東京夜話/いしいしんじ
2008-07-18 08:10:27 テーマ:日本のフィクション
2006年 新潮社(新潮文庫)
開高健に『ズバリ東京』という傑作街歩きルポがあり、その透徹な視点と人間への切なる愛情のこもった文体でメロメロにさせられたのだが、いしいしんじの描いた東京を舞台とする短編集にも同じような透徹で冷めている視点が確としてあるのだが、やはり深くてせつな人間への愛情をビンビンと感じ取ってしまうのだ。
いしいしんじは、児童文学の人というふうに勝手に解釈していたのだが、それは一つの表現スタイルであって、実にマルチな表現手法を手中に収めている。
本書はそうしたさまざまな手法のショーケースのようでもあり、純粋無垢っぽさをただよさせる『トリツカレ男』と、中島らも氏との対談『その辺の問題』(後日レビュー予定)によく現れている俗人百人を束にしても敵わないほどの俗っぽさの間ならどこにでも立てる柔軟さを見せてくれる。
そして、この引き出しの多さを、しかもデビュー作で見せつけたわけだから、やはり只者ではない。
本書には短編集独特の疾走感がある。
その走りっぷりの影には、実際にいしい本人が歩いて感じて脳内ダムにどんどん集めた清流濁流を併せてそれぞれ別な水路に再放流している手管を感じる。
ただ走っているだけならば誰にでもできるが、その疾走する背中に汗をかいていない。
客観性を上手く掬い取って物語にしているから、ただ全力疾走しているのではなく、読者が自分のペースで走ってもそのスピードに物語が並走してくれるようだ。
その手管の基本はどうやら読者想い。
読者が歩いている東京を、いしいも歩いて書きました。
そんな視線を真正面から感じると、ああ、いい小説集だなと思ってしまうのだ。
開高健に『ズバリ東京』という傑作街歩きルポがあり、その透徹な視点と人間への切なる愛情のこもった文体でメロメロにさせられたのだが、いしいしんじの描いた東京を舞台とする短編集にも同じような透徹で冷めている視点が確としてあるのだが、やはり深くてせつな人間への愛情をビンビンと感じ取ってしまうのだ。
いしいしんじは、児童文学の人というふうに勝手に解釈していたのだが、それは一つの表現スタイルであって、実にマルチな表現手法を手中に収めている。
本書はそうしたさまざまな手法のショーケースのようでもあり、純粋無垢っぽさをただよさせる『トリツカレ男』と、中島らも氏との対談『その辺の問題』(後日レビュー予定)によく現れている俗人百人を束にしても敵わないほどの俗っぽさの間ならどこにでも立てる柔軟さを見せてくれる。
そして、この引き出しの多さを、しかもデビュー作で見せつけたわけだから、やはり只者ではない。
本書には短編集独特の疾走感がある。
その走りっぷりの影には、実際にいしい本人が歩いて感じて脳内ダムにどんどん集めた清流濁流を併せてそれぞれ別な水路に再放流している手管を感じる。
ただ走っているだけならば誰にでもできるが、その疾走する背中に汗をかいていない。
客観性を上手く掬い取って物語にしているから、ただ全力疾走しているのではなく、読者が自分のペースで走ってもそのスピードに物語が並走してくれるようだ。
その手管の基本はどうやら読者想い。
読者が歩いている東京を、いしいも歩いて書きました。
そんな視線を真正面から感じると、ああ、いい小説集だなと思ってしまうのだ。





1 ■最近・・・
「プラネタリウムのふたご」を読んで好きになりました。
駆り立てることもなく、追い詰めることもなく、受けてに任せてストーリーが進んでいく感じがして・・・とても気持ちが穏やかになりました。
活字が読みたくて、でも、ちょっと心が疲れている時・・・無性にいしい先生の本に逢いたくなります。
東京夜話・・・ぜひ本棚に加えたいと思います。