食虫植物 若い女性に…なぜか人気 栽培指南書も今年“復活”
多くの植物が動物や昆虫の餌になっている中で、逆に虫をおびき寄せては餌食にしてしまう「食虫植物」。妖(あや)しい生態やユニークな姿が若い女性や中年男性を中心に数年前から人気となっており、春以降には3冊の栽培指南書も出版された。こんな食虫植物の栽培事情をのぞいた。
虫が葉の内側に入った途端、ハエトリソウの2枚の葉が貝のように素早く閉じた。この様子を見ていた子供たちが「わーっ」と歓声を上げる。東京都板橋区立熱帯環境植物館での食虫植物講座のひとこまだ。
喜多内亮君(9)の後ろで、熱心に栽培法をメモしていた父親の智さん(43)は、3年前にハエトリソウを買ったものの、2カ月で枯らした経験がある。「クモを餌にしていたんですが、乾燥しすぎて駄目だったんでしょうね。次は頑張ります」と、楽しそうだ。
植物館の担当者の小林逸子さんは「食虫植物講座は特に人気があります。やはり食虫植物の栽培法は情報が少ないですからね」。
この日の講師で会社員の坂本匡一さん(55)はラン栽培から食虫植物へ転向して12年。「僕の栽培経験を元に話したのですが、育ててみようと思ってくれればうれしい」と話す。
葉先に壷(つぼ)がぶら下がっていたり、全身を粘液で輝かせたりと多種多様な食虫植物だが、図鑑や写真集はあっても、栽培情報は少ない。12年前に唯一出版された指南書もすでに絶版になっていた。
それが、数年来の人気で栽培する人が増えたこともあって、今年4月に『大好き、食虫植物。』(星野映里著)が水曜社から発刊された。同社には「指南本がなく困っていた」と読者から反響が寄せられているという。さらに6、7月にも2冊が出版され、うち『食虫植物育て方ノート』を出した白夜書房も「企画段階は書店の反応は悪かったんですが、今は販売員さんも『私も育ててます』と好意的です」という。
『食虫植物育て方ノート』の著者、田辺直樹さん(45)は星野さんとは“食虫植物仲間”。「今年は食虫植物の当たり年かもしれませんね」と話す。
田辺さんは愛好家歴35年以上という食虫植物のベテラン。十数年前からは、輸入した食虫植物を実費で希望者に鉢分けして普及に努め、会員約800人の「日本食虫植物愛好会」を主宰する。本業は大原簿記学校講師でありプロの手品師でもある。自宅で食虫植物を200種以上を栽培するが、あくまで趣味で「何万鉢枯らしたか分からない」。そして「初心者は室内のテレビや机の上に置いて枯らしてしまったとか。ホビー、おもちゃ的になってしまうんでしょう」と指摘する。
食虫植物は温帯地域にも分布し、千葉県山武市や尾瀬ケ原など国内に自生地もある。自生地の湿地に近い環境にするため、栽培する鉢は日当りのいい場所に置き、数センチの水を張った皿に鉢を入れる「腰水」で育てるのが基本になるものが多い。虫がいなくても大丈夫だ。「植物なので光合成できちんと育ち、肥料をやると捕虫葉が退化するので与えない方がいい」
初心者に人気のハエトリソウは「葉を閉じるだけで相当のエネルギーを消費する。餌もないのに触って葉を繰り返し開閉させると、弱って枯れてしまう」ので要注意だ。
田辺さんは「最近は国内でも栽培業者が増えており、夏はホームセンターなどでも購入できる。温室がなくても越冬する品種もある。ちょっとしたコツが分かれば難しくない。恐れず挑戦してほしい」と話している。
(2008/8/14 産経新聞)











