矢沢永吉の10枚 「SUBWAY EXPRESS」 bridge 2002/9
-で、面白いのは、そこで一つの区切りとして『SUBWAY EXPRESS』の1が出るんですよ。「あ、また信号が来たんだなあ」と(笑)。
もういっぺん過去と向き合って次のステージに上がりなさいなという信号が、表現の神様から矢沢さんのところに来て、じゃあ作ってみようかなあってこれを作ったことによって、またいろいろ変わってくるんだと僕は思ったんですけど。
「いや、僕はこれに関しては信号でっていうんじゃなくて、来るべくしてって感じだったんですよ。必要だった時期を経て、ここに来たと。だからどのアルバムも矢沢の細胞なんですよ。
渋谷さんから見たら遠回りだったかもしんないよ?でもグルツと回ったってことは『SUBWAY EXPRESS 2』、あと来年出すニューアルバムに全部影響してると思うんですよ」
-そうですね。やっぱり僕はターニング・ポイントだと思うんですよ、このアルバムは。
「うん。まあ『TEN YEARS AGO』の時と一緒ですよね。今度はソロになってからの整理整頓をちょっとしたくなったんだよね、作り手として。まあ、これも言っちゃうと、リスナー無視だよね、ちょっと」
―ははははは。
「なぜかっつったら、作り手っていうのは、やっぱり本音では『ああ、これって今だったらこうするのにああするのに』っていうの、やっぱありますからね。
オリジナルのこのへんのヘタリ具合が嫌い!みたいなね(笑)。ヴォーカルのヘタリ具合、ギターの抜けの悪いのは嫌だ!だからこうしよう、とかさ。
でもリスナーからすれば『触んなよ!』っていうのも、それはそれであるだろうし。そこはわかってますよ。その証拠に『SUBWAY EXPRESS』出した直後なんて、もう賛否両論ですよ。
それこそ『もう触んなよ!』っていう声もあれば、『いやー、こういうふうにチャイナタウンが変わりましたか。サンキュー!』みたいなのまでねえ。2を作ってくれってリクエストもそっから盛り上がったし」
-でも『SUBWAY EXPRESS』の1と2の間の短さっていうのが面白いですよねえ。なんかまた高いギアに入っているというか、生き急ぐモードに入ったなあという感じが(笑)。
「そう? あはははは」
-で、このあとすぐ『LOTTA GOOD TIME』が出るんですけれど、これが今の矢沢さんモードのとっかかりだったっていう感触を、僕としては待っているんですけど。
「や、当たってると思います。整理整頓し終って、もう新たに次を感じ始めてんですよね」
-そうですね。ここからもう次の、つまり現在のモードですよね。
「そうですね。ええ」
-ただ2はファンからの『永ちゃん、作ってくれてサンキュー!』っていうリアクションが、絶対1より多いと思いますけどねえ。
「うん、だけどほんとこれで最後ですね。キャロルん時の『TEN YEARSAGO』と、あとは『SUBWAY EXPRESS』の1と2で、僕はもう過去の作品はオッケーです」
-ああ、ほんとにそういう気分なんだ。
「はい。これから先はもう、ニューアルバムだけでいくつもりです」
2011/7/20
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