アジアパー伝/鴨志田穣・西原理恵子

2008-05-04 09:07:12 テーマ:エッセイ集
2000年 講談社

鴨志田穣(西原理恵子の夫)が亡くなって早1年以上経つ。
今朝の朝刊の西原の連載に、その鴨志田(以下カモちゃん)の散骨にタイに行った際の様子が描かれている。

この夫婦の徹底しているところは、抵抗するなら軽く、というところだ。
たくさん抵抗して無駄な体力を使うより、多くは受け入れしかし残りは軽く抵抗しておく。その力加減が気持ちよくて、ついつい読み進めてしまう。

話は若干それるのだが、芸能界の隆盛期を過ぎた元スターや、徒食を職とする大スター二世に蔓延る麻薬渦が常に報道に載せられていて、繰り返し繰り返し繰り返すその体たらくを見ていると、カモちゃんの行き方の真裏なのかなと思ってしまう。

そこで本書につながるのは、報道系&放浪系カメラマンであるはずのカモちゃんが書いているエッセイと、そのエッセイに西原がつけている漫画の中にヒントがあるからだ。
常に付け焼刃でありながら、逃避的に遭遇した事象の中から、生きるに耐えるだけのエネルギーを引き出してくる力強さがあるからだ。

もちろん極度のアルコール依存症は終生のもので、アディクション(嗜癖)があって生きてきていたのは間違いはないのだろうが、それでも根本的に違う何かを感じてしまう。

それは、創れる・創り続けられる人か否かだ。

前述した被告人・受刑者たちは、基本的に他人の創造性の尻馬に乗ってきたケースが圧倒的に多い。例外的には天才ミュージシャンもいるけれど、やはり悶えながらでも創るしかないし、創れなければ別な世界を模索する勇気も必要なのだろうと思う。
そうでなければ、あがかず待つという姿勢もとることができたのかもしれない。

本書はカモちゃんがタイ、ベトナムをはじめとするアジア各国を放浪していた時期のことをまとめたエッセイ集ではあるのだが、その力の抜け加減の絶妙さで生き続けられたのだろうなと思わせる内容だ。

ダメダメな人が嫌いな方にはお勧めできない。
戦場カメラマンといわれる人たちに共感を持てない方にもお勧めはできない。
しかし、人間は生まれながらにして悪事を欲するという方にもお勧めできない。
人間に対して性善説と性悪説の両面を認めている人こそが、共感できる本だから。

死ぬまでしか生きられない、という事実を見つめるにはお誂え向きの一冊だ。

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