2017-07-18 00:01:00

Fable Enables 26

テーマ:Fable Enables

 予告の日。
 放課後の校門から吐き出される生徒に混じり、俺は薬師寺ナオキと歩みを共にしていた。英和辞書と古典辞書を入れた鞄が重い。学校では電子辞書を許していない。小学校でシャーペンが使えなかったことを思い出す。
 周囲からは暢気な嬌声が上がる。
「ナオキ」
「ん」
「胸襟を割って話したいんだが」
「腹筋なら割れているぞ」
「――」
「そう睨むな。ますます目つきが悪くなる」
「例の件」
「ああ。珍しく謙虚になっていると思ったら、そのことか」
「どうしてカケル先輩が狙われるんだろう」
「案外、彼女にフラれた男がつけ狙ってるんじゃないか」
「七芒星を携えて、か?」
「不満かね」
 人を誑かすような微笑みを押しつけられ、俺は引かざるを得なかった。
「もうひとつ」
「当ててやろうか」
「……おう」
「本当に予告は遂行されるのか」
「違う」
「違うか」
「なんで二か所なんだ?」
 次のターゲットは墓地と農園。しかもふたつは十キロメートル以上距離がある。よほどの目的がないかぎりこんな無茶な計画は立てないはずなのだが、その目的が見えてこない。大体、学習塾を燃やそうとした意図だってわからない。
「自分にハードルを課しているんじゃないか」
「俺は胸襟を割って話をしたいと言ったんだ」
「だんだん不安になってきたのか」
「――」
「マコトの言、一理あるんじゃないかな。捕まえてみれば正体がわかる、ってのは」
 ナオキはあくまで飄々として言った。
 それはそうだ。今度は警察が動く。恐らく多くの野次馬も町を賑わすことになる。俺たちにできることはない。こっそりと手を拱いているのが最善なのである。
 待てばよいのだ。


 待てばよい。
 それは今回に限りこちらの見込み違いだった。
 衆人環視の中、墓地の敷地にある小屋、農園の敷地にある小屋から火の手が上がった。
 のちのニュースが語っていた。
 墓地での火災が起こったのは午後六時十分。
 農園での火災が起こったのは午後六時十五分。
 どちらにも銅板をエッチングして描かれた七芒星が残されていた。 

 

 


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