▼先日、役者の勉強をしている最中だ、という方とお話する機会がありました。
▼その方曰く、「俺には古典は合わないんですよね」って言っておられたのですが…
そこで私、
「どんな物語が合わなかったんですか?!」って聞いたのです。
そうしたら、
「イメージで敷居が高い」
と・・・
▼確かに古典戯曲に触れる機会というのはどんどん少なくなっている気がします。古典戯曲に関して言えば、その時々の時代背景とかその国の背景などなどが分からないと読解するのに時間もかかるでしょうし、意味が分からない事も多いと思います。
▼とっつきにくいっていうイメージがあるには事実だと思います。しかしながら古典戯曲でも現代の戯曲でも・・・どんな時代の物語でも普遍的な事を物語っていると思うのです。
▼例えば、『ロミオとジュリエット』
古典戯曲の中でも比較的有名な物語だと思います。悲恋で主人公二人が最後は自殺してしまうという悲劇です。また、ロミオとジュリエットの純愛を貫く姿にとても心を動かされます。こうした悲恋でなくとも純愛を貫く物語は時代を通じて普遍的な男女の気持ち、感情が元になっているのではないでしょうか。
▼そして、このロミオとジュリエットを役として演じる場合に参考になるのが、物語が描かれている中世ヨーロッパ世界の背景です。
▼まず、キリスト教。
ジュリエットは何故二度目の結婚を頑なに嫌がったのか。
これは、ジュリエットの気持ちもさることながら、ロミオとの結婚をロレンス神父の前で神に誓ったからという要因が想像できます。
そこには現在の日本人には計り知れない---神との約束を破ることの罪悪感---宗教的な束縛があったと考えられます。
▼これは秘密裏に二人が結婚式を挙げたということにも通じてくると思います。何故ならば、二人の家は仇敵同士。結婚など許されるはずもない。だから先に神の前で誓いを立てることで何人も邪魔立てできない事実を作ってしまおうと考えたわけです。当時の人々にとって神への誓いは絶対だったと想像できます。
▼次に物語が書かれた当時、ヨーロッパの広い範囲で「ペスト」という病気が流行していたそうです。これは、物語の中にも反映されているようです。
▼どうしてもジュリエットが二度目の結婚を拒もうとロレンス神父に相談した結果、仮死状態となり、皆を騙し、その後ロミオと駆け落ちしようという計画だったのです。
▼この事はもちろん、神父からロミオに報せの手紙が送られました。しかし、その使者は当時はやっていた「ペスト」にかかり、隔離されてしまい、ロミオに手紙を届ける事が出来なかったわけです。その真実の手紙を目にする前にジュリエットの死の報せがロミオに届いてしまい・・・悲劇につながっていってしまうわけです。
▼無論、現代戯曲でもそうだと思うのですが…その時代、その時代、国々で当たり前と思われることは注釈として書いていない事が多いです。
▼とっつきにくいとは思いますが、色々な背景を知ることで古典戯曲の世界がわかりやすくなると思いますし、戯曲に古いも新しいもない、とぼくは考えています。
