諜報機関の存在に対する最大の問題は政治のコントロールが必ずしも効いていないところにある。それはほぼどこの国の諜報機関にも当てはまり、日本の公安もその例外ではない。

当たり前ではあるが、政治は行政をマイクロマネジメントできない。日々の行政の活動は役人が行っており、それはどの国であっても、どのような組織であっても変わらない。組織は基本的に政治的に長官が任命され、そこに本質的な権限が集中する。そこから権限が分化し、行政サービスがより下位の構造で提供される。それぞれの担当部署の責任者はそれぞれ権限を持っているものの、そこには制限が掛かっている。ある一定の権限以上の決定はその上司が担い、その権限が遡れば長官の権限にまで行き着く。

しかし、現実的には担当部署のトップが必ずしも与えられた権限の範囲内の決定をしているとは限らない。現実的にはその権限の逸脱が頻繁に起こり、その逸脱された決定は上司まで必ずしも伝達されない。つまり、サボタージュは幾らでもできる。

例えば、誰かに対する暗殺の決定があったとする。その暗殺は必ずしも組織のトップが決定するとは限らない。ただし、誰かが決定しないと暗殺は起こらない。偶発的な殺人であればその現場で発生する可能性はあるが、暗殺となると事前準備がかなり必要になるので、その場で単純に実行できない。その場で単純に実行できるような暗殺であれば、その殺人は表面化する可能性が高く、その実行者はその後に法で裁かれる可能性がある。

意思決定は常にどこかの階層で行われ、全てが情報として上に伝わるわけではなく、全てが下に伝えられるわけでもない。諜報機関においてその一部の階層が自己組織化しており、更に問題を複雑化させている。

自分は中国の諜報機関とCIAが共同オペレーションを見たが、それにはその2ヶ国だけでなく、多くの国の情報機関が絡んでいた。彼らが共同でオペレーションを行うと、政治がコントロールするのはほぼ不可能になる。それは中国の諜報機関をアメリカの政治がコントロールできないからであり、中国の政治家がCIAをコントロールできないからである。それは違う意味の自己組織化であり、諜報機関が完全に政治から独立し、犯罪行為を行っている。

自分の理解している限りでは、アメリカでもCIAに対する政治のコントロールが効いていない。2012年のオバマ再選の前にCIAがカウンターインテリジェンスを流し、スキャンダルを広めようとしていたが、それはCIAの組織防衛のための工作であり、政治がコントロールした結果でないのは明らかである。

政治がどれくらいCIAをコントロールできていないかは多くのアメリカの政治家が理解している。しかし、彼らはそれを表立って議論できない。情報機密保持の誓約書にサインすると、機密事項になる内容は話せなくなる。その結果として多くの人が問題を理解していても、それがどれだけの犯罪行為であっても、誰も表面化させられない。現状、大きな問題が表立って議論されていないが、それは何の問題もないという意味ではなく、問題が理解されていないという意味でもなく、ただ表に出ないだけである。

この諜報機関のコントロールが弱くなっているのは中国でも変わらない。中国の組織上は共産党総書記と共産党中央委員会に全ての権限が集まるようにできているが、やはり、途中で情報を遮断し、途中で権限を越える決定ができる。周永康を含む一連の事件はその現れである。

諜報機関が自己組織化し、その中で多くの殺人を伴うため、政治家が止められなくなっている。それはアメリカや中国でも起こっている。そして、その自己組織化は日本にも及んでいる。日本の場合、公安の問題が大きい。正確には公安の一部が自己組織化し、犯罪組織化していることが問題であるが、実際にはそれらの勢力はおそらく複数あり、かつ彼らは公安の一部であるにも関わらず、公安の裏工作をほぼ支配している。その結果として、誰にもコントロールされず、犯罪として捕まることもない殺人を伴う工作が多数実施されている。

これに加えてCIAの問題がある。CIAの独自活動は日本でもあり、その中に重大な工作も含まれている。彼らの工作の一部は公安と共同に行われており、その枠組みはほぼ制御できない。

この状況を更に悪化させるのがアセットの自己組織化である。CIAや公安本隊の工作は比較的に重大な問題が多いのに対して、アセットが自己組織化して犯罪を行うと、より普通の人に影響を及ぼすような犯罪が行われている。

 ただ個別の案件に関しても、実際のオペレーションの枠組みに関しても、あまりに複雑に絡みあっているために、誰が何をしているのかが分からない。ある工作はCIAのアセットように見えたり、ある犯罪はCIAや公安の暴走に見えたり、ある殺人は左翼過激派や北朝鮮の意思が動いているように見えたりする。

 ただ、いずれにせよ、これらの集団が絡んでいる場合は、警察はギブアンドテイクの結果として、あるいは自らの犯罪であるため、犯罪として問題を検挙しようとしない。そして大きな社会問題となることもない。

 これらの人たちは自らの意思を通すために、裏工作を行っている。彼らが自己組織化し、政府や政治に対抗し、影響を及ぼしている。その活動は昔からもあったが、今ではそれが更に隠密化され、ほぼ表に出ないような形で実施されるようになっている。

 ここ数年でその活動は浮かびつつあるが、にも関わらず、以前にも増して多くの殺人を含む裏工作が行われている。日本の政治家は日本の公的な組織がそこに含まれているにも拘わらず制御できず、アメリカの政治家もCIAの裏工作を制限できない。特に、アセットの暴走はほぼ野放しにされている。

これらを排除しない限り、日本の根本的な問題は解決しない。日本を取り戻したいのであれば、もっと強力にやる必要がある。