タイトル通り。ゾロアスター創作だがな!

悪神との遭遇

ある日のこと。
天使スラオシャはアフラ・マズダに報告をしようと主人の部屋の前まで来ていた。
「アフラ、入っても…」
彼はそう言いかけたが、背後に強い闇の気配を感じ、その身を翻す。
そこにいたのは、驚くべきことに敵の指導者である悪神アーリマンだった―。

「お前…、アーリマン…!何故敵の大将である貴様がここにいる!?…死にたいのか…!」
スラオシャはキッとアーリマンを睨みつけ、言った。
しかしアーリマンはそれを気にもせず、無表情に返す。
「アフラに相談事がある。お前にも関わりがあることだ」
「嘘をつけ!アフラに危害を加えるつもりだろう!」
「本当のことだ。アエーシュマの対戦相手を変えたい」
善側と悪側は毎夜戦闘を繰り広げていて、それぞれ一柱ずつ対戦相手がいる。
アエーシュマは「凶暴」という意味の名をもつ、スラオシャの対戦相手だ。
「!?それはつまり…、俺の対戦相手を変えるということか…!?」
「そのとおり。さあ、速くそこを退いてくれ」
スラオシャは身を乗り出してアーリマンに怒鳴った。
「…ふざけるな…!俺があいつを倒すんだ!他のヤツらになど、戦らせはせん!」
スラオシャは悪側を心底嫌っているが、特にアエーシュマを嫌っている。
そのため、自分の対戦相手を勝手に変えられることは、彼にとって許しがたいことだった。
「…いいから退け…」
アーリマンは呆れ気味にスラオシャに言う。
しかしスラオシャは絶対に退かない、というふうに部屋の扉をかばった。
「…俺は部下のため、お前に気圧されて帰るわけにはいかんのだ!」
アーリマンが怒鳴った瞬間、背後から別の男の声が聞こえてきた。
「そう?オレはあんたに帰ってほしいんだけど」

「アムルタート…!」
割って入ってきたのは、アムルタートだった。
アムシャ・スプンタの一柱でスラオシャよりも上位の天使である。
「敵の大ボスのところに簡単に入ろうとするなんて非常識だな」
アムルタートはアーリマンに近寄り、彼を睨みつけた。
「俺は悪神だ。非常識で何が悪い」
アーリマンもまた、アムルタートを睨みつけながら言った。
「…悪神なら対戦相手くらい勝手に変えればいいんじゃないか?」
アムルタートの言葉を受けて、悪神はキョトンとした。
「…ふむ。それもそうだな、気づかなかった」
スラオシャは唖然としてしまった。
(いったいなんなんだ、こいつ…!)
アムルタートも呆れた、というふうに肩をすくめている。
「…だが、あの対戦表というのは一応法則に従っている。俺が勝手に変えたらどうなることか…」
「…支配するべき民に何かあったら困る、ということか…」
場が一気に重くなった。アーリマンもアムルタートも真剣な表情をしている。
だがスラオシャだけは、不満そうな表情だった。
「勝手に変えようが相談して変えようが、理不尽には変わりない!!」
スラオシャが叫ぶと、悪神は一気に表情が険しくなり、彼以上に大声で叫んだ。
「…俺の部下が困っているんだ!!そこを退けっ!!!」
「……そろそろ飽きてきたぜ、この会話。これじゃ堂々巡りだ…」
アムルタートが静かに、しかしはっきりと聞こえるよう、言った。
吐き捨てるようなその言葉に、二柱は一斉に彼の方をみた。
「…アフラに、面会するか聞いてきてやろう…」
彼の意外な言葉に、アーリマンは少し驚いたが、すぐに気を取り直し、静かに返事をする。
「…頼む」
その会話に、興奮した様子のスラオシャが抗議の声を上げた。
「おい!どういうことだ、アムルタート!こいつを部屋の中に入れるのか!?悪神を!?」
「黙れ!!このままここで突っ立てても仕方ないだろう!!」
アムルタートの言ってることはもっともだった。
スラオシャは彼の一喝にひるみ、しばらく悔しそうな表情をしていたが、やがて渋々と扉の前から退いた。

アムルタートは数分も経たないうちに、部屋から戻ってきた。
どうやら外の会話は、部屋の中に丸聞こえだったらしい。
皆大声で話していたのだから、当然といえば当然だろう。
「入っていいとよ」
「それじゃ、遠慮なく入らせてもらう」
その様子を見てスラオシャは苦虫を噛み潰したような顔をした。
彼は拳を握りしめながら、アーリマンの後を追おうと足を踏み出す。
だがそれをアムルタートはすかさず阻止した。
「…俺も部屋の中に入れろ!」
「お前は入るな。中にはミスラもいる、オレらは外で待機だ」
「何故!?」
「アフラからのお達しだ」
「なんだとっ…!俺はアフラを守れるほどの戦士じゃないとでも…!?」
「…敵の侵入を防ぐのも、立派な仕事だろう」
スラオシャはガクッと床に座り込み、いたたまれなくなって床を叩く。
(敵の指導者を部屋に入れておきながら、何が侵入を防ぐだ…!)
しかし彼には、それを叫ぶ気力はなかった。

それから数十分経った。
アーリマンはまだ出てこない。
一分経つたびに、スラオシャはイライラを募らせていた。
(まだ…!まだ出てこないのか!!アフラは…、アフラは大丈夫なのか…!?)
目をつぶってそんなことを考えていると、突然、抱きつかれたような感触がした。
驚いて目を開けると、ヤザタの一柱、ヴァーユが抱きついている。
「な~にやってんのっ?」
「とりあえず離れろっ!」
スラオシャはヴァーユを押し退けると、彼はふてくされながら「ぶ~」と言った。
「相変わらず癪に障る声だな、ヴァーユ」
ヴァーユのハグを華麗に回避したアムルタートが、冷たい視線を彼に贈る。
「ひっどいなぁ、ふたりとも…。んで?なにしてんの?」
ヴァーユは落ち込んでいるふりこそしているが、実際特に気に留めてないようだった。
「……アフラの警護……」
スラオシャが不満気に呟く。
「?なにふてくされてんだよっ?」
「お前には関係ないだろう…!」
顔を覗きこむヴァーユに、彼はなお不機嫌そうに言った。
「いや、案外関係あるかもしれないぜ?」
「へっ?そうなの?」
「…どこが関係あるんだ…」
アムルタートはニヤッと笑って、ヴァーユに指を突きつける。
「お前…、対戦相手変わるかもしれんぞ?」
「えええぇ~!?」
ヴァーユはその言葉に驚いたようで、口に手を当てて叫んだ。
「変わるのは俺の対戦相手だけじゃないのかっ!?」
スラオシャも驚いた様子でアムルタートを見つめる。
「お前、日頃の行い考えてみろ。アストーに嫌われるようなことばっかしてんだろ」
「そ、それはアムだって同じだろ!なんで俺が変えられんの!?」
「お前のは度を超えてんだよ」
「…確かに。俺もそれには同意見だ」
アムルタートは呆れながら、スラオシャは妙に納得した表情で、ヴァーユを見た。
「なんだよそれー!俺、アストーともっと遊びたいのに!」
「心配は無用だ。それについてアフラに断られたからな」
ヴァーユに返事をしたのは、今さっき退室してきたアーリマンだった。
「アーリマン…!貴様、アフラに何もしなかっただろうな!」
アーリマンの声を聞いたと同時に、スラオシャは彼を掴みかかる勢いで問いただす。
「相談をしていただけだ。疑い深いやつだな…」
「スラオシャとヴァーユの対戦相手は変わらなかったのか」
アムルタートがアーリマンを横目で見ながら聞いた。
「ああ、アフラに断られた。あいつらには悪いがそういうことになるな」
「っていうか、なんでオレまで普通に入ってるわけ!?アーリマンはオレがどうとか言ってなかったんだろ!?」
「言ってはいないが、アストーからも苦情がきてたからな。変えてもらう予定だったんだが…」
「マジかよ…。うう…、オレってアストーに嫌われてたのかな…」
ヴァーユはうなだれ、落ち込んだ声で呟く。
アーリマンとアムルタートは、ヴァーユをかわいそうなものを見る目で見つめた。
「…ああ、多分…」
「あんな行動してりゃ、そりゃそうだろう」
「そんなぁ。うぇぇぇえん、アストー・°・(ノД`)・°・」

一方スラオシャはアーリマンが出てすぐに、アフラの部屋へと入っていた。
「アフラ!どうしてアーリマンを入れた!?何故俺を入れてくれなかった!!」
「そういやスラオシャ、今日の報告は?」
ミスラはスラオシャの怒声を無視して、質問を投げかける。
「そんなことはどうでもいい!!アフラ、どうなんだ!?」
「まぁ落ち着け、スラオシャ。私がアーリマンを入れたのは、奴と話すことがあったからだ」
アフラは落ち着いた声でスラオシャを諭した。
彼もそれを聞いて、少しばかり冷静さを取り戻したようだった。
「…なら、俺を入れなかったのは…?」
「お前のことを話していたんだぞ?奴がお前のことを悪くいうのを聞かせたくなかった」
「…アフラ…」
スラオシャはやっと納得がいったようで、小声で「すみませんでした…」と呟いた。
「さぁ、わかったなら今日の報告を聞かせてくれ」
「…ああ!そうでした。そうさせてもらいます」
そう言って、スラオシャは本来の目的である報告に取り掛かった。

「…まぁ、別にあいつ、誰の悪口も言ってなかったけどな…」
スラオシャの報告を聞きながら、ミスラはボソッと呟いたのだった。

                    終わり

はい!山なし落ちなし意味なし!
そしてすっごく読みづらいしまとまってない!ごめん!
無意味に長いくせに展開が早く感じられるこの不思議!
一応スラオシャ主人公なのに、他のが目立ってるしな!

ちなみにこの小説は、これのネタを広げたものらしいよ!

とりあえずここまで読んでくれた方、ありがとうございました~!

<追記>
昨日、補足書き忘れてたー!つっても大したことない補足だが。
てなわけで補足!
・アーリマンはアフラの創造物
・だから基本的にはアフラの言うことを聞いて行動する
・スラオシャはそれを知らなくてアーリマンだいっきらい
・アフラは(絡まれたくなくて)スラオシャに教えてない
・というか彼はアフラのことを真面目で完璧と思ってるので知っても信じない
・実際アフラはわりと不真面目だが↑みたいに思われてるのでスラオシャの前では真面目なふり
・ちなみにヴァーユとアムルタートはアーリマンのことを知ってるのでそんなに邪険にしない
・むしろヴァーユとアーリマンは結構仲良かったりする
・ミスラは空気読めないし、読む気もない
・アムの片割れのハルはこの時、医務室で怪我してきたアータルに治療&お説教してたもよう

あとはこれとかこれを読むといいんじゃないかな!(宣伝)
最後に、わかってるとは思うけど、うちのゾロアスター設定はほぼ妄想だぞ!真に受けないでねー!
てなわけで改めて、読んで下さりありがとうございました~!