2008-06-10 10:34:36

2008年6月8日千代田区外神田の中央通りで起きた事件について

テーマ:ブログ

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わたしには、秋葉原の中央通りに、沢山の想い出があります。
中学生の頃、ゲーム屋さんの人と仲良くなったり、他のお客さんと語り合ったこと。

探していたCDを見つけて、買ってから我慢できず近くの喫茶店で開けて歌詞カードを見たこと。
高校生の頃、電車に乗って一人でアイドルのイベントに向かった朝、閉まったシャッターの前で同じイベントに並びに来ていた友達を見つけて嬉しかったこと。
CDデビューのプロモーションビデオを秋葉原で撮影したこと。

自分が作った曲が秋葉原の店先で流れているのを見てとても感激したこと。
決して広くはないイベント会場で、みんなで歌を歌ってジャンプして盛り上がったこと。
その瞬間わたしは「絶対、ここが世界中で今、一番楽しい場所だ!」と思いました。
他にもいっぱいいっぱい素敵な想い出があります。

わたしにとっては、並木道の葉の一枚一枚、道路の色さえいとおしい、想い出が染みついている街なんです。
訪れるだけで、心が楽しくなる場所です。


わたしは大人になって、歌手になり、声優になることができ、
最近は、海外のイベントにご招待していただくことも多くなりました。
ドイツで会ったアニメファンの男の子は「一生に一度でいいから日本の秋葉原に行ってみたい」と言っていました。
カナダで会ったロリータファッションの女の子は「私の夢は、秋葉原に行くことなんです」と、
たどたどしい日本語で、瞳をキラキラさせてわたしに言ってくれました。
わたしはそれをとても嬉しく、誇らしく思い、「うん、きっと来てね。今度は、秋葉原で会おうね!」と言いました。


そんな秋葉原で、痛ましい事件が起こされた。
こんなことなら、少し騒ぎがあったときに歩行者天国をやめてしまっていればよかったと、今言っても、もう取り戻せない。
亡くなった人は帰ってこないのです。傷ついた人の傷は癒えないのです。
今まで感じたことがない気持ちがこみ上げてきます。
もうあそこであんなふうに笑うなんて、できないのかと思います。
「みんなの憧れや楽しい気持ちを返せ!」


ほんとうに皮肉ですが、あの場所が、あの風景が、自分にとってこんなに重要な場所だったのだと、
まさにわたしのラジオ番組のリスナーのみんなも言うように「聖地」だったのだと、思い知らされました。
秋葉原は、わたしにとっても心のよりどころなんです。
そこが、悲しい場所になってしまった。


この気持ちを、わたしはどう整理していいのかわからず、考えれば考えるほど、自分の無力さを痛感しました。
でも、秋葉原を愛している者として、そこで人生を奪われてしまった方に対して何もしないなんてできないと思うようになりました。
出すぎた行為かもしれないけど、その場で手を合わせ、亡くなった方々に心から哀悼の意を表し、ご冥福を祈らせていただきたいと思い、
9日の朝、お花をお供えに行きました。


秋葉原の駅に着くと、雨が降りそうな天気でした。
電気街口を出ると、テレビ局のマークがついた車が何台も車道に列になっているのが見えました。
事件が起こされたという交差点の近くまで行くと、その風景はいつもと違いました。
交差点の近くには、沢山の似た雰囲気の人がいました。
腕章や、持っている道具などから、報道関係の人のようです。
その人垣の間から、商店街の方が用意したであろうテントの下に、献花台が作ってあるのが見えました。
それを見つけると、現実が重く圧し掛かってきました。
ここはいつもの中央通りではなく、事件の現場になってしまったんだということを肌で感じました。


わたしは献花台の近くまで行くと「すみません」と声をかけて道を開けてもらおうとしました。
そうすると、次々に声を掛けてくる人に取り囲まれました。
「被害者の方の関係者ですか」「亡くなった方のお知り合いですか」……。
同じことを何度も聞かれましたが、わたしはなるべくご迷惑にならないように、早くお花をお供えすることしか考えていなかったので、
何も言わず献花台の前でお花の包装を解きました。すると、一斉にすごい数のフラッシュが光りました。
わたしは「写真を撮らないでください」とお願いしました。
しかし、わたしがお花を置くと、また光ります。もういちど「写真を撮るのをやめてください」と言いました。
その後も拝むたびにフラッシュが光るので、何度も「写真を撮らないでください」と言いました。
最後のほうはけっこう大きな声になってしまっていたと思います。
わたしは心をこめて拝ませていただきたかったのです。
でも、チカチカと光をたいてじゃまする人がいます。
手を合わせながら、何度も何度も「やめてください」と言ううちに、涙が出てきました。
わたしは、言うのをやめました。
「こんなに悲しいことがあって、わたしがせめて拝ませていただきたくても、させてもらえないのか。
わたしは本当になにもできない。どうしたらいいのだろうか。」と思いました。
短く拝み、去ろうとしましたが、やっぱり心残りがあり、もう一度振り返り、心から深く礼をして手を合わさせていただきました。
その時も、カメラを光らせる人がいましたが、もう仕方ないと思いました。
言葉では表現できない、今まで感じたことのない、すごく悲しい気持ちになりました。
とてもとても悲しかったです。
その後も、追いかけてきたり、名乗りもせず「遺族の方ですか」などと何人にも声を掛けられました。
「違います」と言うと去っていきます。ものすごくものすごく嫌な気持ちでした。


事件が起こる前、この場所でお会いして、わたしのことを取材してくださった新聞や雑誌の記者の方は、
優しくて、使命感があって、いい方ばかりでした。
わたしの秋葉原への想いを熱心に記事にしてくださって、おかげで多くの人に読んでいただけて、
後世まで残るんだと、心から感謝しました。
記事の中で、大好きな秋葉原で写真におさまるわたしは、自分で見ても最高の笑顔をしていると思いました。
でも今日は、同じ場所でカメラを向けられたはずなのに、その時とは全く違いました。
わたしの想い出がどんどん裏返しになっていきます。
すごくすごく悲しくなりました。


かつて、アキバの歩行者天国は、楽しい場所だったはずです。
自分の歌を聴いてもらいたくて、朝早くから機材を持って歌いにくる、歌手を夢見る女の子がいました。
手品をする人、ダンスする人もいました。コスプレしている人もいるようになりました。
でも、そのような人はすぐに注意され、逮捕されて警察に行ったという人もいます。
なのに、今ここにいる、大きなカメラやマイクを持って心が傷ついた人を待ち構えていたり、
人が亡くなられてお花がお供えしてある場所のすぐ横で携帯電話で打ち合わせのような事務的な話を大声でしている人達は、
道路を占領しても、車道に車を停めていても、何も言われないのです。
近くには警察官も何人かいましたが、注意したり、献花台の前をあけるように促すことはないようでした。
法律以前にあるはずの、人としての思いやりが、すごくほしいと思いました。


わたしは少し離れて、その場を呆然と見ていました。
だんだんと雨が降り出し、道はさらに人であふれ、通勤途中であろう歩行者の人は、傘がぶつかり、とても迷惑そうでした。
お店は開店してはいますが、このような雰囲気ではお客さんは入らないでしょう。
わたしは、孤独に思えて、泣いていました。
秋葉原で、うれし涙以外を流したのは初めてでした。


一緒に秋葉原で楽しい時間を過ごした、ファンのみんなの顔が浮かんできて、すごく恋しく思いました。
彼ら、彼女たちはわたしのライブに来てくれて、いつも素敵な笑顔を見せてわたしを励ましてくれます。
多くのテレビ番組では、アキバ系のオタクは気持ち悪く、笑い者にする対象として扱われます。
わたしにも「バラエティー番組でオタ芸大会をするので桃井さんとファンに出演してほしい」というような依頼がしばしばあり、お断りすることがあります。
もしそのような番組に出ていたとしたら、どんなふうに取り上げられるのでしょう。
少し奇抜な格好をしている時もあるし、面白い踊りを踊るけど、ルールを守り、

席を譲り合ったり、ごみを拾って帰ってくれたり、紳士淑女であるわたしのファンの人たち。
ここで献花台の前を塞いでいる人たちと、どっちがまっとうなんでしょうか。


わたしはUDXの軒下で携帯電話を開き、
同業者で今の秋葉原に関してわたしと同じように感じている人がいないか、ブログなどを検索しましたが、
探し方が悪いのか、見つかりませんでした。
自分のブログを更新しようとも思いましたが、気持ちがぐちゃぐちゃで、
とにかく淋しくて、知っている人に会いたくて、
お馴染みにしてもらっているお店に行きました。
お店の人と少し会話をし、サインをさせてもらいました。
そこに、「秋葉原大好き!」と書き添えました。
お礼を言いあって秋葉原をあとにしました。


その後、ラジオの収録に行きました。
番組では、このことには触れませんでした。
わたしはとにかく「心が傷ついている人を癒し、励ます存在になりたい」と思い、明るくラジオをやりました。


仕事帰り、前から会う約束をしていた秋葉原が好きなヲタでもある友人たちに会い、秋葉原での出来事を話しました。
その時のわたしは体の調子もよくなかったし、しおれていましたが、行き場のない気持ちをわかってほしくて、一生懸命話しました。
友人は、涙しながらわたしの話を聞いてくれました。
そこで「このことをブログに書いてほしい。きっとモモーイと同じ気持ちの人はいるよ」
と言われたので、この文章を書くことにしました。


今は悲しくてしょうがないけど、でも、なんとかしていきたいと思いました。
わたしも一人の、ちっぽけな、完璧なんて全く程遠い人間だけど、人に優しくなりたいです。
言葉が上手くなくてもどかしいけれど、せいいっぱい心をこめて伝えたいです。

わたしと同じように傷ついている秋葉原を愛する人、秋葉原に憧れている人、
落ち込んでいる人、どうか、元気を出してくださいね。
秋葉原のお店の方々、どうか、がんばってください。
わたしは腐らず、明日からも、自分のやりたいことをがんばります。


お怪我された方のご快復を心よりお祈り申し上げます。
ご家族、ご友人の方の心の傷が少しでも癒えることを願っています。


最後まで読んでくださって、ありがとうございました。


2008年6月9日 夜 桃井はるこ

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