心理トリック(Maag audio Eq4)

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今一番話題のプラグインEqと言えば、Maag audioのEq4だろう。





ユーザーのレビュー等も沢山上がっており、その反応は好感を持ったもの(中には大絶賛)が大半のように思う。

このプラグインEqの売りはほぼ一点に集約されている。
それはair bandなる超高域をブーストする機能で、なんと40kHzと言う殆どの人の可聴範囲外の周波数帯をマニピュレート出来るもの。


maagのEq4、もとはNTIから発売されていたEq3と言う実機が元祖で、勿論オリジナルの方にもair band機能は搭載されている。





比較的ニッチ且つディスコンのEqなので意外と知られていないが、知る人ぞ知るEq。

このNTI Eq3の開発者マーグ氏が設立した会社がそもそもMaag audioなんですね。


さて。
maag Eq4の各レビューを見ていますと、概ねヴォーカルやアコギに使用されていて、多くの人がair bandの40kHzを試されていました。

空気感が付与されて良いというレビューが多いようです。


実はこのmaag Eq4を購入する前、非常に疑わしく思っていました。
そうと言うのも、40kHz以上なんて果たして聞こえるのかという合理的な考えはさておき(既存の理論は意外と近視眼的で不完全な事が多い)私は実際にAD2077で色んな音源の25kHz以上をMaxで10dBブーストして試してみた事があったからです。

その結果は確かに波形は変化をするので実際ブーストされてはいるのですが、
聴覚上は全く判りません。
実際100回ABテストをしてみた結果、正解率は61%でした。

しかもカラクリと言うか、識別する際のサインは、聴覚上の変化というより敢えて言うなら、変な表現ですが視野が滲む方が25kHz以上をブーストした方という何とも頼りない結果だったのです。


そんなわけで、眉に唾を付けながらmaag Eq4を購入するに至ったわけですが、実験してみると確かに高域が聴覚上も上がります。
それは何となくと言う程度のものでは無く、ハッキリとしかも思いっきりブーストすると汚いジャリジャリした高域が出現します。
これは15~16kHz近辺特有の音なので、不思議に思い(しかしある確信を持ちながら)実際にair bandの40kHzブーストを計測してみました。

結果、実際は40kHz以上「から」ブーストされるわけではなく、なんと300Hzあたりから既にブーストされている事がわかりました。(誤差はあります)
更に、ブーストのつまみの数字はdBではなく(実際どこにもdBとは書いていない)はるかに大きい変化をしていることも判明しました。


話は変わりますが、Eqのブーストと言うのは(マスタリングでは異なりますが)殆どの人が思っているより、思いっきり数値を上げたほうが良い結果を得られる事が多いのです。

例えばある周波数帯域を中心に「10dBあげる」と言うと多くの良識あるミュージシャンは否定的と言うかビビってしまって試すことさえしません。

しかし、何も知らずair bandを操作していると、知らず知らずに数百Hz以上の周波数帯を想定以上にブーストしている(ブーストの単位をdBだと思い込んでいる場合)という事態を引き起こし、しかしそれらは良い結果を生んでいるのです。

このmaagのEq4は悪く言うとユーザーをミスリードしていると言えなくもありませんが、こういう心理トリックを用いて、音楽上好ましい結果に導いている稀有のソフトウェアだと私は思います。
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