ザスタジオに来る異色のタイプの写真家の中には僕達スタジオマンに凄く気を使ってくれる人が居た。その写真家は主にアイドルを撮る山岸伸さん。初対面から僕達に凄く気を使い、時間があれば僕達に話しかけてくれる。顔は満面の笑顔で、ほんとうに人なつこい感じで、いつもの流行通信の何かお高く止まって、クールな撮影とはまるで違う雰囲気にスタジオが和む。スタジオのムードは大体、写真家次第で大きく変わる。山岸さんは僕達スタジオマンには人気があった。初めて山岸さんと会った外待ちでも、千葉NO.の白いソアラでやって来た。通常写真家は、外車に乗っている人、ベンツとかボルボとか後は、ヨーロッパの旧車をおしゃれに乗って来て、挨拶だけで、鍵をもらい、車を移動するが。山岸さんは「ごめん、長く待った?ありがとうね!」と言葉を自然にかけてくれた。も~、これだけで僕は気分が良くなって、山岸さんのファンになった。そんな、山岸さんも助手達にはとても厳しく、目つきも、声のトーンも変わるのは、僕には何か分かる気がした。彼の撮影は一言で言うと愛情たっぷりの爽やか体育系。モデルさんの事を的確にほめて、ほめて、心地いいリズムで写真を撮っていく。僕も彼のために、乗りが良いように、BGMを的確にDJしながら、撮影の補助をしていく。そして山岸さんは「さっきの曲良いね、また頼むよ!」と声をかけてくれる。スタジオのセッティングはアイドル写真家特有のあご下の影、くまが出ないように、レフ版やら、ライトを下から当てる基本は変わらないが、山岸さんは最後に必ず自分で微調整する姿が責任感を強く感じさせる。細かく見せないが、実はとても繊細な感覚の持ち主と、僕は見抜いた。撮影の合間に、山岸さんが僕達のところに来て、「最近、どんな写真家が来るの流通は?」僕は、あんまり変わっていませんが、大体同じ顔ぶれの人が来ますよと言って、最新号の流行通信を山岸さんにお見せした。山岸さんに今度は僕が質問した。「アイドル以外何撮るんですか?」すると、「政治家のポスターとか、役所の写真も撮るよ」と意外な答えが返って来た。そして、帰りには決まって、「も~目が見えないから、もう~ちょっと写真家やってやめるよ」と言って帰る。そんな山岸さんはあれから20年以上経って居るが、今でも現役写真家で第一線で活躍しているから、あの言葉は、ちょうど老眼が始まったのか、ただの冗談だったのかは定かではないが、山岸さんは、おもしろくて大好きな写真家の一人だ。





