「マッコリ」といえば、低アルコールで値段も手ごろな韓国の大衆酒だが、最近は日本で醸造された国産品が人気を集めている。

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 東京都新宿区大久保。ハングルのネオンが輝くコリアンタウンに、酒蔵があった。韓国家庭料理「生マッコリ家」。チヂミやチゲが並ぶテーブルの上で、マッコリ(1リットル1500円)の甕(かめ)がフツフツと泡だっている。口に含むとピリッと軽い炭酸の刺激。乳酸菌とコメのうまみがスッキリとのどを抜ける…初体験のおいしさだ。みずみずしく、従来のマッコリのベッタリ甘すぎるイメージはない。「泡がうまい!」と隣のサラリーマンが声をあげた。

 「ほとんどの輸入のマッコリは流通の都合上、加熱して発酵を止めているから、本来とは別の味になっちゃう。生だと酵母も乳酸菌も生きているから体にもいい」とは、この店を経営するソウル酒造の韓吉●(はん・きるす)社長(59)。30代で初来日。平成9年に再来日してIT関連企業を興したが、「日本でも生のマッコリを提供したい」と母国で覚えた酒造りを生かして、3年前に日本の酒造免許を取得した。

 酒場の奥の厨房(ちゅうぼう)を抜けると別世界だ。7本のタンクが並ぶ蔵に、フルーティーなコメのもろみ香が立ち込めている。「マッコリの醸造はシンプル。仕込みから10日で飲めるようになります。仕上げに加水し、日本人好みの味に調整します」と韓社長。アルコール度数は6%とビール並み。「日本にもにごり酒はあるけど、日本酒と同じ15度程度もあるから今時の若い人は飲めないよね。そこにマイルドなマッコリがはまった」と見る。

 一晩約40人の客のうち9割が日本人でうち6割が女性。他店への出荷も約100店にまで増え、一日500リットルの生産能力では対応できなくなってきたという。韓社長は現在、山梨県に大型工場を計画中だ。「一日10万リットルは生産したい。日本にはそのマーケットがある。世界が認める日本の素晴らしい酒造りの文化の中に、マッコリの足跡を残していきたいんです」

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 国税庁統計によると、5年までは100万キロリットルあった日本酒(清酒)の生産量も今や半減。マッコリは苦境の日本酒業界の新たな希望の星にもなっている。

 安永3(1774)年創業の造り酒屋、有賀醸造(福島県)のマッコリ「虎」は、自然発酵の繊細な日本酒の技術をベースに醸造。調味料や添加物を使わない純米マッコリは、うまみとコクのなかにさわやかなキレを両立した辛口。左党の日本人好みの味がたまらない。

 「低アルコール志向で日本酒離れが進むなか、ゴクゴク飲める『新しい日本酒』を追い求めていた。マッコリを手掛けたのは20年ほど前。今の味にたどりついた5年前から毎年1割ずつ需要が伸び、完全な主力商品に成長しました。あくまでも『日本酒』として丁寧に造っています」とは、10代目の蔵元・有賀義裕社長(56)。

 小さな蔵で年間出荷数は一升瓶換算5万5千本の希少品。品質が変化しやすいため温度管理の整った飲食店だけに卸しているが最近は東京などで引き合いが殺到し、一部で“幻の酒”化している。評判は遠く本国にもおよび、昨年は韓国KBSなど複数のテレビ局が有賀醸造まで取材にやってきたという。今年のえとは「寅」だけに、さらに注目が高まるのでは!?

 古来より、朝鮮半島渡来の文化を独自に開花させてきた日本の風土。平成の世に「和マッコリ」がどんな花を咲かせるのか?(重松明子)

●=にすいに朱

とんかつ定食
うっかりプログラマー
私は看護師、今日も休みなし
ブリリアントワールド
終わりなき旅
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