主に母乳を通じて乳児に感染する成人T細胞白血病(ATL)の原因ウイルス(HTLV-1)について、日本産科婦人科学会と日本産婦人科医会が、全妊婦に対し健診時に血液検査が行われるよう、産科医向けの診療指針の改定を進めていることが分かった。母子感染を予防するため、検査の実施が不可欠と判断した。今夏、学会員らの意見を聞き、来年4月の改定を目指す。

 ウイルスは母乳や精液を通して白血球に感染、ATLや脊髄(せきずい)症の原因になる。厚生労働省特別研究班(主任研究者=斎藤滋・富山大教授)が3月末に公表した報告書によると、母から子への感染が全体の6割以上を占め、全国の感染者は推計約108万人に上る。

 過去の感染者は九州・沖縄に集中していたが、最近は関東で増えるなど、全国に拡大しているという。

 感染者の母親が母乳を4カ月以上与えた場合の乳児への感染率は15~20%だった。一方、母乳を与える期間が3カ月までの場合、感染率が1.9%にとどまるとのデータもあり、感染が事前に分かれば、授乳方法によって子への感染率を大幅に下げられることが明らかになった。

 現在、検査の実施率は全国平均で87.8%で、中国地方では8割を切っている。現在の診療指針でこの検査の推奨度は3段階で最も低いCだが、日産婦などは研究班報告書を受け、推奨度をBの「実施が勧められる」に1段階引き上げる指針改定案を作成する方針。

 作成を担当する産婦人科診療ガイドライン作成委員長の水上尚典・北海道大教授は「妊婦健診で確実にこのウイルスの検査が行われれば、次世代が感染する危険性を大幅に減らせる」と話している。

 指針で推奨度B以上の梅毒やエイズウイルス(HIV)検査は大半が公費負担の対象になっているが、HTLV-1検査は一部の自治体を除き自己負担だ。

 研究班の試算では、HTLV-1について全国で年間110万人の妊婦の1次検査費用(1人850円と1900円の2種類)と精密検査を公費負担した場合、年10億~21億円程度が必要だ。厚労省母子保健課は「専門家の意見を聞いて公費負担を検討したい」と話している。【斎藤広子】

 【ことば】成人T細胞白血病(ATL)

 HTLV-1というウイルスの感染が原因で起きる血液のがん。ウイルスは長期間潜伏し、50歳を超えて発症する場合が多く、年間約1100人が死亡している。感染後の生涯発症率は5%。根本的な治療法はなく、骨髄移植などが行われる。浅野史郎・前宮城県知事が発症して関心を集めた。

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