2005-10-25 19:09:53

仲間

テーマ:短編小説

 秒と持たぬ間に仲間達が次々と斬り殺されていく。あれだけいた仲間

も刻とその数を減らしていった。しかも、相手は一人だ。

 三日の如く鋭い刃物を構えその男が不敵な笑みを浮かべる。手が伸び

てくる。り降ろされた刃の向こうに仲間の死骸が増え続けた。自分はた

だ椅子に座、そんな仲間たちを眺めることしかできない。目の前の鏡。

鏡越しに、男様子を伺う。男は刃物を選んでいるようだ。どれだけの時

が過ぎたのか。に仲間が減っていく。それを、まるでゴミを捨てるかの

ように処理する、しい女。今までありがとよ。最後に仲間へ呟いた。

「こんな感じでいいしょうか? さっぱりしましたねぇ」

 久し振りの散髪だ。っきりした気分で美容室を後にした。

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2005-05-21 20:30:21

リストラ

テーマ:短編小説

 一年と三ヶ月。長い付き合いであった。今日、ついに捨てられた。上に

立つ人間には、情けというものが無いのか。これまでずっと無能な人間達

の下、称えられることもないまま、ただ、黙々と付き従ってきた。こいつ

らのことは、友だと思っていた。確かに仕事は辛かった。だが、どんな時

も文句、聞苦しい言い訳など言ったことは無い。傷ついても耐え、社員た

ちを助けて、手足となり共に働いてきた。それなのに捨てられた。

 

 何時間が経ったのか。クビになってからの時間が、とても長く感じる。

 人のいない公園で、ただ、雨に打たれるがままの時間が続いている。子

供がやってきた。俺の存在など無視するかのように遊び始める。

 解ってはいた。この世界は弱肉強食。俺のような立場の弱い奴は、まる

で読み捨てられる新聞並みの扱いだ。それでも、一年以上も生き延びる事

ができた。俺の友人などは一ヶ月で捨てられたものだ。いい環境の中で、

生きてきた。あわよくば、この先何十年もいれる、という期待も少しはあ

った。が、捨てられてしまった以上は、もはや何も言う事はできない。こ

れからの人生、俺はどう生きていけばいいのか。果ては生きられるのか。

 

 気がつけば、ゴミの中にいた。俺は、これからどうなるのか。このまま

誰にも気付かれず、この世から消えるのか。俺が死んだところで悲しむ人

間などいない。もう少し生きたい。思っても無駄なことだ。やがて夜も更

ける頃、“俺”こと『軍手』は、焼却炉の中で、灰となろうとしていた。

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2005-05-14 18:21:00

密使

テーマ:短編小説

 時間にして二十分程だろうか。電車の片隅。悠太は生きた心地がしなか

った。駅。階段を上る悠太は、人との接触に細心の注意を払った。大金を

持っている。落とすわけにはいかない。今の自分には払えない金額だ。改

札口を抜け一目散に走った。目的地。地図は頭に叩き込んだ。この大金で

ある物を買え、と言われた。何を買うかは知らない。紙を渡された。この

紙を渡せば文句は言われないらしい。紙は、悠太のポケットの中に隠して

ある。それを読むことは出来なかった。難解な記号で書かれているのだ。

 駅前の交差点から少し歩くと目的の場所が見えてきた。建物は古く、ど

こか祖母の家の匂いがした。その人物と目があう。髪は剃っており髭を蓄
えてる。事と次第によっては、生きて帰られないような雰囲気すら醸し出

している。息を吐いた。自分を落ち着かせようとした。だが足が震えは止
まない。気を抜いてはいけない。睨みつける。目。負ける。自分の中の何
かが折れていくのが解る。やがて、そいつが不敵な笑みを浮かべた。 


何の用だい。そいつに紙を渡した。ロクな物食っていないのだろう。そ
いつの足取りはまるで、ろう人の様であった。ブースのような場所から、
ロボットのような動きで白い袋を持ってきて悠太に渡した。グッバイ。変
な挨拶をされた。えたいも知れない人物だ。

よるも更けてきた。うちに戻ると、かあさんにいい匂いがするその白い
袋を渡した。なかなか初めてにしては上手くいったじゃない。とにかくあ
の店のお饅頭は美味しいのよ。

思った以上に、うまい食べ物だ。


 悠太は五歳にして、人生で初めての“お使い”を経験した。あの変なおじ
さんと、買ってきたお饅頭の味が、いつまでも悠太の中に残っていた。


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2005-05-12 17:40:23

派遣バイト

テーマ:短編小説

こんな仕事に、果たして未来はあるのだろうか

 そう思ってしまう日々がもう一ヶ月以上も続いている。政雄は、そう考

えてはいながら、それでも今の生活から抜け出せない自分が情けなかった。

 椅子のうえに置かれた紙。一人一人の力が、やがて巨大な物を生み出す

原動力に。文面ではそう書かれていても、要は奴隷扱いである。派遣の仕

事など何の勲章にもならない。毎日、決まった時間に工場に行き、毎日同

じ仕事をし、そばにはいつも同じ人がいる。友達も出来ない。新しい技術

も身につかない。かと言って、生活があるから辞めるわけにもいかない。

 明日も、工場に駆り出される。35歳にもなって、若者と共に働くのが

苦痛だった。出勤表を書く時間はさらに辛い。あの人働きすぎだよ。ちゃ

んとした仕事に就けばいいのに。出勤表を覗かれては、影でそう言われて

いるような気がする。辞めてやる。仕事が終わるたびに、思う。しかし、

新しいアルバイトを探している自分の姿が想像できない。システムとして

は、派遣ほど楽なものは無い、と考えているのだ。このシステムに甘え続

けた結果が、今の生活なのだ。

 翌朝、工場へ向かった。ニートの普及は広がり続けている。働いてるだ

け、まだマシだな。制服に着替え、風通しの悪い工場で、今日も作業が始

まる。何分かすると、一人の青年が政雄の傍に立っていた。

「あの、これどう組み立てるんですか? 小さくてやりにくいんです」

 政雄に仕事を聞きにくる若い連中は多い。説明してやると、嬉しそうに

お礼を言う。何が嬉しいんだ。政雄には、それが解らなかった。

 昼休み。煙草を吸って、弁当を食べる政雄に、恐る恐る話しかけてくる

若者がいた。先ほどの若者だ。話しかけにくいのだろう。緊張している。

「さっきは教えてくれてありがとうございました。嬉しかったです」

「何が嬉しいんだ?仕事なら俺より社員に聞いた方が早いだろ」

「いや、社員の人は怖いというか近づきたくないんです。ほとんどの人が

ロボットみたいで。向こうはそうは思ってないんでしょうけど。それに先

輩の方が優しく教えてくれるってみんな言っていますよ」

気が付けば、社員を除くと最年長になっていた。作業も、一番早い。そ

の後、そんな政雄を頼りにしている若者が多い事を、若者が教えてくれた

のであった。若者の間では『政さん』と呼ばれ、仕事に困った時は、かな

らず政さんに聞け、と言うのが合言葉になっているらしい。照れてにやけ

てしまったが、若者の目は真剣だった。思った。俺は、もう少し、頑張れる

と。誰かに必要とされたのは初めてだったのだ。



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2005-04-24 19:05:44

期待

テーマ:短編小説

一期一会。そんな言葉が相応しい出会いだった。元々、その合コンでは一

番乗り気が低かった女の子。何となく暇だったから付いて来たそうだ。年

下だったが、自分より、はるかにしっかりとしているように見えた。音楽

の話で盛り上がった。むしろ、二人だけの世界と言ってもよかった。今度

行こう、そのライブ。頼まれると断れない性格だ。まぁ断る理由など無い

のだが。そうやって暫く二人で話しながら、携帯番号を交換。俺の合コン

ライフも終わりだ。やっと彼女ができる。そんな予感で胸が躍る。その日

から毎日、メールの遣り取りをした。来週の日曜日。俺の地元の湖までど

らいぶに行こう、と聞くとあっさりOKが出た。寝付けない日々が続いた。

 

 

上京してからというもの、全く彼女が出来なかった。今日は、そんな日々

にピリオドを打つ日。ぐっと腹に力を入れて彼女との待合せ場所に。時間

よりも早く着いたがそんなに待ってられるほど路駐も出来そうに無い。頼

むから早く来てくれ。きやがった。警察が。パトカーの助手席で理由を述

べつつ彼女を発見。なんと、パトカーにいる俺を見て逃げ出した。

仕方無く一人寂しくドライブ。そうか。あの娘、隠れ天然だったんだ。

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2005-04-22 22:48:26

故郷

テーマ:短編小説

引退して、初めて故郷に戻った。今日まで野球のプロとして二十年も頑張

った。街は変わり果てていた。見覚えの無い建物、景色。タクシーから窓

越しに見る風景に、自分が覚えているものは何一つ無かった。適当に降り

しばらく街を眺めた。本当にここは、俺が育った場所なのか。

 

 

引っ切り無しに車が通る。両親はここのどこかに住んでるはず。場所はま

ったく、見当がつかなかった。変わり果てた土地をさまよい歩く。二十年

越しの再開。二十年前に絶縁されていた両親から手紙が届いたのは、引退

した直後だった。住所が書いてあり、たまに遊びに来いと書いてあった。

 

 

さらに歩く。現役選手の頃、人に物事を教えてもらうという事は大嫌いだ

った。頑張って、自分で探そうと決意した。しかし、小さい頃通った学校

さえ無くなっている。二十年という年月は、これ程の変化をもたらすか、

と嘆いた。これは夢か。本当に両親は生きているのか。もしやあの世への

引導ではないのか。農家を継がずに家を飛び出した、両親の復讐。こうな

ったらお巡りさんに聞くか。「この大井町の○×アパートって、もう通り

越してますか?」「何言ってる?ここは大手町だよ。電車乗ってよ」タク

シーの運転手に告げる行き先を間違えただけだった。

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2005-04-13 02:33:50

テーマ:短編小説

ひどい雨だった。それでも、彼女の手を引っ張りながら、懸命に走る。帰

ろうか。聞いたが首を横に振った。ありがとう、と言えなかった。口に出

して言えなかった。今日は、彼女の22回目の誕生日。貧乏な為、吉野家

で、いつもの並ではなくネギだくを奢る事しかできない。こんなデートで

すまない。俺に金があれば。何度も自分を責めた。降りしきる雨の中で。

 

 

 

本当は動物園に行く予定だった。しかし、着いてみると入口には閉園の二

文字が。呆然と立ち尽くした。前日に調べなかった自分を恨んだ。折しも

も暗雲が立ち込め、そして大雨。彼女は楽しめてるだろうか。表情からは

読めなかったが、どう考えても楽しい訳が無い。もっとお金があれば。そ

んな思いが何時にも増して強くなった。やがて雨が止んできた。停留所ま

で走ろうとの事だったが、その必要も無くなったのだ。

ほっと一息入れた。晴れてよかったね。彼女が言った。

しかし、大切なのはこれから。どうやって彼女を喜ばすか。自分は金も無

い。どう時間を過ごすか。夕食は何にするか。プレゼント買えなかったこ

とをいつ謝るか。その時、眼前にあるものが出現した。虹。高所にいたの

で、より一層綺麗だった。ふと、彼女の目に涙が流れた。その涙の意味を

すぐには理解できなかった。

 

 

ひと休みした後、バスに乗って地元に戻った。後悔してるのかな。何か後

ろめたいものがある。何度も謝ろうと思ったが、言えなかった。それを察

したのか、彼女がこっちを見て微笑んだ。そして言った。何も買ってない

でしょう。楽しんでるようにも見える。先程の涙を思い出した。胸の中が

すっきりした。そうか。金が全てじゃない。他にも大事なものがあったな。
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2005-04-11 19:38:43

テーマ:短編小説

おおきくなったら、雪奈はパパと結婚するの!

にやけてしまう。我が子ながら嬉しい事を言ってくれるものだな。やすら

ぎを与えてくれた。お風呂に入れてあげる度にそんな事を言う娘を、何よ

り父は愛した。携帯電話の壁紙も娘の写真。初めて覚えた言葉はパパ。か

わいらしい娘に育った。仕事中も娘のことばかり考えている。娘が目に入

っても、全然痛くない。雪奈が風邪をひいた時などは、会社を休んで看病

したものだ。嫁は子宝に恵まれなかった。諦めないよ。何度も言った。ち

ょうど十年目、待望の子供を授かった。それが雪奈。喜びもひときわ大き

いものだった。大事に、大事に育ててきた。

 

お父さん話があるの。ある日突然、雪奈が言い出した。雪奈とは歳が経つ

につれて、会話が少なくなった。仕方無いよ、年頃なんだよ。ビールを注

ぎながら、嫁はそんな事を言ったものだ。そんな雪奈が突然、嫁もびっく

りする事を言い出した。生まれた時から覚悟してたけどさ、その晩は嫁も

わびしい表情を見せた。子供を諦めていた時に神様から授かった世界でた

った一人の娘。生まれた時からずっと慈しんできた子供。やがて嫁と約束

した。寂しいのは解るけど、雪奈の為にも気持ちよく送り出してあげまし

ょう。月日が流れ、やがて、その日が来た。

いい夫婦生活を送るんだぞ。結婚式。雪奈の花嫁姿に思わず涙を流した。





↓わっしょいするフラッシュ(音が出るので勤務中の方は注意!)

http://www.xowox.com/shiraneeyo/flash/onigiri.swf

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2005-04-11 14:06:46

天使

テーマ:短編小説

俺さぁ、天使と会話ができるんだよね。

こんな事を二十歳にもなって真顔で言う奴がいた。

それは忘れもしない、三年前の四月一日だった。友人を集めて、突然、奴

が言い放った一言。「九分後に震度2の地震がくる」地震は本当にきた。

真実は天使のみが知ってるんだよ。誰もが呆然とした。それからも、数々

の予言を的中させた。奴が言う天使との会話によって。奴は二十歳。大学

三年生。そろそろ就職を考えなければいけない時期に、奴は天使と共に、

国を動かすようなでかい事をやってやる、そう宣言した。ギャンブルには

無関心だった。その予知能力さえあれば大金持ちになれるだろ。すると、

双子の妹がいたんだ。奴はそう言った。ギャンブルと何の関係があるんだ

よ、と聞いたが、それ以降は全く話そうとはしなかった。


やがて、大学卒業後は奴とは連絡を取らなくなった。その予知能力があれ

ば、きっと社会でも成功だろう。そんな大学卒業から三年経ったある日、

いつものように会社から帰りドラマを見ていると、臨時速報が入った。

バーモンド州で、一人の邦人が射殺。名前を見て驚愕した。奴だ。競馬の

レースに多額の金額を注ぎ込み、その帰宅途中での事件。ギャンブルをや

るなんて。奴も変わったんだな。そんな想いを抱きながら、奴の葬式に出

かけた。事件の詳細を聞いた。射殺されたのは四月一日だった。

もしや、と思い、双子の妹の事も調べた。ギャンブルにのめり込んだ男に

よって殺されたそうだ。七年前の四月一日に。

 

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2005-04-10 21:50:43

敵は・・・・・・。

テーマ:短編小説

とんでも無いものを手に入れた。笑い薬。インターネットで買った。朝起

きて、玄関を見たらそいつがいた。笑い薬。何故、こんな物買ったんだ俺

は。それでも、この薬が何かの転機になればと考えた。つまらない日常。

今日は笑えるかな。最近全く笑ってない。会社がつまらん。上司が憎い。


雨が降っている。そいつを見続けた。「飲んだだけで、あなたにも大爆笑

が襲い掛かる!」胡散臭いことこの上無い。が、仮に大爆笑できたなら。

下意上達。下が楽しければ、いずれ上も変わるのでは。そうだ。会社を楽

しくするのは下の役目なのかも。きっと、大爆笑なのだから、腹がよじれ

るくらい笑うだろう。苦しいくらい笑うだろう。そして、楽しい生活を。


五時間が経った。会社は休んだ。ついに飲む決心をした。こんなつまらん

月日を過ごすくらいなら、顎の一つや二つ外れてもいい。開けた。粉なの

か。飲んだ。サイダーの粉末の味がした。そう言えば、値段百円だしな。

なんだよ、やっぱりでたらめか。思わず笑ってしまった。あ、笑えた。

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