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Sun, June 08, 2014

渡部雄吉写真集 「張り込み日記」:事件を追う刑事の姿を捉えた写真群がノワールと化す奇跡

テーマ:実用・その他

渡部雄吉写真集 「張り込み日記」 Stakeout Diary


昭和33年に発生した大西克己連続身代わり殺人事件を追う刑事に密着し、張り込み、追跡、会議から休日の姿までを撮りつくした一冊。

週刊誌の記事のための撮影だったようだが、信じがたいほど警察内部に入り込んでいるのは、写真家渡部の人柄と力量のなせるわざなのだろう。何しろ容疑者の取り調べまで写真として残っているのだ。

本書で素晴らしいのは、都市や捜査の実相を撮影した点もさることながら刑事の眼差しを鋭くとらえたところで、場面により変容するその目に思わず引きこまれてしまう。

ここに収められた写真をじっくりと見ておき、すぐさま松本清張初期水上勉の作品を読み出せば、いままでとは一変したイメージが浮かび上がるのは間違いない。

フィルム・ノワールの雰囲気や、昭和30年代のミステリ愛好家にはもちろんお勧めだし、東京五輪前の都市の風貌に興味があるひとにもよいはずだ。

昨年、限定900部で国内発売され即完売したものが、先日限定1000部で第二版として復刻。第二版もすぐになくなることが予想される。

購入は、渡部雄吉写真集 「張り込み日記」 Stakeout Diaryか、roshin booksから。

なお、初版と第二版では表紙が異なり、どう見ても前者のほうが格好いいのが悔しい。

★★★★★
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Sun, February 23, 2014

山本小鉄『いちばん強いのは誰だ』 (講談社プラスアルファ文庫)

テーマ:実用・その他

山本小鉄
いちばん強いのは誰だ

タイトルだけ見ると、あらゆる格闘技のなかで「いちばん強いのは誰だ」と考えてゆく本に思えそうだが、さすがに新日本プロレスの重鎮だけあってそれはなかった。

新日本プロレスは最強→その中で「いちばん」→格闘技界最強!

というスタンスである。

この書籍が上梓された2000年8月といえば、小鉄の愛弟子・橋本真也が引退を賭けて柔道王・小川直也と三回目の対戦。ゴールデンタイムの中継内で完敗した数カ月後であり、大ブームとなった総合格闘技でプロレスラーはほとんど通用せず、それまで「格闘技世界一」を標榜していた新日本は、実力を猜疑の眼差しで見られるという冬の時代であった。

いや、正確にいうとプロレスと格闘技は異なるジャンルに属するという認識が、ちまたに広く行き渡りはじめた時代といってよい。その認識は、深く掘り下げてゆくと以下のようになる。

プロレスはプロレスにおける独特の「強さ」があり、それは総合格闘技などで測るものとは違う

この考えはプロレスの実態をほぼ言い当てており、これが事実だからといってプロレスを貶めるものではまったくない。

しかしながら、先に述べたように自ら格闘技と同じ土俵に立ってしまった新日本プロレスは、対外試合で敗北を続ける現状を横目に、格闘技においてプロレスは最強であると強弁しなければならなかったのである。

ちなみにあらいざらいを暴露してしまい、プロレスを地に引きずり下ろしたといわれる新日本プロレス元レフェリーのミスター高橋『流血の魔術 最強の演技』は、翌年の出版である。

いうまでもなく、高橋本が出る前から、すでに格闘技=プロレスという意味でのプロレスの凋落ははじまっていたのである。

さて、そのような苦しい台所事情を覆い隠しながらいかにプロレスをアピールするか。これこそが本書に課せられた試練である。

はっきりいうと、プロレスをまったく知らない人間が本書を読み、プロレスすげー!とは残念ながらならないだろう。

ここに書かれているのは、全日本プロレスとは違い、新日本道場ではグレイシーや総合格闘技に匹敵することを行っているが、試合では観客を楽しませるためその類のものは封印しているといった程度の話だからである。

それが事実なら、PRIDEのリングでやってくれよと突っ込まれるのはいうまでもない。ちなみに総合格闘技のリングで活躍したプロレスラーは、いずれもレスリングのバックボーンがあり、総合格闘技に特化した練習を行っていた。プロレスが通用したというのとは、やや違うのである。

しかし、プロレスラーは本当はすごいんですという話を数多のエピソードを交えて語り尽くしていくあたり、プロレスマニアにはなかなか興味深い。

たとえば猪木が力道山の日本プロレスから独立して新日本プロレスを立ち上げたときグレート小鹿が脅迫にきたとか、ルスカは世界最強の格闘家だ(これはミスター高橋もいっていた)、モハメド・アリのセコンドは拳銃を隠し持って試合に臨んでいたなど、おもしろい話がちらほらと載っているのである。

この例を読んで、ほーと思えるようなプロレス好きな人間ならばそこそこ楽めるだろう。本書でプロレスを救うことはできなかったが、それなりに価値はある一冊といえる。

★★★☆☆
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Tue, January 01, 2013

『タトゥー・セラピー』:邪馬台国の住民並に刺青がはびこる今日この頃の風潮に一石を投じる作品

テーマ:実用・その他

ウダPAOマサアキ
タトゥー・セラピー』(東京キララ社)

おそらく邪馬台国の住民並に刺青がはびこる今日この頃、彫る方も彫られる方も、刺青について何かしらのスタンスをもたねばならないと思うのだが、街ゆかば腰パンの隙間から薔薇だの羽根が見え隠れし、ネットでごまんと彫師が見つかるこのご時世、ただカッコイイとか自分を変えたいとかでホイホイとそれを刻み込む前に、いったい刺青とはどのようなものなのかを知るのも有意義だと思う。

その意味で、自身が彫った刺青を取りあげ、そこにいかなる意味があるかを語り明かす本書は大いに参照に値するといってよい。

作者の発想は、日本の伝統だから刺青は大事! だとか、刺青が日陰の存在なのはおかしい! といったような肩肘はったものではなく、その人にとって刺青はいかなる意味があるのか、という一点に尽きる。刺青は目的なのではなく、生きることについて何ごとかを付与する或いは剥奪する手段なのである。

彼のことばでいうと「方法論としての刺青」。

つまり刺青ではなく生こそが問題なのであり、本書も数々の決まりごとや技法ついての説明が読みどころではあるのだが、やはり刺青を彫り彫られることへの思い、その意味にこそ核心はある。

たとえば以下のような箇所は、彫師自らがいうだけに傾聴に値する。

末期ガン患者にモルヒネ打っても、痛みこそ感じなくなるけど、本質的なことはなにも改善できないというのと一緒で、刺青を彫っただけではなにも変わらない。[…]全身彫ろうがワンポイント彫ろうが、何も変わりゃしないわけよ。それが変わったと思えるか思えないかは、本人の気持ちの問題。大切なのは、彫った絵を見て、その思いを継続させること。それがない限り、絶対に変われないよね。(119-120)


自分の人生をしっかり見てさえいれば、ここは入れてもいいけどここは入れてはいけない、そういう“粋”と“外道”の境目もわかってくるはずなんだ。それを見る目もないから、すぐ見えるとこに入れちゃうんだ。見る目があれば、見えないところに入れるんだよ。それはなにを見る目かと言ったら、“人生を見る目”だよね。ファッション性とかのカッコよさを見る目ではなくて、自分がどう生きていくのかを見る目。もちろん外道として生きる覚悟があるのなら、どこに彫ってもいいと思う。(216-217)


タトゥー愛好者の中には今の日本の社会環境に不満がある人も多いですが、私ははっきり言って、今のままでいいと思います。タトゥーを理由にプールや温泉で入場を断られて文句を言う奴がいますが、だったらタトゥーなんか最初から入れるなっていう話ですよ。

タトゥーって最近ファッション化しすぎてしまいましたが、単に美しいとかカッコいいだけの世界ではない。昔からアウトローたちが入れてきたように、下世話で毒のある世界。

そんな社会からはつまはじきにされる彫り物を、自分の生き方を貫く覚悟を彫っていたわけで。それは現代のタトゥーでも変わらないと思うんですよ。だから、ある種の後ろめたさが感じられなくなったら、タトゥーなんて入れる意味はなくなる。

プールに入れなかったり、公務員になれなかったりする可能性は、タトゥーを入れるときにすでに承知していたはず。それも覚悟でタトゥーを入れた自分を最後まで貫けって言いたいですね(彫り師・ウダPAOマサアキ氏インタビュー『後ろ指さされない刺青は刺青じゃない』"社会派"彫り師がタトゥーブームを斬る!)


作者がいうとおり、刺青とは被差別者へと自らを貶める行為であり、そのような自己を生涯呑み込むことなのだ。したがって刺青に必然性などまったくなく、いわば戯れといえる。

ただその戯れが、真っ当な人生を否定してでもそれでもなお、というほどに真摯なとき、かえってそこに粋が生まれる。

このようなことを書くと刺青擁護と思われてしまいそうだが、基本的に刺青はなくて一向にかまわない邪魔なものである。しかし、邪魔なもの過剰なものが完全に欠落した生というのも味気なく、そこまで真摯に戯れられるひとたちを羨ましく思うこともなくはない。

★★★★☆
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