今日のびわ湖毎日マラソンに絡めて、良く言われる話だが、
「箱根駅伝を沸かせた大学生ランナーが、もっと積極的にフルマラソンに取り組んでみてはどうか」
という話について、ど素人なりの個人的な見解をひとつ。
○確かに有名どころがマラソンに挑戦したら期待と注目を集める。
○視聴率的には美味しいことは間違いない。
○新たなスター誕生を求める日本陸連にとっても美味しい。
○しかし、今の日本では「もし失敗したら色々言われるのが分かっている、リスキーなことしたくねえし、今の時期は箱根の疲れを抜いて、春のトラックに向けた準備期間だから、フル走る意味もねえよ」という声が、走る側からあがる、いやあがっているのではないか。
箱根駅伝を筆頭に、出雲・全日本を合わせたいわゆる「三大駅伝」は、どれもこれも高視聴率で、放送する側にとってはまさにドル箱、また大学側にとっても(言い方は悪いが)大学の名を売り込む「広告塔」としての価値が非常に高いのはご承知のとおり。当然大学側からは「とにかく箱根駅伝を最大目標に、力の全てを注ぎ込んで大学の広告塔やってろ」という期待がかけられているだろう。
本来は関東学連選抜駅伝という「ローカル駅伝」でしかない箱根駅伝が、毎年正月の特番のトップに君臨する現況では、これはやむを得ないと言わざるを得ない。地方の高校生ランナーの多くが関東学連所属の大学を希望するのも、ひとえに箱根駅伝の存在があると言っても言い過ぎじゃないだろう。
昔々、大相撲が年10日だった時代
「一年を 十日で過ごす いい男」
という川柳があったが、さしずめ今は
「一年を、箱根で過ごす いい男」ってな感じになっても仕方がないムードだ。
箱根駅伝を一年の大目標にして、そこに力の全てを注ぎ込む結果、「燃え尽き症候群」ではないが、箱根を走って2ヶ月でフルマラソンなんて、とてもじゃねえが準備期間がなさすぎて無理、という部分もあるのだろう。
適度な休養期間もおかなければ、慢性疲労、また故障の危険が増すことは当然。
この話題で思い出すのは、当時の大学長距離界のスーパースターだった現・早大監督の渡辺康幸選手(当時)が、このびわ湖毎日マラソンで初マラソンに挑むってんで、全国が注目しすぎちゃって、結局怪我で走れなかったときに、渡辺は記者会見で号泣した。
「すみませんでした」とか謝罪してなかったか。
なにも、そんなに過度の期待をするもんじゃねえなと思ったさ。
渡辺はその後エスビー食品に進んだが、怪我に泣かされ通しだった。マラソンにはトラウマ持ってたかもしれん。
てなわけで、学生ランナーのフルマラソン挑戦には「失敗は許されないとか、そんな雰囲気を作るもんじゃねえよ」と思う。初マラソンは、全国放送がないような中規模な大会を選んでリラックスして走るってのも、一つの手かもしれん。ちなみに、日本を代表するマラソン選手の瀬古利彦氏の初マラソンは、早大在学中に京都マラソンで2時間26分台、最後は死んだようにゴールした。今考えると、あまり注目させないようにという、名伯楽の故・中村清監督(当時)の狙いすました好プレーだったかも。
この問題は、見る我々の側が過度の期待をしないという空気が醸成されない限り、今後もなかなか「箱根を走って2ヶ月でフル」という流れは作られにくいだろう。 いくら正月の全国放送でスター扱いされたといっても、実業団と一緒に走れば中堅どころが関の山ってレベルがほとんどなのが箱根ランナーの実態だ。 フルを走るような体もできてないのが多いし、高校生の延長のようなオーバーストライドの選手も多い。
その事実に気づきさえすれば、「箱根のスターがフルマラソン挑戦」といっても、そんな期待するもんじゃねえ、と分かりそうなもんだし、マスコミの側も変に煽るなや。そして俺たちも、あんま箱根箱根と煽るのをやめようじゃないか。
中学・高校の若いランナーたちも、大きな目標を持って走るならば、箱根とは縁もゆかりもない進路を目指すって手がいくらでもある。
フルマラソンの日本最高記録は、まだ高岡寿成(カネボウ)だったかな。高岡は京都・洛南高校のときは3年時に都大路の4区で区間記録の快走が目立つくらいで、大学は龍谷大学。もちろん箱根とは縁もゆかりもない。186cmと長身の彼を、代々の指導者は彼を促成栽培ではなく、じっくりと長期的視野で鍛えていった結果として、大きな花を咲かせた。
コニカミノルタの松宮兄弟は、秋田の無名の高校から実業団入りした。
最初の頃は「変なフォームでロードに強いのが取り柄の双子選手」ってな名物選手レベルだった(失礼!)が、地道な鍛錬の結果、フォームも改善されて、今や日本を代表するスピードランナーにまで成長した。30kmの世界記録を持ってるのはどっちだったかな。
まだマラソンでは結果が出ていないが、いつかきっとやる、と期待している。
実は、今日のびわ湖毎日マラソンには、一般参加で、箱根で活躍した大学からも、若干名出場選手がいる。
箱根駅伝とは無縁の大学のランナーも出場している。
もちろん、高校から実業団入りして鍛えてきた選手だっている。
過度に期待することなく、しかし「あっ」と言わせる新星が出てくることを期待したい。