建築エコノミスト 森山のブログ

マンガ建築考の森山高至が「たてものと生活と社会と文化」を考えています。
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「魁!!クロマティ高校」はいわゆる不良高校生たちを主人公にした漫画なのですが、
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このジャンルは元々、ちばてつや先生の「ハリスの旋風」、本宮ひろ志先生の「男一匹ガキ大将」などをオリジンとする番長とかヤンキーとかいわれる人たちの
日々の戦い、若さと夢を持て余す若者の日々のやるせない憤りや焦りとか、
若さゆえの一本木で過剰な情熱からくる失敗談などをネタとする学園物語を下敷きにしています。

そもそも「魁!!」という表現は、
実在する本当の学校名を書いてしまって幻の発禁本となってしまった
「私立極道高校(きわめみちこうこう)」を書いた
宮下あきらによる「魁!!男塾」によって発明されたタイトルチューンです。
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この宮下作品というのは、
本宮ひろ志からその男臭いせりふやバトル部分、
先輩後輩、番長やその支配下にある力や夢を持て余した男達の熱いパッションの部分、
そんな表現形式のみを抜き出し拡大誇張純化した、いうなれば
本宮リスペクトマニエリズム系といってもいいかもしれません。

そのような不良高校生学園バトルの集大成というか、やり過ぎて日本支配、闇の政府勢力との内戦という風なところまで話が発展していったのが、美味しんぼの原作者雁屋哲と池上遼一
による、不良高校生漫画の金字塔「男組」です。

一方、舞台背景と登場人物を不良に採りながら、もっと身近な話題で等身大の不良像を描いて80~90年代に大人気になったのが、きうちかずひろによる「ビーバップハイスクール」です。
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この、本宮、宮下作品を中心として、最右翼にある「男組」と最左翼に位置する「ビーバップハイスクール」、これら全体をひとつの不良ワールドとすると、
「魁!!クロマティ高校」はこの不良ワールドを上から俯瞰するかたちで出来上がっているわけです。


物語の発端はそんな超不良高校に間違って、というか勘違い(友人のヤンキーといっしょに願書を出してしまった)で、入学してしまった優等生神山高志(かみやまたかし 16歳)を狂言回しとして、そのモノローグから始まります。

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彼はこの荒廃したクロマティ高校を自分の力で建て直し、
この凶悪な不良たちに囲まれながらも勉強に邁進することを目指しています。

ちなみに、クロマティ高校は都立です。

クロマティ高校には敵対する危険なライバル不良高校が存在しますが、それらはバース学園高校、デストラーデ工業高校、マニエル高校であります。

このクロマティ高校と周辺のライバル高校がなぜ抗争しているのかもわからないのですが、
正直主人公の所属するクロマティ高校の連中とバース高校の連中、デストラーデ工業高校の連中も、
基本ヤンキーで池上遼一絵であるため、
主人公と脇役、正義と悪、
どっちがどっちか、といった区別が、
まったくつかないんですね。
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ひとりひとりは性格付けも顔のデザインも異なるにも関わらず、
全員同じヤンキーで不良と分かってしまう。

これはなぜなのか、

このいわれなくてもなんだか区別がついてしまう、
多少の違いがあっても同じ属性だと分かってしまうのはなんでなのか、
そんなことを考え続けた人たちがいます。

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その人の名はクロード・レヴィ・ストロース。
昨年100歳亡くなっていますが、「親族の基本構造」、「悲しき熱帯」、「今日のトーテミスム」、「野生の思考」、「神話論理」などの著書があります。

親族体系に言語的構造を見出しました。
これはどういうことかというと、現地調査によって知りえたアマゾンの未開の部族の親子関係に一定のルールを見つけ出して、そのことが偶然に成立しているのではなく、その親族を決めるルールがその地の部族の表現形式となっている。
といったようなことです。

たとえば、現在の日本でも親族の範囲というのは法律で定められているわけです。
6親等以内の血族、配偶者、3親等以内の姻族までとする。
結婚については3親等以内の結婚は認められていませんが、
法的には従兄弟間での結婚は可能です。

そういった、社会や組織だけでなく、分類とか属とかいったものを仕分ける鍵になる見えないルールのことを「構造」と呼んだのです。

つまり、前述の
ひとりひとりは性格付けも顔のデザインも異なるにも関わらず、
全員同じヤンキーで不良と分かってしまうその理由とは、

彼ら不良、ヤンキーにも「構造」というものがあるからなんですね。

ここでいう「構造」というのは「構造主義哲学structuralism」のことです。
「構造主義」というのは、レヴィ・ストロースを代表とする哲学的な思想のことです。
上記親族構造から見出した、ひとつの一貫した特性概念を他の領域にも拡張していきます。
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例えば、何千種類というさまざまな色や大きさ形をした魚状生物を、ひとつの「魚類」という種のそのバリエーションなんだ、
と認識するためには「魚類」と「魚類でないもの」を区別する、形態的特性というものがある。
また、様々なバリエーションを貫く「魚類」としての一定の規則性というものがある。
それを「魚類の構造」とする、といったような意味での「魚」という概念の骨子、
そのことを「構造」と呼んだのです。

だから、「魁!!クロマティ高校」の登場人物は皆、
「ヤンキーの構造」、「不良の構造」
というものをそなえているわけなんです。

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学ラン、襟開け、パンチパーマ、リーゼント、スキンヘッド、頭髪脱色、マユ剃り、ミケンにシワ、ガン付け、ダラダラ歩き、ニラミ返し、ペッタンコカバン、
そういったものが「不良の構造」ということになるようです。

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その証拠に、「魁!!クロマティ高校」第三話において、
真面目優等生である神山はなんとか上記の特性を身に着けようと努力します。

これなどは、レヴィ・ストロースがアマゾンの先住民の中に分け入って共に生活したというフィールドワークのようなものかもしれません。

レヴィ・ストロースは西洋人の野蛮と文明を区別する自文化中心主義を批判しました。
いかなる「未開文明」も「大人の文明」であり、一見非論理的に見える諸儀礼もそれ固有の論理を備えている。
我々は彼らの中に我々を発見することになるのだ。

と、そう述べています。

であるなら、一見非合理にみえる不良の行動や不良の儀礼、不良の装飾や不良の祭器などといったものも、
それ固有の論理を備えており、優等生であるとかエリートであるとかいった前提で「不良」を定義しようとする側の中に、既に「不良」が存在する。
また「不良」の中にこそ、その観測者を発見するといったことが、「高校デビュー」なのかもしれません。

つまり、「魁!!クロマティ高校」は、偏差値中心、エリート文化中心主義を批判する意味では、レヴィ・ストロース的であり、神山と共にフィールドワークをしていくことが読者の役目でもあるのです。

そういった意味で、キチンとした「不良の構造」が見えにくくなっていまった昨今、「魁!!クロマティ高校」は、アマゾンの未開部族の記録のように、稀有なサンプルとしての意味もあるのです。


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