廃市

もう4月も終わりに近づいているのに、寒さを感じる朝、季節の戻りを感じさせる。

詩集を青年の時に読んだことがあります。たくさんの詩を読んだわけではないので詩が好きだったということではなかったと思ってます。本も、その当時、福永武彦やらを読んでいたのできっと、心の空間に漂う微細な何かに触れようとしていたのだろうと。

福永武彦を当時親しかった友人に、ボクは彼の作品が好きだったと言った。彼は学生結婚をして、スーパーの夜間品出しパートの傍ら、バキュームカーの運転手を昼間して生活費を稼いでいた。彼は、ボクをちょっと馬鹿にしたような目で、そうか、福永武彦って俺のところの教授なんだ。暗い感じで講義しているぜ。とボクに言った。

廃市という作品の内容は、今ではもうすっかりどういうことが書かれていたのか忘れてしまいましたが、その空間が好きだった。

こういう風に、季節が前後するような時は、ピアノで単音の旋律を奏でるかのように記憶が音となって聞こえてきます。でも、その音が昔の音だったのか、今の音なのか、消えてしまった時間にいるようで。
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