なんかえらい問題が起こっていたらしい。

      ↓

毎日WaiWai新聞問題


朝日新聞2ちゃんねる書き込み問題

勤務時間に差別発言の書き込み乱発はやめてくださいな。
       ↑

。いしらたいてっこ起が題問いらえかんな




ZEPHYR のページ


現代詩フォーラム のページ


HP:Rainy Garden


Odd Mathematics 開設。役に立たない数学問題を上げていきたいです。




こんな曲書いてます。


饗宴(ピアノ)

琵琶と天女(インスト)

子守唄(弾き語り)

永久機関(バンド風) New

collage of siren(カオス)

id(自演)

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2012-05-16 00:01:00

円と内接四角形の問題

テーマ:数感攪

【図の円に内接する四角形ABCDにおいて、直線DAと直線CBとの交点をP、直線BAと直線CDとの交点をQとする。

(1)AB/CD=(QA・BP)/(PC・DQ)であることを示せ。

(2)PA・QD=PB・QAであることを示せ。

(3)∠APBの二等分線と辺AB、DCとの交点をそれぞれE、Fとし、∠AQDの二等分線と線分EFとの交点をRとする。このとき、∠PRQ=90°であることを示せ。(M崎大学)】



ユークリッド空間の音


(1)


「はじめての小問連続形式」



「辺の比といえば

  ・三角形の相似

  ・方べきの定理(本質は上記相似と一緒だけどね)

  ・三角形の面積の比

  ・ベクトルの内分

  ・チェバ・メネラウスの定理」


「今回の図形ではなんか色々できそうだけど

 たぶん円が出ている点でベクトルの可能性は低い」


「三角形の相似、方べきの定理は

 逆に色々使えそうな場所があって迷う


 方べきの使えるところを挙げてみると


 PA・PD=PB・PC

 QA・QB=QD・QC


 これでカバーされていない箇所で相似条件の使えるところは


 PA:AB=PC:CD(△PAB∽△PCD)

 QA:AD=QC:CB(△QAD∽△QCB)


 さまざま過ぎるじゃないか」



「証明に必要な場所だけ線を塗ってみる



ユークリッド空間の音

赤線が式に必要な辺


おお

これは

メネラウスまんまじゃないか」



「メネラウスの定理より


 (AB/QA)・(PC/BP)・(DQ/CD)=1


 これを変形して


AB/CD=(QA・BP)/(PC・DQ)」







(2)


「相変わらず手掛かりが多すぎる


 たぶん(1)の答えは使えるんだろうなあと類推

 →(1)で示した式と加えてあと数式とで連立させ

  要らない辺を消去してあげるのがよさそう」


「ではどの式を使えばよいのか

 何個式を使えばよいのか」


「また題意を示すために必要な線を塗ってみる



ユークリッド空間の音
赤線は(1)で用いた辺

青線は(2)で新たに必要となる辺」


「加える式の数を必要最小限にするには

 その式の条件として

  ・青線PAを使う

  ・黒線ADは使わない

  ・赤線の一部は使う

 というものが理想


 →PA:AB=PC:CD(△PAB∽△PCD)しかないな」


「△PAB∽△PCDより


 PA:AB=PC:CD

 PC=(PA・CD)/AB


このPCを(1)の答えに代入して


AB/CD=(QA・BP)/[(PA・CD/AB)・DQ]


あとは式変形で


 PA・QD=PB・QA」




(3)



ユークリッド空間の音

「角の二等分線といえば

 ・三角形の頂角の二等分線による底辺の分割比が

  斜辺の比に等しい(名前ないのかなこれ)

 ・内心、傍心の利用

 ・適当な円が描けて円周角が等しい、という流れに持って行く

 ・他、相似など」


「直角であることを示すには

 ・多角形の内角の和

 ・180°の二等分

 ・ベクトルの内積が0

 ・円の半径と接線の関係

 ・直径の円周角

 ・三平方の定理の逆 など」


「この図ではP、Qを含む新たな円を描くのは得策ではない

 というか難しい

 というか適当な円は描けない」


「辺の比は(1)(2)から散々出ているけれども

 辺の比から直角を証明という流れは

 『適当な点が新たな円周上にある』

 『点Rがとある線分を内分する』

 などのテクニックを使わないと

 大変に使いづらい」


「まあとにかく新たな円は使いにくい」


「とすれば内心・傍心の可能性も低くなるか」



「既存の図で角度から攻めていくのが最良か」



「条件としては∠APBの二等分と∠AQDの二等分を使う

 →∠APE=∠EPB、∠AQR=∠RQDは絶対に必要


 そうすると見えてくる図がいくらかある

 そのひとつをあげてみると……



ユークリッド空間の音
∠APE=∠CPF(仮定)

∠PAE=∠PCF(円の内接四角形の角の性質)より

△PAE∽△PCF


とすると対応する角が等しいので


∠PEA=∠PFC(図の青角)


また対頂角より

∠PEA=∠BEF(図の青角)


∴∠EFC=∠BEF

∴∠QER=∠QFR


仮定より∠EQR=∠FQRなので


 ∠QRE=∠QRF


これで∠PRQ=90°は出てくるね」

2012-05-14 00:01:00

焔の魔方陣24

テーマ:過去の断篇

 捜査の鉾先は、再びアリアに向けられた。彼女の身辺調査を行い、怪しい男がいたら、順にピックアップしていく。
 クレイヴとパトリックは、アリアに直接話を訊くことになった。本来ならベテランであるフリッツが適任かと思われたが、フリッツは辞退した。若い警官に対する配慮、ということだろうか。
 数日振りに会ったアリアは、かなり蒼い顔をしていた。今までの経緯を考えれば、当然かもしれない。自分の石像が壊され、人間の手首が送りつけられてきた。更に言えば、アリアは今、謎の男に恐喝されているかもしれないのだ。
 テーブルを挟んでアリアと向かい合ったクレイヴは、早速攻めに出ることにした。
「三年前のことで話を伺いに来ました」
 アリアは明らかに動揺した。本来蒼かった顔から、血の気が完全に消えていく。
「さ……ん年前の話ですか」
「ご存知ありませんか? チェスのアマチュアプレーヤーであったハマーン・ダイスさん。彼は三年前に殺されています。それだけじゃあない。ダイス邸には火が放たれました」
「……」アリアは黙ったままだ。
「少し飛躍した話になります。あなたは当時、バベルと交際していた。その果てにひょっとしたら仲違があったのではと考えたのです。あなたはバベルを恨み、彼の設計した家を燃やすことにした」
「そんなこと……」
「あなたは同時にハマーンさんから詰めチェスのプロットを奪った。今あなたが発表している『アリアの魔方陣』は、本当はハマーンさんが考えたものだ。あなたはバベルへの八つ当たりと盗作を行うためにハマーンさんを襲った。いや、実際にハマーンさんを襲ったのはあなたじゃあない。あなたは懇意にしている男に殺人と放火を依頼し、ダイス邸を襲わせた」
「そ……んな」アリアは顔を引き攣らせて笑った。「そんな馬鹿なことがあるもんですか。そんな証拠がどこにあると言うんですか!」
 クレイヴはここで切り札の一枚目を切った。
「ハマーンさんの息子――セロ君は、あなたの『アリアの魔方陣』を、以前に――あなたが発表する前に――どこかで見たことがあると言っているのです」
「そ……そんなことが」アリアは激しく動揺した。
「セロ君は父親であるハマーンさんが作った詰めチェスを目にしていたのです。残念ながら、『アリアの魔方陣』をどこで見たのか思い出せない状態ですが、これは三年前の火事によりセロ君が記憶を失っているからだと考えると腑に落ちます」
「ち……違います! そ……そうだわ、そのセロ君は何か勘違いをしているのよ! 何か錯覚しているんですよ!」
「そんなことがあり得るんでしょうか」クレイヴは更に切り込む。「どんな偶然があったとはいえ、駒の配置が完全に一致しているというのはどう考えてもおかしい」
 アリアは顔面を蒼白にしたまま、完全に沈黙してしまった。
「アリアさん、ダイス邸を襲った男は誰なんですか? 三年前のあなたの共犯者は一体誰なんですか? あなたは今、その男に恐喝されているんじゃあありませんか?」
「し……知りません! 私は何も知りません! もう帰って下さい!」

 クレイヴとパトリックは、半ば追い出される形でシュトラーゼ邸を後にした。
 今日アリアに会ってはっきりした。彼女は間違いなく三年前の放火事件に関わっている。現在発表されている「アリアの魔方陣」は盗作であり、元はハマーン・ダイスが考え出したものだ。
 しかし……。
「証拠がないな。三年前の事件でアリアが関わっていたという証拠が」
「ねえクレイヴさん」
「何だい」
「三年前のダイス邸での事件にアリアが関わっているとしたら、アリアは姉のイルルをも殺した可能性が出てきますよね」

「姉に犯罪を気付かれてしまったか?」

「ええ。そこから攻めていけないでしょうか」
「そうだな……」クレイヴは思案した。「痛ましいことを考えねばならんが、もしイルルが殺されていたとしたら、どこかに埋められている可能性が高いな。それがわかれば決定的なんだが」
 しかし、カームズヒルは広い。イルルが死んでいるとしたら、どこに埋められているのか皆目見当がつかない。
「これは途方もない作業になりそうだな」
 まだ見ぬ被害者を探す作業は、現実的ではない。
 結局、三年前の事件を今更になって捜査することは極めて困難なことに気付いた。
 となると、突破口は現在連続放火を行っている犯人ということになるが……。
「アリアはとうとう、共犯者である男の存在を認めなかったな」
「そりゃあそうでしょう。喋れば自分も捕まってしまいますからね」
「この件に関しては、客観的に調査する必要がある」
 アリアの身辺調査をしているチームの結果待ちか。これもまた地道な作業になるが、致し方あるまい。
「ねえクレイヴさん」
「ん?」
「ひとつ思ったんですけどね。セロを無条件に容疑から外すのは危険だと思うんですよ」
 クレイヴは思わず立ち止まって相方を見た。
「どういうことだい?」
「セロは、アリバイこそありましたが、その動向は極めて不審です。覚えていますでしょう? 第二の事件では、セロは学校をサボった挙句に事件の目撃者になっています。これはどう考えても偶然とは思えません」
「じゃあ、セロのアリバイはどうするんだ? 第一の事件では、同級生のヨハンがずっと一緒だったんだろう?」
「それは、ヨハンが嘘をついているか、あるいはセロがとんでもないアリバイトリックを弄しているか」
 トリックか。ただでさえ密室・死体出現に翻弄されているというのに、これ以上まだ不可能犯罪が関わっているというのか?
「とにかく」パトリックが力説する。「セロは怪しいですよ。事件とまったく無関係とは思えないんですよ」
「しかし動機はどうなる? セロの動機は」
「もちろん父の復讐ですよ。セロは、以前に『アリアの魔方陣』を見たことがある、と言っていました。つまりハマーン殺しの黒幕はアリアである、という結論に容易に達することができたと思います」
「確かに、セロがアリアを恨む理由はわかる。しかしバベルの建物を放火する理由がないじゃあないか」
「そう、放火ですよ」
 パトリックが突然大声を出したので、クレイヴは少しばかり驚いた。
「放火なんです。なぜ今回の犯人は、放火を繰り返しているのか。わたしはセロ犯人説に基づいて、その動機を考えてみました。いいですか、セロは三年前のダイス邸事件で父を失っています。その際セロは、犯人の男を目撃しながらも、火事の恐怖の余りそのときの記憶一切を失っています。父の仇を討ちたいセロにしてみれば、その失われた記憶を取り戻したいはずなんです。そこでセロは、ショック療法を行うことにした」
「おいおい……」
 パトリックのとんでもない仮説に、クレイヴは唖然とした。
「そうです。ショック療法。セロは自分が記憶を失ったときとまったく同じ状況を再現することで、記憶を取り戻そうとしているんです。放火犯はセロはです。彼は火事の現場を何度も見るために、三度も放火を繰り返したんですよ」
「じゃあまさか犯人は……」
 まさか犯人は……、
 本当にセロなのか?


(続く)

2012-05-13 00:16:39

初期五月病

テーマ:ブログ

年度が変わり

新規生徒さまを担当させていただくと

改めて色々と思うことがあるのです。


正負の計算を教えるのがすごく難しい。

英語の意訳をどこまでを正解にするのか難しい。

コミュニケーションの糸口を掴むのか難しい。


今までどうしてやってこれたのかと思いますが

もう何年かさせていただいているのだから

少しは成長せんとあきません。



すべてを教訓としないとあきません。


が、


できれば苦労しないよな。

2012-05-11 00:01:00

焔の魔方陣23

テーマ:過去の断篇

 出勤早々、クレイヴは捜査会議に出席することになった。殺人・放火事件の犯人はワイフトであることがわかったものの、彼は多くの謎を抱え込んで自殺してしまった。
 クレイヴは、早速アルフォートから仕入れた「複数犯説」を発表してみることにした。
 結果から言うと、この説は大きな反響を呼び、歓迎された。
「なるほど」アンリー署長が、厳しい表情のまま頷く。「ワイフトともう一人犯人がいるということか。その場合、ワイフトと放火犯は結託しているのだろうか。それとも、ワイフトと放火犯はまったく別の意志の下動いているのだろうか」
「恐らく、結託しているのだと思いますね」クレイヴは言った。「もし殺人と放火がまったく無関係だとしたら、ワイフトはそのことを遺書に書いていたはずです。実際に、わたしたちはワイフトは殺人だけでなく放火も行っていたと考えていましたからね。いくら自殺する人間でも、わざわざ自分の罪を重くするようなことはしないでしょう。ワイフトと放火犯は完全に共犯関係にあり、ワイフトは共犯者を庇うために、遺書に最小限のことしか書かなかったんです」
 これにより、連続殺人・放火事件は、ふたつの事件に分離することができる。
「連続殺人については」アンリー署長が続ける。「もはや動機も犯人も明白だな。犯人はワイフト。動機は娘を強姦されたことに対する復讐。問題は放火事件の方だ」
「その前に」
 スッ、とショウが手を挙げて、皆の注目を集めた。
「ひとつ確認したいことがあります。今回の殺人では、被害者の手首が切り取られています。そしてギザの手首はヤヌシュとアリアに、ヤヌシュの手首はモーガンとアリアに送りつけられています。ヤヌシュとモーガンが手首の受取人になったことは、ワイフト犯人説で説明が付きます。しかし、アリアが手首の受取人になったことについては、どう考えるべきなんでしょうか。ワイフトの身辺を調査した限りでは、彼がアリアに恨みを抱いているようなことはありませんでした」
「ふむ……」アンリー署長は顎鬚を撫でた。「こう考えれば良いんじゃあないかね。アリアを恨んでいたのは、ワイフトではなく、放火犯の方だったと」
 アンリー署長は、黒板に次のような文章を書いた。


 放火犯の目的
  ひとつ・アリアに心理的な圧迫を与えること
  ひとつ・連続殺人の現場で火事を起こすこと


「あ、ちょっと待って下さい」
 パトリックが席を立った。
「何だね」
「ひょっとしたら、アリア像を壊したのも放火犯なんじゃあないでしょうか。放火犯がアリアを恨んでいる、という図式があるのなら、こちらの事件も同一人物の仕業である可能性があります」
 皆のあいだから歓声が沸く。これはもっともな意見。ふたつの事件が統合されたことになる。
「問題は」アンリー署長が話を進める。「なぜアリアがこんなに恨まれているかということだな」
 アリアと言って真っ先に思い浮かぶ事件は、姉、イルルの失踪である。クレイヴはそのことを言及した。
「こういうことなんじゃあないでしょうか。アリアは、三年前、姉のイルルを殺してしまった。だから恨まれている」
「しかし」フリッツが眉を顰めた。「三年前の段階で、アリアにはイルルを殺す動機がなかったんだよ」
「そこが複雑な所なのですが……、三年前には、イルルの失踪の他に、ダイス邸での殺人・放火事件が起こってますよね。この事件にアリアが一枚噛んでいたらどうでしょうか」
 クレイヴは、この事件とアリアの関わりを簡単に説明した。ハマーンの考えていた詰めチェスの問題が、いつの間にかアリアの手に渡ってしまった可能性が高いということ。つまり、ハマーン殺しの犯人の男とアリアとは、共犯関係にあったかも知れない、ということ。
「この事件の犯人がアリアであることを、イルルが知ってしまったらどうでしょうか。その場合、アリアにイルルを殺す動機が生まれます」
「わかった」アンリー署長が頷く。「クレイヴ君の言葉が真実だとするならば、アリアを恨んでいる可能性がある人物の条件は、ふたつに絞られてくるのだな」
 アンリー署長は再び黒板に箇条書きの文章を書き記した。


 アリアを恨んでいる者
  ひとつ・イルルの復讐をしようとしている人物
  ひとつ・ハマーンの復讐をしようとしている人物


 では、この「アリアを恨んでいる者」という条件に合致する人間はいるか? クレイヴの知る限りでは、セロという少年がいる。セロは殺されたハマーンの息子である。父の復讐をしようと考えても不思議ではない。
「やはりセロが事件に関わっているんじゃあないでしょうか。セロは三つの放火事件すべての現場に顔を出しています」
「セロのアリバイはどうなっている? 殺人事件と放火事件とは切り離されたから、アリバイの再検討が必要だ」
 第一の事件、ギザ事件では、セロは学校での授業の終了から火事の発覚まで、同級生のヨハンとずっと一緒だった。となると、たとえ殺人事件と放火事件が切り離されたとしても、放火事件に対するアリバイはあり。
「駄目だね」フリッツが言った。「セロの第一と第二の放火事件に対するアリバイは完璧だよ。そのセロの同級生が嘘をついていない限り、犯行は不可能だ」
「ちなみに」アンリー署長が言った。「第三の事件に対するアリバイはどうなっている?」
 この問いには、ショウが答えた。
「第三の事件に関しては、セロにアリバイはありません。昨日は学園の休み前でしたから授業も午前中で終わっています。その後セロはひとりで行動し、事件に遭遇したということです」
 おかしい。セロが犯人でないとしたら、一体誰がアリアを恨むのだろうか。それとも、ハマーン殺しの犯人がアリアであるという仮説自体が間違っているのであろうか。
 フリッツが新たな発言をする。
「アンリー君。今回の事件では、もう一つ注目すべきことがあるよ。前の会議でも言ったが、火事が起こった現場の建物全部が、バベル設計・建築のものだった。それだけじゃあない。三年前に放火されたダイス邸もバベルの設計したものだ。三年前から現在に至るまで、バベルを恨んでいる人間がいるかもしれない、ということだよ」
「となると」アンリー署長は、難しい顔をして眉を顰めた。「放火犯人の動機としては、バベルに対する恨みも付け加えられるな」
 アンリー署長は、先程黒板に書いた「放火犯の目的」に、新たな文章を書き足した。


  ひとつ、バベルに心理的な圧迫を与える為


「ちなみに」こちらを振り返ったアンリー署長が続ける。「バベル自身のアリバイはどうなっている?」
 第一の事件では、バベルにはアリバイがあると思われていたが、殺人事件と放火事件が分離された場合には話が違ってくる。バベルは自分の事務所で午後五時まで仕事をしていた。殺人が起こった推定時刻が正午から午後五時。放火が起こった時刻が午後六時。となると、バベルは殺人に関してはアリバイがあるが、放火に関してはアリバイがない。
 しかし、第二の事件では、バベルは事件当時自分の事務所で仕事をしており、殺人事件、放火事件、共にアリバイを所有している。
 第三の事件に関しては、再びショウが発言した。
「バベルは、第三の事件においてアリバイがあります。昨日の夕方に聴取を行ったところ、バベルは事務所の連中と一日中仕事をしていたとのことでした」
 結局、バベルは放火犯ではあり得ない。
「では、話を変えよう」コホン、と咳払いをするアンリー署長。「バベルを恨んでいる人間とは一体どんな人間か」
 パトリックが立ち上がる。
「アリアがバベルを恨んでいる可能性があります。アリアとバベルは、三年前、交際していたという噂が立っていました。これが真実だと前提し、そのときアリアとバベルが仲違いをしたとしたら、アリアはバベルを恨んだとしてもおかしくありません。こうしてアリアはバベル設計の建物に火を放った。その際、アリアはダイス邸を狙ったのです。理由は明白、ハマーンが考え出した詰めチェスのプロットを奪うためです。この事件で、アリアは一石二鳥を狙ったんです」
「しかし、三年前のダイス邸放火・殺人事件の犯人は、セロの証言により、男だと確定されているのだろう?」
「アリアは男装して犯行に及んだんだと思います。あるいは、アリアに男の共犯者がいたのかもしれません」
「で、アリアは今になって、再び放火を繰り返した、ということか? なぜ今になってアリアはまた事件を起こすことにしたんだろうか」
 アンリー署長の言葉を聞いて、パトリックも言葉に詰まった。
 確かに、ダイス邸の事件から三年も経った今、また放火を始めたというのも変な話である。
「こういうことなんじゃあないでしょうか」ショウが起立する。「三年前のダイス邸事件では、確かに主犯はアリアであり実行犯の男がいた。この男をXとします。現在となって、そのXが、何らかの理由でアリアを恨み、今になって、放火を繰り返している。なぜXはバベル設計の建物を狙うのか。アリアに脅しをかけるためです。三年前の放火にアリアが関わっているとすると、今になってその話を蒸し返されることは、アリアにとって非常に都合が悪いということになります。Xはその効果を狙ったんです」
「ならば犯人Xの動機は?」アンリー署長の目が光る。
「アリアとXが今になって仲違いをしてしまったのではないでしょうか。さもなくばXは、アリアに対する恐喝を企んでいるとか。今やアリアはチェス界のアイドルですからね。そのアリアが過去に事件を起こしていたとしたら、大変なスキャンダルになります。Xはそれをネタに、アリアから金を搾り取ろうとしているのかもしれません」
 これは新たな視点である。しかもこの説は、火事を起こす必然性をクリアしているし、アリアが狙われている理由も説明されている。
「つまり、犯人は三年前にダイス邸殺人・放火事件の実行犯となった男だな」アンリー署長は頷いた。「となると、アリアの身辺調査をしていけば、その男に突き当たる可能性がある。もう一度アリアの周辺を虱潰しに調べていくんだ。ちなみに、今回の連続放火に対するアリアのアリバイは?」
「ありません。三つのどの事件に対してもアリバイはありません」これもショウの報告。
「アリアの身の回りにいる男と言えば……」ランディが言った。「確か、ヴィクトールってなチェスプレーヤーが殺されてますよね。そいつが今回の犯人なんじゃあないですかね」
「しかし、放火はヴィクトールが死んだ後も続いている」フリッツが反論した。「ヴィクトールが謎の男Xという可能性はないな。むしろ、今も生きているダイナというプレーヤーを疑うべきなんじゃあないのかな。彼のチェスの腕前はアリアと拮抗していると聞く。アリアとの関わりがあってもおかしくない」
「ダイナは、ギザ事件ではアリバイがありますね」ランディが応じる。「しかし、残るふたつの事件ではアリバイを確保しておりません。マークしますか?」
「もちろんだ。例外を許すな。どんな些細な関わりでもいい。アリアと繋がっている人間を調べ上げるんだ」
 アンリー署長の叱咤で、会議は大方終了となった。


(続く)

2012-05-10 00:01:00

膝の裏物語

テーマ:ブログ

仕事の最中に膝の裏に手が当たりました。

ズボンの下に何やら異物の存在を確認しました。


毛玉でも這入ったのか?


ズボンを少しずらしてまた撫でてみると

その異物はやはり同じ場所にありました。


ズボンにくっついているのではない。

足の方にくっついているらしい。



かなりでかい。



え、イボ?

できモノ?


腫瘍?



一瞬青くなりました。





仕事の合間にズボンを捲ってみました。



ハート形のシールがはらりと落ちてきました。




最近来た姪の置き土産でした。




そういえば家中ペタペタと貼っていたなあ。






2012-05-08 00:04:00

焔の魔方陣22

テーマ:過去の断篇

第六章 白の手駒


 四月六日――。
 今日のリヴェリー書店ではフィオが休みである。バベルの主催する公開講義に出席するためである。今日はアルフォートがカウンターに座り、接客をする。
 フィオが休みでも、猫のチェットは相変わらずである。無愛想な顔をしてカウンターの一角を陣取っている。
 今日は書架整理の振りをする必要はない。手早く開店の準備を済ませたアルフォートは、カウンターに座り、朝配達された新聞に目を通すことにした。
 またしても殺人・放火事件が起こったらしい。時は昨日の夕方、場所は中心街から南に下ったところにある小聖堂。新聞では、完全に一連の事件の延長として扱われている。
 この件に関しては、クレイヴに謎解きを頼まれていたのだったか。第二の事件――ビスタ記念館で起きたヤヌシュ事件――では、一応密室に対する答えが出たのだが、第一のギザ事件の密室はまだ不明なままである。
 また今日辺り、クレイヴが話をしに来るんじゃあないだろうな。
 嫌な予感ほど的中する。開店前にクレイヴがひょっこりと顔を出した。
「よう、アルフォート」
「また事件のことか」
「話がわかるじゃないか」
「俺はまだ話を聞くなんて一言も言ってないぞ」
「これでも頼りにしているんだぜ」
「迷惑な話だ」
「ところで」クレイヴは、きょろきょろと辺りを見回した。「フィオはどうしたんだ? いつもならもう出勤している時間だろう。風邪でもひいたのか?」
「今日は休みを取っている。何でも、バベルの講義に参加するんだと」
「ふうん。バベルの講義ね。ま、フィオらしいな。お前と違って勉強家だ」
「余計なお世話だ」
「フィオがいないのは丁度良い。お前にじっくりと話を聞いてもらおうか」
 クレイヴは、勝手にカウンターの奥から椅子を取り出し、勝手に居座ってしまった。一般人を巻き込む気が満々である。
 アルフォートが抗うのよりも早く、クレイヴは勝手に事件のことを話し出した。各々の事件と各人のアリバイ。

 最後にクレイヴは、昨日起こったことを事細かに話した。連続殺人・放火事件の犯人と思しきワイフトという人物が、遺書を残して自殺したこと。遺書には「モーガンも殺した」と書かれてあったこと。その日の夕方には、モーガンと思しき人物が犠牲となった第三の殺人・放火事件が起こったこと。その際、人体出現という不可解な現象が起こったこと。
「まるで解らないことばかりだろう?」クレイヴは肩を竦めた。「最後の事件の死体出現に関しても不可解だ」
「その、小聖堂の構造は?」
「円盤状の屋根を十二本のエンタシスが支えている、そんな感じだな」
 クレイヴは、手近な紙とペンを手に取ると、小聖堂の見取り図と断面図を書いて見せた。円形に柱が並んでいるほかには、壁などは一切設えられていない。
「なるほど」アルフォートは頷いた。「これなら中の様子は一目瞭然なんだな」
「そう。で、火事の前に小聖堂の中には誰もいなかった、ということだ」
 そして、鎮火後には、死体が忽然と姿を現していた、ということか。

「天井や床は?」

「以前に俺が見たときには、中に這入って見上げると、天井はまっ平らだったな。天井裏はあるのかもしれん。床は――、石膏なんかで土台が作られていたと思う。地下室はありそうにない」
 実際の物を見たわけではないので、どうにも考えにくい。
 クレイヴは、こちらの様子に頓着しないまま、話を進めた。
「ま、これに関しては、じっくり考えておいてくれ。で、もう一つ訊きたいこと。殺人・放火の犯人と思われるワイフトは、昨日の午前中に自殺している。そのワイフトが死んでいるにも拘らず、その日の夕方に第三の事件が発覚した。これはどういうことなんだろうか」
「ワイフトの遺書には、『モーガンを殺した』と書かれてあったのか」
「そう」
「第三の事件の被害者がモーガンである、という証拠は」
 クレイヴは明らかに表情を曇らせた。
「言われてみれば確たる証拠はない。……まさかアルフォート、第三の事件の被害者はモーガンじゃない、と言いたいのか?」
「考えられる。本物のモーガンはどこか他の場所で殺されている、ということだ」
「じゃあ、小聖堂で起こった事件はどう考えるんだよ」
「例えば便乗犯だったとか。ワイフトとはまったく別の犯人がモーガンと無関係な人間を殺した、ということも考えられる」
「便乗犯かあ……。確かにそれは見落としだったなあ」
 そう呟くクレイヴに、アルフォートは付け足した。
「便乗犯説以外にも考えられることはまだある。例えば、殺人犯と放火犯は別々の人物だった」
「え……殺人犯と放火犯が別?」
 クレイヴは大層驚いたようだ。
「そう。そのワイフトという人物は、ギザ、ヤヌシュ、モーガンを殺した犯人であったが、放火をしたわけではなかった。放火をしたのはまた別人だった、ということ」
「……」
「そうなれば、第三の事件も説明がつくだろう? ワイフトが自殺した時点で、彼の遺書にあったとおり、すでにモーガンは殺されていた。そして、ワイフトとは別の放火犯が、その後モーガンを小聖堂に持ち込み、放火をした」
 この意見を聞くや否や、クレイヴの目つきが明らかに変わった。
「……そういえば、こんなことがあったんだ。ギザ事件、ヤヌシュ事件では、被害者の死亡推定時刻と放火が行われた時刻に時間的な間隔があったんだ。そうか……、これならこのことにも説明が付く。犯人は一人じゃあなかったんだ。犯人は二人いて、殺人と放火を分担して行っていたんだ」
 次第に興奮してきたクレイヴは、アルフォートの肩をがっしと掴んだ。
「よっしゃ、アルフォート、でかしたぞ。間違いない。犯人は二人いたんだ。早速これを会議に出してみることにする。これで捜査は進展するぞ」
「責任は持たんぞ」
「大丈夫だーいじょうぶ。この説はこの俺が保証する」

「お前に保証されてもなあ」

「ロイの野郎よりは頼りになると思うぞ」

「どっちもどっちだ」

「とにかく参考になった。さらば盟友」
 クレイヴは、いそいそと立ち上がると、挨拶もそこそこにすっ飛んで行った。自分で出した椅子もそのまんまだ。
 まったく勝手な連中ばかり。散々人をこき使っておいて、お礼の言葉もなし。アルフォートは割りを食うばかりである。
 アルフォートは、軽く鼻を鳴らすと、クレイヴの放り出した椅子を片付けて、再びカウンターに収まった。
 カウンターの隅では、チェットが大あくびをして喉を鳴らしていた。



(続く)

2012-05-07 00:11:29

外出

テーマ:ブログ

高校時代の部活の同窓生の集まりに

参加してきました。


近頃の自分の傾向から考えると

ものすごく勇気のいることというか大胆というか

そんな外出でした。



帰った後はやはりいつものような感じでした。

(ウツウツ)

翌朝に仕事があるのになかなか寝付けなかった。



みんな輝いているなあ。


みんなのお蔭でここまで来られたのに

何も恩返しができてねえっす。

2012-05-05 00:01:00

焔の魔方陣21

テーマ:過去の断篇

 災害対策本部の警鐘が鳴り、消火班が現場にやって来た。燃え盛る焔に放水を行い、鎮火を計る。ここはレーヌ川に近いので、水の供給は比較的簡単だったようだ。
 続いて、警察の連中が到着。例によってフリッツを筆頭に、複数の警官が駆けつけている。今日は、ロイの友人・クレイヴの姿も見られた。
 これはチャンスだ。クレイヴの伝手で、重要な情報が手に入るかも知れない。ロイは早速クレイヴに近付いた。
「よっ」
 クレイヴは、あからさまに嫌な表情をした。
「何でお前がこんな所にいるんだ」
「ちょいと縁があってな。お前らが来たってことは、やっぱりこれは一連の連続放火・殺人事件の線なのか?」
「可能性は大だ。ちょっと複雑な事情になってきているんだがな」
「複雑な事情? おい、何だそれは」
「そんなことはお前には関係ないだろう」
「大有りだ。こちらは事件を報道する立場なんだぜ。隠し事は困るなあ」
「あーうるさいうるさい。そんなことは後だ後だ。今は鎮火を待つしかない」
 クレイヴの反応がつれないので、ロイは餌をぶら下げることにした。
「例のセロ、って少年、今回も現場に現れたみたいだぜ」
 クレイヴの表情は明らかに変わった。
「それは本当か?」
「本当だとも。今、俺の同僚が事情を訊いている」
「事情を訊いているだって? おいおい、勝手なことをするなよ」クレイヴは舌打ちをした。
「構わねえだろう。こちとら記者として働いているんだからよ」
「……で? そのセロはどこにいる?」
「向こうに連れて行かれた。そのうち戻ってくるだろう」
 懸命の消火活動の甲斐あって、焔は何とか収まった。これから実地検分と野次馬共への聞き込みが始まる。今回は捜査員が多いから、能率の良い仕事ができるだろう。
 その捜査も落ち着いた頃、ロイは再びクレイヴにコンタクトを取った。
「おい、クレイヴ」
「まだいたのか」
「たりめえだ。情報をもらわないと、何のために出てきたのかわからん」
「……今度奢れよ」
 クレイヴは、渋々話し出した。
「この火事も恐らく一連の連続殺人・放火事件の延長上にある」
「するってえと、やっぱり放火か?」
「しかも小聖堂の中央に完全に焼け焦げた人間の死体があった。事件の流れを考えると、モーガンである可能性が非常に高い」
 モーガンと言えば、ギザ、ヤヌシュの悪友だった人物だ。叩けば埃の出てきそうなこの三人すべてが殺されてしまったことになる。
「ただな」クレイヴは表情を曇らせた。「被害者をモーガンだとしたところで、二、三、不可解な点がある」
「受けて立とうじゃねえの」
「まずひとつ。ここに屯している野次馬に話を聞いたんだが、こんな証言があったんだ。事件の直前――発火の前には、小聖堂の中には誰もいなかった、ってな。これが本当なら、今回の被害者は、火事が起こってから、突然に現場に姿を現したことになる」
「その証言の信憑性は?」
「複数の人間が証言していたから、ほぼ間違いない。嘘の可能性もないだろう」
「するってえと、被害者は、焔が上がってから小聖堂内に運び込まれた、ということか」
 クレイヴは首を横に振った。「いやそんなことはあり得ないだろう。焔が上がってから被害者を運び込むには、命の危険を伴うからな。死体は小聖堂内に忽然と姿を現したとしか言いようがないんだ」
「ははあん」
 すると、第一、第二の事件に続き、不可能犯罪が演出されたわけか。今までは密室だったが、今度は死体の瞬間的出現。
「で、警察の見解は?」
 ロイはそう訊いたが、クレイヴの返事は芳しくなかった。
「まだ見当もついていない。調査の途中だ」
「問題はそれだけじゃあないんだろう? 今、不可解な点は複数ある、って言ってたが」
「そう。もうひとつ大問題がある。実は、連続殺人・放火事件の犯人はもうわかっている」
 この言葉に、ロイは目を丸くした。
「な……んだって? そりゃ本当か?」
「ああ、間違いない。今まで捜査線上に浮かんで来なかった男が犯人だった」

「そりゃ誰だよ」

「ここでは言えん。ただ三人を恨んでいたとだけ言っておく。で、この犯人は今日の午前中に自殺している。遺書には、自分が三人を殺したことを認める記述があった」
「で、問題というのは?」
「ここまで言ってまだわらないか? 犯人は今日の午前中に死んでいるにも拘らず、今日の夕方の放火を行ったということになるんだ」
「はー、また面倒くせえ事件になってきたな。一体どうなってやがんだ」
 ロイが愚痴を言っても、クレイヴは取り合わなかった。
「俺の勘では自殺した犯人だけに捜査の焦点を絞り込むのは危険だと思う。今回の事件にはアリアも関わっている節がある。三つの事件現場にはセロが姿を見せている。これは偶然だとは思えない。一見単純な事件に見えるが、繋ぐ糸が多すぎて事件の全体像がまったく見えないんだ。恐らく男の自殺と告白は一連の事件のほんの氷山の一角に過ぎないと俺は思っている」
「で? これからの捜査は?」
「犯人の死亡時刻と、今回の放火時刻の時間の齟齬を解明する。それから、セロにももう一度話を訊く必要があるな。全く懸案が多いったらない」
 そう言ったクレイヴは、深い溜め息をついて見せた。
 難題が山盛りの事件であるらしい。こちらが警察を出し抜けられるとしたらこれ以上の栄誉はない。ちょっくら腰を据えて考えてみるか。



(続く)

2012-05-04 00:04:00

枕を高くする犬

テーマ:シェルティ

やんちゃなクウ(シェルティ、♂、せっかち)ですが

最近は徐々に落ち着いてきました。


ただ散歩のときには

本能の赴くままに動いているそうです。


昔は外が恐くて

わたしが一緒に出ていたときには

この先どうなることかと思いましたが。


まあ困ることといえば声がでかい。

帰宅を出迎えてくれるときも吠える。

よその人が来たときにも吠える。

散歩中も吠える。

その声がでかいのなんの。



そんなクウはどうも寝るときには

枕があると落ち着くようです。



ユークリッド空間の音

画像はわたしの作った書籍の山で

枕をしているの図。


なにかしらに寄りかかって寝ています。

布団に這入ってきて

本物の枕に頭を預けていっちょ前に寝ることもあります。

邪魔だっつーの。



うーん、この頃寝ている画像ばかりだなあ。

起きているときには

動きまくるからなあ。

2012-05-02 00:01:00

焔の魔方陣20

テーマ:過去の断篇

 今日のロイは出版社に缶詰だった。
 今手掛けている一連の事件は、出版社にとって言わば「花形商品」だ。報道を行う際には文章表現にも細心の注意が払われる。ロイはそのために自分の机で四苦八苦しているのだった。
 本当は外に出て、がつがつと取材に走り回っている方が性に合っている。しかし、今回ばかりは編集長の許可が出なかった。ロイは実際、ティムと共に、ギザ事件、ヤヌシュ事件に遭遇している。その代えがたい体験を是非記事に反映して貰いたいというのが編集長の方針だった。
 その方向性だと、こちらがもっと掘り下げて文章は文の専門家に任すのが筋じゃないのか。不満たらたらなロイはそれでも文章を書き、推敲し、編集長に却下されては訂正するという作業を繰り返した。気が付くと、いつの間にか夕暮れ時が迫っていた。
「おい。ロイ」

 隣のティムが話しかけてきた。
「うるせえな。いま大変なんだよ」
「そうカリカリすんなって。ストレスは身体に毒だぜ」
「んなこたあわかってるんだよ。でもしゃあないじゃあないか。まだ記事は完成していないんだ」
「そう焦ることはない。夕食くらいは食べに出てもいいだろ」
「夕食か」
「今日一日働いたんだから、多少の休憩を取ったって文句は言われねえさ」
 一理ある。これだけ慣れない仕事を押し付けておいて、見返りがないのは虚しい。上の者がねぎらいを掛けてくれないのなら、こちらからこっそり抜け出してしまおうか。
「じゃあ、ここいらで夕食にするか」ロイは立ち上がった。「多少時間を割いても、明日までには間に合わせられるだろう」
「早速出てくるか。周りの者に勘付かれたら大変だからな」
 ロイとティムは仕事を一区切りさせると、連れ立ってこっそりと出版社を出て行った。
 表に出たところで、ロイはティムに話し掛けた。
「今日はどこに行くんだ? またカモメ亭か?」
「さあな。気儘に歩いていくのも良いんじゃあねえのか」
 夕食に誘ってきた割には、行き当たりばったりの返事である。ロイとしても、細部には拘らないたちなので、特別に異議はない。
 それより気になることがひとつ。ティムはなぜか夕食にカメラを携えてきた。一体何に使うんだ?
 出版社の建物を出て、中心街を歩く。夕暮れ時とあって、仕事を終えた男達がばらばらと通りを歩いている。
「で、どこに行くよ。当てはあるのか?」ロイが訊く。
「ああ、まだカモメ亭でもどこでもいいんだがな」
「適当な野郎だ」
「適当さ加減では、お前の右に出るものはいない」
「うるせえ」
「ところでな」ここで、ティムは少し語調を改めた。「夕食を餌にしてお前を外に呼び出したのには、また別の理由があるんだ」
「はあ? 餌?」
 ロイは、胡乱な目でティムを見た。
「よくわからん。ただ飯を食いに出てきたんじゃあねえのか」
「そんな些細なことには構ってられないんだよ。もっと大事なことがある。これから、そのことをちょっと確かめたいと思ってな。それで、お前をここまで連れ出したんだ」
「思わせぶりだな。てめえ、何考えてやがんだ」
 ロイは、立ち止まって、ティムの真意を聞いてみた。
「今回の連続殺人・放火事件で被害者となったのは、ギザとヤヌシュ。そして、奴らにはもうひとりモーガンという悪友がいたという話じゃあないか。ならばこのモーガンという男が狙われる可能性は大きい。ではモーガンはいつ狙われるのか。これまでの事件は、隔日で行われている。とすると、第三の事件は今日起こるはずだ。ではどこで事件が起こるのか。ここでキーとなってくるのがこれまでの事件現場だ。今までの事件はすべてバベルの設計・建築した建物で起こっている。ならば第三の事件もバベルが設計した建物が狙われる確率が高い、ってこった」
 ロイは唖然として、ティムの話を聞いていた。
「俺はバベル設計の建物を調べてみた。で、そのひとつに目星を付けたんだ。バベルはカームズヒル南に『小聖堂』という円形の小さなパビリオンを作っている。一か八か、その建物を見張ってみるんだ」
 ティムは勝手に喋って、勝手に息巻いている。
「阿呆かお前は。そんなでたらめが成立するわけないだろう。まだ事件が起こるかどうかも判らないんだぜ。たとえわかったとしても、そう都合よく『小聖堂』で事件が起こるとは限らん」
「それならそれで、他の建物を見張ればいいんだよ。今日ももう夕方だ。犯人が動くとすればもう間もない。機がよければ、また特ダネをモノにすることができる」
 ティムの顔は真剣であり、その瞳には妖しい光が宿っている。一種の狂気に通じる輝きであった。
 ティムに押される感じで、ロイは渋々頷いた。
「まあいいけどよ。その代わり、当てが外れたら今度メシでも奢れよ」
「乗ってやるぜ」
 このティムの自信はどこからきているのだろう。まさか、こいつが放火をするつもりなんじゃあないだろうな。
 いつもは強気なロイもその妙な疑惑に囚われ、ティムに言われるがままに付いて行くことにした。
 街の中心部には、南北にレーヌ川が流れている。ロイ達は、その川沿いをどんどん南下していった。
 小聖堂は、街の南部に建つ建物である。外観は円形であり、意匠の施された円い天井を十二本のエンタシスが支えている構造になっている。天井も柱も床もすべて白亜に塗りつぶされている芸術的な建物だ。聖堂の中央には、大きな女神像が建てられている。
 そろそろ行く手にその小聖堂が姿を見せるはずだった。
 ロイはその瞬間、驚くべき光景を見ることになる。
 遠くに見える小聖堂が、一瞬にして紅い焔に包まれたのだ。まさに「あっ」という間もない出来事であった。ロイは悪い幻でも見ているのではないかと思った。
「嘘だろ!? 本当に小聖堂が燃えているのか?」
「だから言っただろ。俺の目に狂いはない」
 ロイは小聖堂について多少の知識は持ち合わせている。小聖堂は、その外観こそ白亜の石に見えるけれども、実は木材に白い塗料を塗っただけのものだ。これはバベル自身の設計方針らしい。バベルが何を思ってこんなことを企んだのかは不明だが、結果として、この小聖堂はすこぶる燃え易い。一度火がついたが最後、全力で消火活動をしない限り、すべて燃え尽きてしまうだろう。
 辿り着いた小聖堂は轟々とした焔に包まれていた。普段はエンタシス間から中の様子が見て取れるのだが、現在ではすべてのエンタシスに火が燃え広がっており、内部の様子がまったくわからない。
「こりゃあ芸術的な燃えようだな」ティムが、目の上に手を翳す。
「阿呆かお前は。火事に芸術も何もあるか」
「わかるんだよ、俺には。焔が俺を呼んでいるんだ」
 呆気に取られるロイを尻目に、ティムはカメラを取り出して、焔に包まれた小聖堂を激写し始めた。
 こいつは……、何考えてやがんだ。焔が俺を呼んでいるだって? わけのわからないことを言いやがって。
 ロイは、辺りを見回した。騒ぎを聞きつけた野次馬たちが続々と集まってくる。

 ロイはその中に、見知った顔を見つけた。
 頬に火傷を負った少年――セロ・ダイスだ。
「おいおいマジかよ」
 セロが事件現場に現れるのは、これで三度目になる。出現率は十割だ。
「おい、ティム」
 ロイは、セロから視線を逸らさないまま、ティムの背中を肘で小突いた。
「何だよ、今いいところなんだ」
「こっちもかなり凄いことになっているようだぜ。見てみろ。セロがまた火事現場に来ている」
「何だって!?」
 ティムは、大層驚いた様子で、こちらを振り返った。
「セロってえと、あの新聞に載っていた?」
「そうだ」
 ティムはカメラを持った手をゆっくりと下ろすと、セロの姿を見やった。その瞳には好奇の色が宿っていた。
 前日ティムは、事件のことでセロのことを調べてみると言っていた。恐らく彼が犯人なのかと考えているはずである。
「おいティム、セロには話を聞いたのか?」
「いや、まだだ。学校の授業のお蔭で昨日は予定が合わなかった。しかし……、こう三度も火事現場に現れていたとすると……、やはりセロは何か知っている可能性が高そうだ。おい、ロイ」
「何だよ」
「俺はセロに話を聞いてくる。だから事件の方の取材はお前に任せた」
「何言ってやがんだ。小聖堂で火事が起こるかもしれないって言ってたのはてめえだろうが」
「物事には優先順位がある。今セロを調べれば、とんでもないことが明るみになるかもしれないんだ。警察が来る前に、ちょっくら打診してくる」
「ちっ、勝手なこと言いやがって。わかったよ。とっとと行きやがれ」
 ティムは、セロに近付いて声を掛けると、そのまま彼を現場から遠ざけて、建物の陰へと導いていった。あんなにこそこそと隠れて、ティムは何を聞き出そうというのだろうか。警察が来るまでにはまだ時間があるから、そんなに秘密裏に動く必要性などないというのに。
 しかし、である。
 今まではセロに心を奪われていて気付かなかったが、考えてみればティムの行動にも疑念が残る。セロだけでなく、ティム自身も三度にわたり火事の現場に真っ先に駆けつけているのだ。今回――三度目の事件――では、予言までしていた。これは果たして偶然だろうか? ティムこそが事件に深く関わっていると考えるのは穿ち過ぎだろうか。


(続く)

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