2008-05-22 11:56:22

第157 回 -バリ島(その1)-

テーマ:僕、外食大好きです。 by pooh
「ウブドのマーケット」


「18年ぶりに訪れたクプクプバロン」



 1月にバリ島に行ってきた。前回行ったのは実に18年前。なぜかそれから今までバリは海外旅行の候補にあがらなかった。その理由は、ちょうど同じ時期に熱帯という括りでは共通するオーストラリアのポートダグラスやシンガポールにはまり始めたからだ。実は飛行時間に関してはポートダグラスへの起点となるケアンズまでとバリのデンパサールまでは大差がなく、時差1時間も同じ。シンガポールはこれより1時間ほど飛行時間が短く、時差は同じ。海やビーチを楽しむなら圧倒的に美しいポートダグラスが、優雅なホテルライフや美食巡りならシンガポールがいいと思っていた。
 実際、日本では当時、リゾート地としてのバリへの認識はそれほどでもなく、僕も行く前の情報源として今みたいな豪華なリゾート特集のムックではなく、地球の歩き方やロンリープラネットに頼っていた。今ではバリの高級リゾートの代名詞のアマンも、ウブドにできて1年もたってなく、インターネットもない時代であったことも相まって日本ではその存在はほとんど知られてなかった。
 18年前のバリはクラフトの社長夫婦と僕たち夫婦で行った。使ったのはHISのパッケージツアーで、ホテルはヌサ・ドゥアのバリソル。バリソルは今のメリア・バリだが、フロントに交渉しパッケージで付いていたスタンダードルームを追加料金でメゾネットのジュニアスイートにアップグレードしてもらった。当時、僕は海外旅行ではパッケージは一番安い部屋にして、この手でアップグレードを必ず交渉していた。成功率は100%。どのホテルも一泊数千円を投じるだけで部屋は劇的にアップした。ここ十数年、パッケージツアーは利用していないが今もこの手は使えるのだろうか。
 また、この時は一泊だけウブドのクプクプバロンに泊まった。パッケージの部屋はそのままにして、国内旅行みたいな身軽な荷物で行くのだが、当時はこの手もよく使った。例えば、安宿に泊まっていたパリではロアールのジャンバルデという星付きのオーベルジュに一泊し、同じくメルボルンでは郊外にあるツウフェースというオーベルジュに一泊するといった具合だ。パッケージの安宿代はエアーチケットにおまけみたいについてるものだから、一泊ぐらい無駄にしても惜しくはない。
 今回、18年ぶりにウブドに行ってその観光地化に驚いた。当時はウブドはまだひっそりとした山間の村だった。今もあるクプクプバロンは今流行りの隠れ家リゾートのはしりで、当然その存在は日本では知るよしもなく、オーストラリアで入手したカタログを頼りに予約した。
 海辺の景色のつまらなさに拍子抜けし、絵のように美しいウブドの渓谷やライステラスに感激し、街路灯がない真っ暗な夜道をろくにライトもつけないで突っ走るタクシードライバーの視力に驚嘆したのが当時のバリの感想だ。外食に関してはホテルの食事は思ったよりよかったが、さほどのレベルとは思えず、一方、町場で食べるローカルフードはとても美味しかった。











 で、今回のバリ行き。正月空けにどこかに行こうということになり、バリに白羽の矢があたった。なぜバリか?その理由は、ずばり滞在費が安いから。
 毎年行くオーストラリア行きで海外旅行での現地滞在費が年々上がっていくのはひしひしと感じていたが、今回、いくつかの国のそれを試算して愕然とした。高い!いままで、ホテルに関しては聖域みたいにお得だと思っていたシンガポールもすごく高くなっている。フォーシーズンズのスイートに日本のホテルのツイン並みの値段で泊まったのは今では夢のまた夢だ。外食費も全般的に高くなっている。
 日本では高くて手が出しにくかった高級ホテルやレストランは外国で安く楽しみましょう、といったいままでの構図は明らかに崩れている。ちなみに今回は最初から候補に上がっていないけど、ユーロ高のせいもありヨーロッパなんかはとんでもないことになっているらしい。
 なぜこんなことになったのか。日本の一人勝ちの時代が終わって、逆に他の国の景気がよくなったからだと思う。昔は世界一高いといわれていた日本の外食は、今や世界的にみてもお得な値段になっていると思って間違いない。実際、外人の観光客も増加しており、僕のホームグラウンドの六本木は外人だらけ、この間行ったディズニーランドでは中国語と韓国語が飛び交っていた。
 さて、バリ島。18年前のパッケージツアーはガルーダだった。当時は今とは逆でバリへは直行せず、まずジャカルタでいったん飛行機を降ろされた後デンパサールに向かって乗り直した。これは、インドネシアの玄関がバリ島と思われては困るとの政策的な理由によるものだと聞いたことがあるが、機体がおんぼろなことも相まってずいぶんと遠く感じた。
 今回はいつも使っているJALの悟空でエアーチケットを入手。ここで思い知るのは、気がついたらいつのまにか導入されていた燃油付加税というやつ。これがさきほどの現地の滞在費の高騰と相まって、お手軽海外旅行を遠いものにしている。何たって、5万円ほどの航空券に2万円以上の料金が加算されるのだからたまったものじゃない。車を買うときの諸費用のようなものだが、それより率は高い。久しぶりに海外旅行を検討している読者は例えば「バリ往復4万」と広告に書いてあっても、実際に支払う費用は6万円を越えることに注意しなくてはならない。ちなみに、マイレージで無料航空券を入手しても燃油付加税は別途払わなければならないのでちっとも無料じゃない。この間、夏のケアンズ行きの無料航空券を入手したが、4人で20万円近くの税を請求され愕然とした。
 エアーの次は宿。ネットで調べてみるとあるわあるわ、続々と出てくる。18年前に比べて各段に宿の数が増えている。大型ホテルも新ブランドが登場しているが、目立つのはさきほどのクプクプバロンのような小振りな隠れ家リゾートや、戸建ての部屋を中心としたヴイラタイプのリゾートの台頭。
 そして、値段が安い。もともと現地の物価が安いこともあるが、コレラ、テロ、インフルエンザのマイナスイメージ三重奏+ホテル間の過当競争の影響かどうか知らないが、今どきにしてはどこもとてもお得なお値段。一部屋1万円程度でもそれなりのホテルに泊まれるし、一流ブランドのアメリカ系ホテルも日本で泊まるより確実に安く泊まることができる。久々に昔の海外旅行にもどったような気分になってしまう。
 ところで、わが家は子供は7歳と12歳。ちなみに、海外ホテルのオンライン予約で人数を正直に大人2+子供2で入力して空室照会を行うと、ほとんど場合「空き室無し」の回答がでてくる。これは、そのホテルが満室というわけでなく、トリプルとかフォースといった部屋をそのホテルが用意していないだけにすぎない。そういった場合はとりあえず大人2名で広めの部屋を予約しておいて、現地でエキストラベッドを頼むとか添い寝させる。でも、子供の一人が小学6年生になり、前みたいにツインの部屋に4人泊まることが難しくなってきた。といって、ツイン2部屋は費用的にしんどいし、1+1は所詮2にしかならないのでつまらない。
 そんなわけで、わが家では、毎年行くポートダグラスでは寝室が複数ある貸しアパートや貸家を借りている。高級イコール広い場所という日本的な感覚では豪勢に思われるかも知れないが、実はホテルのツインより安い。2バスルーム、大理石のフルキッチンの100平米を優に越える2LDKのアパートがシェラトンミラージュのツインより安く借りることができる。
 さて、バリ島。いくら安くても2部屋分だとそれなりに費用は嵩む。そこで、目を付けたのは寝室が複数あるヴイラ。事情を知らないと、ヴイラといえば即座にアマンやフォーシーズンズ、それにリッツカールトンといった高級リゾートが思い浮かび、高いじゃないかということになるが、今回調べてみてわかったのは決してそうではないということ。お手ごろな値段で泊まれるところが結構ある。
 さきほどの高級リゾートはロビーやレストランといったパブリックスペースに力を入れて勢を尽くし、沢山の従業員をかかえている。ロケーションも海際の一等地で、広大な敷地を占有している。これらに要する総コストを客室の占有面積で割れば、普通のツインの何倍どころか何十倍の面積を要するヴィラの料金が高いのは当然で、CPを考えれば逆に割安でさえある。では、パブリックスペースは最小限にし、レストランも省き、立地も海際などの一等地でなく、ヴィラ部分に特化したらどうなるか。
 今回泊まった ヴィラにまさにその答えがある。 (pooh)
 (以下、次号)
2007-12-25 18:50:47

第156回 カルトなお店(2) -大阪編-

テーマ:僕、外食大好きです。 by pooh




      (第156回 カルトなお店(2) -大阪編-)






 所要で仙台に行った。仙台には仙台牛というブランド牛があり、個人的には好きな肉だ。この牛については今みたいに東京でポピュラーになる前から知っていた。と、いうのは赤坂に「燻」という非常にマニュアックで高級なダイニングバーがあり、そこのうりが店主が当時全国で48軒しかない指定提供店の難関を突破して提供する仙台牛だったからだ。値段もそれなりに高く店主の蘊蓄も大変なもので、仙台牛は非常にエクスクルーシブなブランド牛かと長らく思い込んでいた。そんなある日、近所のスーパーオオゼキで仙台牛と記されたパックが大量に置かれている光景に出くわした。おっ、お宝発見とさっそくパックを手にしたのだが、ラベルに記されていた文字はJA。つまり、全国農業協同組合連合会。これにはしらけた。ちなみに、松阪牛のパックには三重県松坂食肉公社と記されていて、こちらはいかにもという感じで雰囲気だ。





 JAは巨大組織で、たしかに生産者や販売店からみればへっへーとひれ伏す大変な存在だ。でも、都会の消費者からみれば何でも扱っている全国組織の単なる農協というブランドイメージしかない。何千円どころか何万円も払って買う高級ブランド牛が何十円の胡瓜と同じマークであるというのはどうにもふに落ちない。なお、仙台牛の商標権は地元の生産者組合でなくJAが押さえている。

 はなしはもどって、仙台で贅沢をしようと炭焼きがうりの老舗のステーキハウスに仙台牛のステーキを食べに行った。地方だから安く食べれるかと思ったら大間違いで、ステーキだけで1万円近くし結局一人で1万5千円ほど払うことになった。ステーキの肉質はいいのだが、焼きの技術やその他の料理を考えると、価格対内容比は東京よりはるかに低い。さて、そのお店。テーブルにはファミレスみたいな写真満載のメニュウがあらかじめ置かれており、メニュウにはこれまたファミレスみたいにいろんな料理が満載され、1200円の定食もある。そんな中に小人の国のガリバーみたいに高額なステーキが鎮座している。これまたしらける。




 ドイツのBMW。乗ったことがある人はわかるだろうが、各シリーズ間で質感や走り、デザインにおいて共通点があり、一番高い6シリーズの後に一番安い1シリーズに乗り直しても何の違和感もストレスも感じない。一方、トヨタではカローラとセルシオは明らかに別の車で共通点を見つけるのが困難だ。レクサスというブランドは、アメリカでの名声を逆輸入したと思われているが、何でもありのトヨタのブランドイメージでは高級車の分野においてベンツやBMWにもはや対抗できないと考えたのが真相かも知れない。




 仙台牛は地元の組合がJAに委ねたらしく、天下のJAなんだからその名前で売るのが間違いないと思っているかも知れない。ステーキハウスはステーキが1万円しても、原価率からすれば1200円の定食をいくつか売ったほうが実入りがいいので、ステーキの値段を特別なものだとは思ってないのかも知れない。

 でも、客からすればグラム1000円以上する牛肉や一枚1万円近くするステーキはやはり特別なはれのものだ。清水の舞台から飛び下りるつもりで金を投じるのが普通で、買うにしろ食べるにしろ特別な気分にしてほしい。生産者もステーキハウスもこの客の心理を理解していない。高いものを売るにはそれなりの演出も必要なことを忘れてはいけない。

                 -蔵文-

 今回取り上げる大阪の「蔵文」はそんな不満を感じているステーキ愛好家は絶対に行くべき店だ。ステーキは100グラム6300円からだから、ちょっと多めにカットしてもらって前菜やワインも頼めば1人2万円はいく。東京の高級ステーキではこれだけの内容のものはこの価格では到底無理だから、価格体内容比からいうととてもお得だが、絶対的な価格は高級だ。ちょっと贅沢したいようなはれの気分で行く店だ。

 いわば高級な店なのだが、ありがちな例えば玄関にポーターが控えているとか、ふわふわのソファーのウエィティングルームがあるといったような、豪華絢爛なバブリーな高級さはそこにはない。




 席数が少ない!カウンターのみ11席しかない。肉は勿論ここのご主人が焼くわけで、ここに来た客は等しくこのご主人の技術を享受できることになる。カウンターといって、当然のことながらここは目の前でちゃかちゃかやる鉄板焼きではない。肉はカウンターの中のキッチンで丁寧に焼かれる。

 僕が考える高級ステーキハウスの定石通りここでは焼き方は聞かれない。大体が、肉は個体によりコンデションが全部違うので、その肉に適し、それを一番美味しく食べれる焼き方があると考えるのが道理だ。そんなことは客にはわかる筈がなく、わかるのは毎日肉と接している料理人だけだ。だから、客に焼き方を聞くのはかえって不親切と考える。客もウエルダンというのは論外としても、何でもかんでも通ぶってワンパターンにベリ-レアーと叫ぶのも折角の美食の扉を自分で閉ざしているようなものだ。僕は一定以上の店の場合は焼き方を聞かれても「お任せで」と返すことにしている。ここで、かんばしい答えが返ってこないような店は見込みがない。



 さて、この店の最大の特徴は一見では入りにくいこと。と、いっても入り口が客を威圧するように立派なわけではない。入りにくいのは何よりもその立地にある。北新地というのは東京でいえば銀座のクラブ街のようなところらしいが、そんなクラブが入っている雑居ビルの3階にこの店はひっそりとある。何の変哲もない1枚のドア。看板を代えればそのままクラブの入り口として通用する。

 オープン以来、一見の飛び込み客は一人もいないというご主人の言葉も納得できるような佇まいだ。外観もそうだし、中を知れば知ったで、たった11席だと紹介がなければ入れないようなエクスクルーシブな店かと思ってしまう。かくいう僕はある本でこの店の存在を知ったのだが、子連れということもあり自分で電話して予約する勇気がなくアメックスに頼んで予約してもらった。



 だが、入ってみればとてもくつろげ、和気あいあいとした店だった。ご主人との会話も楽しい。息子さんと思われる助手も感じいい。味は文句なく天下一品。うちの家族はいままで食べたステーキで一番美味しかったと言っている。値段も高級とはいえ、昔クラフトの社長と行った「アラガワ」の3分の1ほどだ。言い忘れたが、ここのサラダはとても美味しい。お客が大きなペットボトルをもってきてドレッシングを分けてもらいにくるというのもわかる気がする。牛刺しやエスカルゴ、スープも美味しい。





 この店はいわゆる「○○産」というブランド牛を売り物にしていない。ご主人がその都度、手に入れられる最良のものを仕入れている。肉質をめぐってはよく肉屋と喧嘩をするというが、その気持ちはよくわかる。牛肉の価値はさしの入り具合で決まっているようだが、本当の味は火を入れて料理をして実際に食べてみないとわからない。さしが美しく入って、最初の一口はすごく美味しく、柔らかく感じても何口も食べるうちに脂が負担になって食べるのが苦痛になるような肉ははっきりいって失格だ。鉄分を感じるような赤身の美味さというのもあり、適度な歯ごたえが美味しさを引き出す肉もある。牛肉を芸術品のように崇めるのも結構だが、姿かたちにこだわるだけで、食べてなんぼのものということを忘れてもらっては困る。そういえば、以前この連載で紹介した今はなき浅草のステーキの名店「ノンノン牧場」のご主人もよく肉屋と喧嘩すると言ってたことを思い出した。

 とにかく、ここは一押しの店だ。ミシュラン式に言うとこの店のために大阪を訪れる価値のある店ということになる。実は僕は明日の高知への出張の帰りに羽田までの直行便をキャンセルして、電車に乗り換え大阪で途中下車してこの店に寄る。さきほど電話の向こうでご主人が「丁度、いい肉が入ってます。」と嬉しそうに言っていた。

 高いといってもクラブやそれどころかキャバクラで遊ぶよりはお金はかからない。クラブやキャバクラは星の数ほどあるが、現在、日本ではステーキハウス、それもまっとうなところは驚くほど少ない。そういった意味からもここに行く意味は十分ある。

(pooh-http://yoshi-pooh.la.coocan.jp/index.htm-)

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