井上由美子氏
先日日本民間放送連盟主宰の民間放送全国大会に行ってきた。この大会はCMの表彰も一部にあるが、多くは特徴ある番組や放送技術の顕彰など放送メディア寄りのものである。
私の目当ては脚本家井上由美子氏の講演である。私自身は余り視聴したことはないが氏は今のテレビドラマの中では売れっ子で聞いたことのある作品※を多数手がけている。
※「白い巨塔」、「火垂るの墓」、「14歳の母」、「SCANDAL」etc.
氏の講演のテーマは「番組の現場から~ホームドラマなき時代の「家族」~」という。第一線で活躍する人がどのような感性で書いているかに興味を持った。
氏は丁度私などより一回り下の世代で、物心付いたときから既に周りにはテレビがあった。テレビとともに成長し、その黄金時代を過ごしてきた人である。
なるほどと気が付かされたのは、氏がまだ視聴者というだけの時代はホームドラマ全盛時代であった。「寺内貫太郎一家」などという懐かしいタイトルを聞いたが、そういえばその昔「七人の孫」などという番組もあった。
ところが氏がまさに脚本家として世に出ようとした頃、氏の脚本が没になる理由が「家族」のことに触れていることが「今風ではない」と言われたのだという。その時代は1990年前後の話である。
つまりその時代には既にホームドラマというジャンルが崩壊していたと氏は言う。それは日本の家庭から茶の間が消えてきた時代に符合する。
各家庭はどんどん核家族化し、構成員である一人一人の家族は自分の個室に閉じこもる。高度経済成長は個々人がテレビを持つことを可能にし、茶の間でチャンネル争いをする必要がなくなった。
所帯を相手にしていたテレビは個人を相手にするようになって、ホームドラマは居場所をなくしたのだという。それはまさにホームそのものの崩壊であったかもしれないと総括する。
氏の分析とその社会現象にはうなずける部分は多い。だからこそ「家族」にこだわることが必要だという氏の考え方は捨てないで守って欲しいと思った。
ただホームドラマは崩壊したと氏は言うが、倉本氏のドラマには少し変ってはいるが何時も家族があった。倉本聰氏のドラマを支持するのは、家族は崩壊してもやがて再生するべきものと描かれるからで、私は氏のドラマは形を変えたホームドラマだと思っている。




