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ザックJAPANが挑んだ初の公式戦となるアジア杯。いや~、劇的な勝利が続き、盛り上がりが半端ない。嬉しいことにメディアは日本代表一色となり、約1ヶ月に渡る熱戦に日本中が釘付けとなった。

決勝の相手となるオーストラリア(豪)は体格・技術・高さを有し、相性的には日本にとって非常に厳しい強豪国。この一戦で最も期待された香川の離脱など負傷者が続出した日本は、どんな布陣で臨むのか戦前かなり注目していた。怪我で主力を欠き、連戦の疲労も蓄積した中で、大胆に人選やシステムを見直す方策も採れただろうが……そんな状態でも経験豊富な監督は選手を信じ続けた。そこには苦しみながらも今大会で結果を残してきたスタメン(4-2-3-1)への厚い信頼と、信念にも似たザッケローニの哲学が強く感じられた(今大会の采配を通して実感した監督の傾向をいずれ?)。

試合は全般的に豪が優勢といえ、度重なる相手の決定機を日本が辛抱強く耐え凌ぐという構図だった。豪は一貫して高さという特徴を活かすために、前線にハイボールを供給し続けた。その愚直なまでのシンプルな攻撃は、退屈ではあるが相手の弱みを突く最も効果的で危険な戦術だった。
過密日程の影響で、日本選手の動きは決して良くは無かった。さらに、香川の不在で起用された藤本は起用意図を理解せずに仕掛ける姿勢もなく、完全に試合から浮いていた。前半はその右サイドの不活性を負担する労力が全体に波及し、以前のようなバランスの悪い代表の姿になっていた。
ザッケローニはバランスの再調整と守備の軽減を狙い、岩政を投入しポジションの変更を同時に試みた。守備の長友を香川の代役として完全に中盤に配置した。この交代自体は思惑通りだったのだが、今野をアンカーに置くと想定していたので監督の決断には少なからず驚いた(当初はザック凄ぇ!→選手案だったとか)。しかし、この采配が契機となり、一転して日本は本来のバランスを取り戻すことに成功した。中盤が機能し始めた後は、豪の執拗な放り込みを守備陣の踏ん張りと守護神・川島の死守で耐え、攻撃陣が運動量で負けずに数少ない好機を逃さず決められるかという1点を争う根競べのような接戦となった。
そんな気迫の応酬を制したのは、またもやサブ組の活躍で、さらに滅多に見られない芸術的なゴールだった。その劇的な勝利と展開は多くの感動を誘い、豪の高さで脅威を与え続ける徹底した攻撃と、”アジアのバルセロナ”とまで尊称された美しいパスサッカーを展開する勝負はどちらが勝利してもおかしくない試合だった(豪はFWのタレントが注目されがちだが、日本同様に献身的な中盤が素晴らしかった)。

年初の開催となるアウェイの今大会は休養明けのJ選手の体調やボールの差異(逆W杯状態)もあり、徐々に調子を上げていけば良いと特に不安視していなかった。1次リーグで下位の国と際どい試合をした(アジアレベルの審判にはウンザリ)ときは若干ハラハラもしたがw、ザックJAPANならば順当に勝ち進むだろうと信じていた。アジアではベスト4以降の難敵が本当の意味での戦いといえ、やはり韓国戦が色々な意味でw印象的な一戦だった(特に前半はbest)。
私的MVPは安定感ある両ボランチで、特に遠藤の技術がアジアレベルを凌駕していた。若返りを進めた現代表の中で、過去大会の名波やシャヴィのようなチームの舵を取る存在として無くてはならない支柱といえた。

日本代表はアジア大会で男(U21)女共に優勝したばかりで、今回はA代表がアジア杯も制覇。これで名実ともにアジアの盟主として、圧倒的な存在感を世界に示した。そして、今大会で前代表からの苦杯を尽く払拭してくれたザッケローニ監督。その監督の下で、代表は日本サッカーの象徴ともいうべき才能溢れた黄金世代から、遂に本格的に新たな世代へと移行していく。まだまだ伸び代が大きい日本の地位は暫く安泰だと思われ、ザックJAPANは今後益々強くなる。ザッケローニのカルチョ=守備(勝負強さ)の哲学が代表に根付き、海外組の経験が加わり、さらにJリーグの歴史とも重なるプラチナ世代も控えた代表の未来は明るい。

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津原泰水 「赤い竪琴」

2009-12-27 Theme: 津原泰水

赤い竪琴
津原 泰水 東京創元社 ¥672 (文庫: 2009/09/30)

日常に倦み、無気力に生きるグラフィックデザイナーの入栄暁子は、祖母の遺品から出てきた夭折の詩人の日記を、その孫・古楽器職人の寒川耿介に返すため、尋ねていく。無愛想な寒川は、押し問答の末に日記を受け取るが、お礼にと自作の赤い竪琴を暁子に渡す。この不思議な出会いは、沈潜していた暁子の心を強く揺り動かした。 受け継がれる“絆”と“謎”の行方を描く、静謐な恋愛譚。

夭折の詩人・寒川玄児の手記が祖母の遺品として残された入栄暁子は、親族のもとへ忘却されていた形見を手渡そうと、少ない手掛かりから玄児の血縁――古楽器職人の寒川耿介に辿り着き、尋ねていく。
だが、彼の周囲の人たちは警告にも類する助言や、注意を喚起する忠告を促し、彼女を無闇にも警戒させる。その言葉通り、彼女が対面した寒川玄児の孫・耿介の寡黙な態度は、実際に冷淡に映るほど、心ない応対であるようにも受け取れた。

そんな決して円滑ではなかったふたりの出逢いは、彼から返礼として贈られた赤い竪琴(THE FLAMED LYRE)が互いの運命を結び付けるかのように、徐々に変化の兆しを見せ始める。
グラフィックデザインの仕事を糧として孤独に生き、虚無の日々に倦んでいた彼女は、いつしか彼に淡い恋心を寄せていく。独特な雰囲気で人を寄せ付けない、無口で無愛想な若き職人の姿は、楽器を扱う自身の仕事に対する揺ぎない自信を凛々しくも漲らせていた。そして、何よりも彼が造る楽器には、感受性豊かな家柄の気質が滲み出るように、天性の所作が純良に宿されているとも感じられた。

寂然とした控えめなふたりの振る舞いは、やがて暁子の想いに呼応し、静やかに相手を慕う恋心として共に意識されていく。その静謐な想いが心に秘められた純愛ともいうべき恋情は、敬意を孕んだ双方を思い遣る清らかな恋愛として、次第にふたりの関係性の中に芽生え、育まれていく。
それが大人の男女が選択する、淡い恋愛の形だった……。


互いに流れる血が現代に喚び起こした、過去に遡る恋路を辿るかのように繋ぐ、奇跡的な恋愛小説「赤い竪琴」。
大人の慎み深い恋愛模様が4つの章で綴られる物語は、恋の当惑と憂愁に揺れる心中の移ろいが、詩情のような繊細でいて壮美な筆致により紡がれている。その印象は、赤い竪琴の清らかな音律で奏でられた哀歌にも似た哀切な祈りであり、また、詩人が託した情熱的な思念が文章の綾として丹精に込められている詩片として眩く想起させられる。

赤い竪琴の音(ね)と耽美な詞(ことのは)に導かれたふたりの出逢いは、隔世の血の絆に歓迎され、海(わたつみ)をも臨む焦がれる想いとして互いの胸中を温和に包み込んだ。瞑目していた赤い糸が、赤い竪琴の響きに誘われ、まるで過去の恩恵を準えさせるかのような奇遇としてふたりを結び付けた。
この静謐な恋愛小説は、吟遊詩人オルフェウスが奏でる竪琴の音が聴く者の誰をも恍惚と魅了したように、読む者を幻惑と黄昏の彼方へと浸らせるに違いない。著者から永久少女たちへと捧げられた、時の波間を揺蕩うような哀愁漂う大人の恋の物語は、恋愛小説という価値観を払拭させる瞠目の一冊として、心に秘められた繊細な琴線を揺り動かし、記憶の奥底に深く刻み込まれることだろう。


『ならば詩人の成すべき仕事とは、発語の技術を磨いた挙げ句、一切を忘れ野蛮に帰す事ではありますまいか。私ときたら未だ最初の一言を探して彷徨ふ段階に居ます、私には時間が必要です』

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