れていました。

患者(Sさん)は、2年前からうつ病に悩まされ、抗うつ薬を服用しましたが改善しなかったそうです。

朝起きると辛い、度々遅刻してしまうというSさん。


臨床心理士は、「こういう時って、どういう気分になってますか?」と質問し、落ち込んだ時の気持ちを言葉で具体的に表してもらい、うつを引き起こす原因を探っていました。


自己嫌悪してしまうというSさんに、さらに「自己嫌悪してしまう理由を考えると何でしょう?これまでの体験でありますか?」と質問し、Sさんが「自分に任された仕事をしなかった」と答えていました。


自分に任された仕事を出来なかったことで、激しい自己嫌悪に陥ってしまうSさん。

自分は何も出来ない人と悲観的な考えになってしまう・・・こういった考え方をカウンセリングで変えていっていました。


臨床心理士は、数値を使って、具体的なアドバイスをしていました。

Sさんが実際どれくらいミスを犯しているのか?

任された350件の仕事のうち、ミスを犯してしまったのは3、4回。

少し多く見積もって、4回を360件で割ると、わずか1%!

臨床心理士は、ミスしたのはわずか1%で、あとの99%は仕事ができている!と考えてはどうかと提案していました。

Sさんは、「言われるまで、こういう思考ができてなかったですね」と答えていました。


うつの時は、ネガティブな情報に注意を向けやすい。出来なかった回数より出来た回数が小さく見積もられてしまう。それを数字で客観的に聞くことで、なんだ!出来てないのって1%じゃないか!と発見できるんです!と臨床心理士がおっしゃっていました。


もう一人、2度目の結婚で出産されて、子育てのストレスからうつ病にかかり、抗うつ薬を服用しても返って悪化

してしまい、自殺まで考えたことのある女性のケースも紹介されていました。

カウンセリング当初は、以前の旦那さんに不満を抱いているように感じられましたが、実はこの患者さんの根本には、幼い頃の父親との関係が要因していました。


カウンセラーさんは、過去の辛い記憶を言葉で表すようにし、根本的な原因となるものを探していったそうです。

この患者さんは、治療から1年後、父親に感謝の気持ちを持てるまでに見方が変化していました。

過去は過去、現在とは繋がっていない・・・と、心の中で整理できていました。


こういうカウンセリングを週1回、4~5ヶ月続けることで、多くの方が回復されているそうです。


カウンセラーと1対1で向き合うことが苦手な人には、集団認知行動療法があるということも紹介されていました。

実践的な訓練を受けながら、うつを治す方法(互いの問題点を語り合う)を、患者同士で話し合っている様子が流れていました。


スタジオゲストには、慶應義塾大学の大野裕教授がいらしていました。

認知行動療法は、物の見方を変える手助けをするということ・・・。

考えに縛られている時、本当にあなたにとって大切なものはなんだろう?そういった視点から現実をみてみようと手助けするのが、認知行動療法であるという説明をされていました。


例えば、仕事で悩みを抱えていた人が、仕事だけが大切じゃない!家族や友人いろんな大切なものが見えてくる。ひとつの考えに縛られなくて済むようになる。


自分の考えを言葉にすると、客観的に見えるようになり、自分を遠くから見る自分がつくれる。

例えば、完ぺき主義の人がうつになりやすいと言われますが、他の見方をすれば、仕事が丁寧だというポジティブな面も見えてくる。マイナスな部分を認めた上で、プラスの部分を認める、この考え方が大事になるとおっしゃっていました。


そして、《認知行動療法は、なぜ広まらないのか?》


認知行動療法は、英国での実験で再発率を抑えられることが判明しています。(「うつ先進国」のイギリスでは、国を挙げて抗うつ薬にたよらず、カウンセリングでうつ病を治す「心理療法」を治療の柱に捉えて効果をあげてきています。イギリスでは、まず精神科の病院に行き、次に「心理療法センター」という場所が紹介され、そこで「認知行動療法」によるカウンセリングが行われるそうです。これは、2年前(2009年2月22日に放送された『NHKスペシャル』で説明されていました。))


この放送があった時とは状況が変わり、日本でも昨年4月から認知行動療法は保険適応になりました。

認知行動療法は薬物療法と併合すれば効果があがるのでは?と考えられているのに、どうして広まらないのか?


それは、国が医療機関に支払う診療報酬に原因があることが説明されていました。

ある団体の調査によると、認知行動療法の1時間の平均的な収入は8,400円

これに対して、通常の診察は5分で3,300円。この団体の調べに寄れば、多忙を極める患者の診察は1時間に6人前後なので、6人×3,300円=19,800円となり、通常診察の1時間の収入は19,800円

こういった結果からも、認知行動療法をやればやるほど、診療所、医療機関は経営的に成り立たなるという現状がわかります。


また、カウンセリングの技術が高い医師が少ないから・・・という専門家の意見も紹介されていました。


カウンセリングには、人間に対する洞察力や幅広い教養を身につけることが必要とされます。

そのためアメリカでは、精神科医を目指す人には、カウンセリングの実践的な訓練に加え、心理学と社会学などを徹底的に学ばせているそうです。

ところが日本の医学部では、大人数の講義が中心で実践的ではないといわれているそうです。


心の専門家である臨床心理士についての説明もありました。

大学院で専門の知識を学んでいる臨床心理士ですが、医師ではなく、残念ながら今のところ国家資格ではないため、病院でカウンセリングを行っても診療報酬が支払われません。多くの病院が人件費を抑えようと、非常勤で臨床心理士を雇っています。臨床心理士には収入が安定していない方が多く、年収300万円未満の方が3割もいらっしゃるという厳しい現状も説明されていました。

もし、臨床心理士が国家資格になれば、診療報酬が認められ、認知行動療法が広がることが期待されていることも紹介されていました。


最後に、スタジオゲストにいらしていた大野裕教授が大切なことをおっしゃっていました。


うつ病の治療は、とても難しい!

薬物療法も非常に重要であること!

薬物療法をきちんと行いながら、認知行動療法も使っていくことが大事!

役に立つものを、きちんと使っていくことが必要だということをお話されていました。


個人の判断で服薬を中止するのは危険です。不安があれば主治医に相談してください!と、番組内でも注意書きが出ていました。


主治医と相談して、自分が納得できるいい治療法を見つけていくことが大切なのだと思います♪


こちら で、『クローズアップ現代』(「うつは“心”から治せるか?」)の動画をご覧になることができます。

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