2010年03月12日
小学校入学シーズン目前--通学路、危険がいっぱい 回避するには
テーマ:ブログ◇まず安全マップ 家族で話し合って--NPO所長・横矢真理さん
今春小学校に入学する子どもを抱える親御さんが、最も心配していることは子どもの安全、という数字がある。犯罪や事故に巻き込まれないだろうか、という不安である。どうしたら、そうした危険を避けることができるのか、ということを長年にわたって調査・研究してきた「子どもの危険回避研究所」という、そのものズバリの名前のNPO法人を運営する横矢真理所長に聞いた。
調査の対象は、新小学1年生になる子どものいる母親395人。園児とママの月刊フリーマガジン「あんふぁん」の読者に今年1月、インターネットで行った。小学校入学にあたって不安を感じる項目では、96・5%が「犯罪や事故に巻き込まれること」をあげ、続いて、「友だちとのかかわり方」(80・5%)、「勉強習慣のつけ方」(64・8%)、「子どもの態度や様子」(59・3%)という順だった。子どもの通学や通塾、遊び場所など行動範囲に危険な場所はあると思うか、という問いには、63・8%が「あると思う」と回答した。
横矢さんは子どもを取り巻く危険には、犯罪、いじめ・虐待、病気、環境問題、災害、事故の六つがあると指摘し、「こうした危険を知り、防止することが最終目標ですが、完ぺきな対策はないのです」と話す。特に登下校での危険について、イエス・ノーで答えるクイズを作ってもらった。答えは全部ノーである。それでも「大人が子どもにできることは二つある」と言う。それは、子どもの危険回避能力を向上させるためのサポートと子どもが危険に巻き込まれにくい環境をつくることだ。
その一つが、子どもと一緒に、自宅と学校周辺の地域安全マップをつくること。「犯罪が起きやすいのは、『入りやすくて見えにくい場所』。そういう場所を探して写真を撮り、手描きの地図に張っていく。そうすることで、子ども自身が危険な場所を見つける力を付けることになります」。ただ、危険を強調しすぎて子どもをおびえさせては逆効果になる。
「気をつけないと殺されちゃうよ、とプレッシャーをかけると、実際に被害にあったとき、自分に落ち度があったと子どもが思い、被害を隠してしまいがちです。おびえさせない程度に、人ごとではないということを気づかせる。結局は、親子のコミュニケーションが大切です」と話し、家族で話し合えることが実は危険回避につながるという。
防犯グッズについて横矢さんは「危機管理は幾重にもしておくことが必要で、最悪の場合も想定して選択すること。ただ、どんなグッズにもメリットとデメリットがある。子どもの環境や発達レベルを考慮して検討してほしい。防犯ブザーなら親子で一緒に鳴らしてみて、止め方も練習しておく必要がある」と話している。
◇ボランティア、登下校見守り活動--足立区立西新井第一小
通学児童の安全を守る取り組みに熱心なことで知られる東京都足立区の区立西新井第一小学校(牛山英一校長、628人)を訪ねた。西新井第一小は、午前8時と午後3時に通学路の約30カ所に地域安全ボランティアの人たちが立ち、児童に声をかけながら見守る「8・3(ハチサン)運動」を続けている。西新井第一小の矢萩恵一前校長が会長を務める「開かれた学校づくり協議会」は昨年11月、文部科学省の「学校安全ボランティア活動奨励賞」を、全国の他の39団体とともに受賞している。
3月4日午前7時半、西新井5丁目交差点の角に、蛍光グリーンのベストに野球帽姿のボランティア5人が集まった。西新井緑町会のメンバーで、いずれも70歳前後。緑町会会長でもある足立賢一さん(72)は児童一人一人に「おはよう!」と声をかける。通りかかった高齢の女性から「一銭にもならんのに、ごくろうさまです」と声をかけられ、苦笑いする一幕もあった。
地域安全ボランティアが誕生したのは、05年に、広島市と栃木県今市市(現・日光市)の小1女児が相次いで殺害される事件が起きたことがきっかけだった。こうしたボランティアは全国の学校でも活動している。西新井第一小は集団登下校を行っていないため、通学路の各交差点に1人から数人のボランティアが立って、児童の登下校を見守るシステムだ。
西新井第一小の校区は生活道路が入り組んでいる。周辺には駅、環状7号線道路、西新井大師、商店街、シティーホテルもある。牛山校長は「昔から3世代で住んでいる家族が多いので、地元の人が声をかけやすい地域。不審者情報は2~3カ月に1回はあり、その場合はボランティアや児童の家庭に緊急携帯メール通報を行って、集団下校に切り替えます」と言う。
いつも兄弟で登校するのに1人のときは、「お兄ちゃんは?」とボランティアが声をかける。「風邪ひいた」「熱は?」と会話が続く。逆にボランティアの高齢者がいつものところにいないと、心配してくれる児童もいる。牛山校長は「ボランティアと子どもたちには人間的なつながりが生まれています」と話している。
◆これなら安心?イエスorノー
(1)2、3人でいれば、痴漢にあうことはない。
(2)集団登校しているので、痴漢にはあわない。
(3)自転車に乗っていれば、痴漢にあわない。
(4)男子で10歳にもなれば、被害にあわない。
(5)夜帰るときでも、駅から家まで携帯電話で親と話しながら歩いているので、痴漢に襲われることはない。
(6)いつも車で送迎しているので、被害にあうことはない。(子どもの危険回避研究所の資料より)
◇ぜーんぶNO、その訳は…
(1)「一人で遊ぶな」「一人になるな」とだけ強調していると、子どもは一人じゃなければ平気と勘違いすることがある。2、3人でいても油断しないこと。実際に、複数でいて暴力をふるわれたような話も多い。ずるい大人にかかったら、途中でバラバラにされて一人だけターゲットになることも。
(2)集団登校では、責任感の強い女の子が真っ先に現場に来て、他の子どもを待つことが結構あり、その女の子が狙われるケースがある。
(3)自転車ごと倒されて襲われたケースも。
(4)10歳くらいの男の子は、性的にも反応するので、男色に狙われやすい。
(5)話やメールをしながら歩くと、周囲の気配を感じるのが遅れるため、ターゲットにされやすい。まわりの音が聞こえず、交通事故に遭うことも。
(6)「防犯に完ぺきはない」という例。ふだん送迎していて、ある日特別な用で迎えに行けなかった、というときに被害にあうことがある。できれば子どもと道を歩いて危険について話をしておくことが大切。
◆標語、心に刻んで
きょ きょり(距離)をとる
う うしろに気をつける
は はやめに帰る
イカ (知らない人について)イカない(行かない)
の (他人の車に)のらない(乗らない)
お おおごえ(大声)を出す
す すぐ逃げる
し (何かあったらすぐ)しらせる(知らせる)
警視庁が考案した、子どもに覚えてもらうための防犯標語に「イカのおすし」がある。横矢さんは改良して「きょうはイカのおすし」として子どもたちに覚えてもらうよう呼びかけている。
標語について横矢さんは「後ろ、というのは子どもは意外と注意しない。家に入るとき、後を付けてきた男にそのまま押し入られて、乱暴されるケースは子どもだけでなく、大人の女性でもある。帰宅時は必ず振り返ってみる、変だなと感じたら後ろを確認するということを習慣づけてほしい」と呼びかける。
◇◆防犯ブザーや携帯電話、上手に活用◇◆
子ども向け防犯グッズの代表は、防犯ブザーだ。別欄で取り上げた足立区立西新井第一小学校でも、使い方指導を行っている。第一小では5年生がブザーを鳴らして不審者から逃げた例がある。ブザーは相手を攻撃するものではなく、音で危険を知らせて、異常を察知した周りの大人に駆けつけてもらうのが目的。大きな音が出るものを選ぶ。
携帯電話は便利だ。すぐに親と連絡が取れるし、110番通報もできる。最近はどこにいるかがわかるGPS(全地球測位システム)機能も付いているものがあり、親の立場としては子どもの居場所がわかるため、安心もできる。だが、迷惑メールや有害な出会い系サイトを通じて犯罪に巻き込まれることもある。そこで各メーカーは、子ども向けに機能をしぼった新機種を打ち出している。
◇au新携帯、セコム防犯サービス
auが今月発売した「mamorino(マモリーノ)」は通話とメールだけに機能を抑え、本体に付いたストラップを引くと防犯ブザーが鳴り、同時にGPSの居場所情報とともにセコムに通報される仕組みだ。セコムは子どもと通話する一方、保護者とも連絡を取って要請があれば現場に急行する。セコムの防犯サービスがセットになった携帯はこれしかなく、携帯というより防犯ツールに近い。
ソフトバンクの「コドモバイル740N」は通話とソフトバンク機種同士のメール(SMS)にしぼり、GPS機能で子どもの居場所が確認できる。4月下旬以降に発売される。
ドコモには以前から販売している「キッズケータイF-05A」がある。初期設定で、防犯ブザー、通話、GPS機能だけが使えるようにできる。
■人物略歴
◇よこや・まり
日本大学芸術学部放送学科を卒業後、リクルートに入社。退社後、2児の母親としての立場を生かした商品研究を始める。99年にネットで「子どもの危険回避研究所」を主宰・運営、その後NPO法人に。子どもにかかわる「生活安全教育」の普及をライフワークとしている。







