音楽機材について今思う事 3 マニピュレーター って何? | 夢が毛利毛利

音楽機材について今思う事 3 マニピュレーター って何?

確定申告に夢中で間が空いてしまいました。

まず前回のシンセサイザープログラマー編補足なんですが、

 あれはあくまでも僕の仕事の仕方で一般的とはかぎりません。
 そして、最近そういう状況はあまりありません。(それについてはのちに書きます。)
 なにより! ああいう1日は幸せですが、2週間続くと辛くなります!
 やはり13時に始めたら22時ぐらいには終わるというのが目指すところであり、
 早く終わるのも非常に大事な事であります。
 失礼しました!

さて、そして今回マニピュレーター編です。
 
これを定義してしまって良いのかどうかちょっと難しいところなんですが、
主にライブの現場でいうマニピュレーターとはこういう仕事なんです、という形で
説明出来ればと思います。

マニピュレーターをまずざっくり説明してしまうと、
バンドメンバー以外の音を出してる人です。

最近のライブでは当たりまえのことになりましたが
舞台にはいないのに、ストリングスなってる! とか
本人しか歌ってないけど、たくさん本人の声でハモってる!
みんな休んでるけどカッコいいリズムなってる!!
なんていう状況がよくあると思います。
そう、それがマニピュレーターの再生している音です。

あぁなんだ。。とりあえずWalkmanポチって押せばいいのかって思ったあなた!
ノンノン。そんな簡単ではありませんでボワース。

そもそもどうしてこんな事を始めるようになったのか、
理由は人それぞれあると思いますが、
例えば!

QueenのBohemian Rhapsody。 
だれしもが聴きたいあの名曲。ライブでやらないわけにはいかないが、
途中みんなで重ねて録音しまくったコーラス。アレがないとあの曲は成立しない。。。。
しまったぁ~調子のって作りすぎちゃったよ、フレディー。ロジャーもあの最後の高い声出せるかい?
いやぁ~無理ぽ。。。それよりブライアン最近声枯れてない? みたいな話になって悩んだいたら。
じゃぁさ、そこはテープでかければいいんじゃない? ってジョンが言ったか言ってないかは
わかりませんが、とりあえずあの大事な部分がテープで再生されているおかげで、
僕らの期待する通りのBohemian Rhapsodyを聴くことができたのです。

ときは数年たって、さてかの YMOの方々はライブをやることになりました。
やっぱりアレっしょぉ~ シーケンスとかシンセの音がアルバムみたいにならないとさ
カッコつかないよねぇ。 ていうか、ライブでもっとナウい事するべきじゃねぇ?
クリック(メトロノーム)聞いてやったほうがいいしねぇ、音楽的に。あ、そうだ!
松武君※さぁ、MC-8(シーケンサーの機種)でアルバム作ったんだし、
ライブでも使えばいいじゃん。1台で1曲やってる間に、
もう1台で次の曲プログラムすれば間に合うんでしょ~ あ!それパネェよ、やろうよ!!
 。。。。あぁ、、うん。。。。。。
みたいな会話だったかはわからないが、それによりコンサートでびっくり仰天な未来な音を
人類は体験することができたのです。 
 ※松武秀樹さん。元祖プログラミング、マニピューター。この人がいなければ全てがないのである。

そのようにして、録音技術の向上とともに、そのままライブでも新しいことをやりたいという
欲求から必然的に生まれた職業であります。

僕が所属するオフィスインテンツィオは、マニピュレーター集団でもありますので
皆で昔から情報交換しつつ常に新しいやり方を求めて試行錯誤してまいりました。

一気に話を飛ばして、あくまでも今の僕のやり方を今日は書いてみようと思います。

最近の音楽のデータはほとんどが ProToolsというソフトで管理されています。
1曲の音のすべてが1つのファイルに入っているわけなので、まずはそれをそのままお借りします。

データをコピーしたら、まずは実際のCDと同じように聞こえるようにします。
Protoolsファイルといっっても、中に入っているオプション(プラグイン)は人それぞれなので、
開いてみないと同じように音が出るかはわかりません。
大抵は何かしら互換性がないので調整をします。

一段落したら、自分なりにファイルを整理します。
CDにとって必要な音でも、ライブでやる場合他のメンバーの演奏との兼ね合いで
使う必要のない音もでてきます。
その辺の優先順位をつけてあと すぐに On Off できるように 並べ替えたりします。

一つ一つの素材を聞いていくと、レコーディング時に皆が気持よくグルーブしていたり
意図的にずらして演奏されているものなどある場合、
新たにバンドで演奏するのとは噛み合なくなるので、タイミングを修正したりします。

あとは、実際バンドでやってみたらテンポがしっくりこないね、なんてこともあるので
必要なものはいつでもテンポを変える事ができるようにしておきます。

最後に クリック(メトロノーム)です。
これを聞く人で一番大事なのはドラマーなので、好きな音色など確認させていただいて
合わせておきます。 もちろん僕のおすすめYMOクリックもプレゼンします(笑)
各種音色を、その場で 8分音譜、16分音符等で切り替え出来るように複数張っておきます。

これで1曲の準備は完了です。
これをコンサートだと20曲近くやった後に、
各曲の 音の大きさ、聞こえ方が違和感ないように調整していきます。

ここまでが、リハーサルまでにやらなくてはならない準備です。

さてリハーサルに入ると 実際にバンドと合奏です。
一緒にやってみると、音質、各音の定位(右とか左)、タイミングなどいろいろでてきます。
人間であればプレイしながら変わっていくものですが、こちらは皆とコミュニケーション
とりながら合わせていく事が大事です。
もちろんライブですから曲のサイズを変更したりする場合もあるので
迅速なエディットが求められます。
アレンジを変える場合は、新しく音を作ったりパートを作成したりもします。
PAのかたとも相談しながら、音の大きさバランスをつめていっていよいよ完成かなと思ったら、
僕は ProToolsから DigitalPerformer というソフトに全曲録音し直します。
この辺は質問があればお答えしようと思いますが、本番にはこっちのソフトがいいのです。

本番時での理想は、ボタンを押したら何もしない事です。
それまで構築していってるのですから何もしないで気持よければ準備が良かったという事でしょう。
しかし人間のやる事で、ライブですから当然そうもいきません。
やはり何かしら音量をいじったりする必要もあります。

なによりも大事なのは曲のスタートの押すタイミングです。
僕らは曲の前にメトロノームを1、2小節聞いてから曲が出るので、
MCが終わりそうなときにカケでボタンをおさなければなりません。
あれはなかなかスリリングです。でも曲名言ってから変な間があるのはイヤですものね。

そしてこればっかりはしょうがないのが機械です。
皆様も家でコンピューター使ってて固まった!などということはあると思いますが
やはり固まる時は固まるものです。 普段から整理してきれいになっているはずですが、
駄目な時は駄目です。かといって音が止まっちゃった。エヘ ってわけには行かないので
僕は常にコンピューターが2台まわってます。1台が落ちても1台はかまわず動きます。
多分ほとんど気がつかないうちに切り替わってると思いますが、この辺のやり方は企業秘密です(笑)

そして最も怖れるのは、 バンドがサイズ間違っちゃった! です。
基本的に録音されてるものを再生してるわけですから、
ずれちゃうとそのあと恐ろしい曲になってしまうのはわかっていただけますでしょうか?
イントロが長い時とかいっつもドキドキしてます。
もしそんなことがあったら、僕は2台目のコンピューターでタイミング合わせ直して切り換えます。
もし僕の頭からケムリがでていたら、大体これです。

このようにマニピュレーターというのは、
エンジニア的要素とバンドマン的要素を持ち合わせなくてはならない
素敵な仕事なのです。

さぁ今日この説明で少しは謎の職業の実態をわかっていただけたでしょうか?
わからない事があったらコメントに質問いれてください。

さて、説明が終わったところで 次回から
今僕が使ってる機材など紹介しつつ少しずつ語っていこうかと思います。

でも書いてるうちに 全然 思う事 が 忘れてしまう~~~~ ま、その辺は緩く行きます。
では 長くなりましたが、みなさん 今日も 寝ルベ

毛利泰士