取り合わなかった。無視しておく。
他にも色々と言ってくるが、鵜呑みには出来ない。帰還できなかったら、どうする。この真暗闇の中を進めってか?冗談じゃない!不安なんだよ!
槍の先に、光る石を結わえた。進む先の足元だけを照らした方が、まだマシだった。
武器を手放せない、緊張。

*「メダチタガリヤメ……。

何体かのマミーをやり過ごしたのち、槍が何かにぶつかった。感触。探る。段差……お、上り…階段…?
一先ず、上り切り、マントを少し裂いた。周囲に何も気配は無い。

指先に宿れ、火の玉。・・・メラ!
何とか明かりを燈したかった。しっぱい。
・・・ギラ!…駄目でした。
何だよ、もう!

*「ヨロイガ ジュモンヲ……? コリャ メズラシイ。 オレタチノ マネカ?
「いい加減うるさいなァ…」

言いかけて、振り向き様。放射された熱炎の閃光に、目が眩んだ。近いって、馬鹿!
刹那、瞬きの中で壁一面の行き止まりを確認した。左手が熱い!

*「ギラ!
……コウヤルンダゼ?

歯ぎしり。ちくしょう!マントの切れ端は灰と化しました!

「……僕には、無理…っスね」

鎮めました。まだこの怒り&情けなさ&自虐の気持ちは、この先に待っているであろう発散するべきシーンまで…我慢します!
演技派勇者・あに。

*「ジャア……。 イシ ヨコセヨ
「帰りにね…」

頭脳フル回転。

「ー」

地下二階の壁一面を拝むことができた。
壁に辿り着いても、多数の、へそ愛好者・信仰者の巡礼を、最下層への到達を阻む場所だった。
緑一色の壁が、情け容赦無く、あにの眼前に拡がっている。
階段も、壁際に位置せず、44×44マスの広大なフロアーから、ハズレを含む、行き帰りの階段も見つけるのが難しい。
某*太郎伝説の、/ホ/ウ/ラ/イ/の/た/ま/を入手するイベントよりは、易しいのだが、遭遇戦を一人で切り抜けねばならない困難があった。
何人のプレイヤーが、ここで汗をかき、涙し、挫折し、神官に怒られ、【ダーマ】辺りでレベル上げに戻ったことか…………。
さて、魔物・モンスターらと、未だ渡り合わない、あには幸運と言えたが、迷子であった。
壁づたいに進むが、進めど進めど、壁。
地下一階の壁(*出入口付近北側*)には、目印となる燭台が掲げてあったが、地下二階にはホント何も無い。どこからか、漏れる明かりなど、確かめようも無かった。
壁づたいに、一周してきたような気がした。



続く