2006-05-16 12:02:41

その7≪玉検と移送≫

テーマ:刑務所内日記

 4月25日の午後、いつもの様に分類センター2階の5室で作業をしていると、不意に監房の扉が開錠された。

 扉を開けたオヤジ(刑務官の別称)は真顔で私を見据えると、「作業中によそ見をしたので取り調べの為連行!!」と宣ったが、オヤジの本当の用件が″玉検(たまけん)″であることはお見通しである。

 何故なら、私はこの瞬間をここ数ヶ月の間待ちに待っていたからに他ならない。

「お待ちしてましたよ」私はそう言って廊下に出ると、

「左向け左!!小走り前へ進め!!」の号令と共に″玉検″をする小部屋へと向かったのだった。


 さて、この耳慣れない″玉検″という単語なのだが、おそらく刑務所に入ったことのある人じゃなければ理解不能だと思うので、軽く説明しておこう。

 これは文字通り玉の検査なのだが、具体的に言うと、「サオに玉を入れたりしていないか」パンツを下ろしてチェックされるのである。

 意味が解るだろうか??

 要はサオをカスタムしていないかということだ。

 通常、外の世界では○○クリニックとかいう所に行って、シリコンボールを入れてもらったりするアレである。

 勿論、刑務所内にはシリコンボールなどという気の利いた物は存在する筈もないので、玉入れをする方々は主に歯ブラシや碁石で代用しているらしい。

 私は未だそういった場面に一度も遭遇していないので、聞いた話しでしかないのだが、どうやら歯ブラシの柄の部分や碁石をコンクリートの壁や床にひたすら擦りつけ、丸くなってきたら歯磨き粉など(研磨剤の一種なので)を使って更に磨きをかけ、お好みの大きさに仕上がったら、これまた壁や床で擦るか、鉛筆削りなどで先を尖らせた箸などを使って、サオの薄い皮に小さな穴を開け、そこから中に玉を入れてしまうのだそうだ。

 そして更に、歯が痛いなどと仮病を使って不正にゲットした抗生物質を飲めば、傷口の化膿も防げるというわけだ。

 一体何で刑務所内でこんな事をしてしまうのか私には理解できないのだが、実際にしてしまう人が存在するので玉検は実施されるのである。(ちなみに、施設に入る前からカスタムされている人については不問だが、新たにカスタムをした事が発覚すれば、これは規律違反行為なので、ほぼ例外無く懲罰の対象となる)

 

 そんな訳で当然の如く玉検にパスした私だが、何もサオを検査される事を待ち望んでいたのではない。

 玉検をされるということは、同時に移送を意味するのである。

 私はそれを待ち望んでいたのだ。

 そして翌日の朝、半年以上生活した多少なりとも愛着のある部屋と同居人達に別れを告げ、″移送部屋″と呼ばれるいそうされる人のみが入れられる部屋に連れて行かれ、そこで一晩を過ごすこととなった。

「いよいよ俺も移送かぁ・・・」と、気持ちはやや高ぶっていたものの、その時点で私にはちょっと気になることがあった。

 移送といえば、交通費などのコストが掛かる為、数人をまとめて移送する筈なのだが、移送部屋は10人用の部屋にもかかわらず中には何故か私一人なのである。

 この事に多少の不安はあったものの、数分もするといつもの如く「考えたところでどうにかなるものではない」という刑務所内ならではの理屈で納得した私は、部屋に置かれていた数冊の本を読破することにその日の全てを費やそうと気持ちを切り替えた。

 お陰で夜はぐっすり眠れたのだが、翌朝、つまり4月27日の朝はおそらく6時半だったと思うが、扉をガンガン叩かれて起こされると、その5分後位には早くも部屋から放り出され、移送先の言い渡しが行われる部屋へと連れて行かれた。

 移送の際は私服の着用が許されているので、約7ヶ月ぶりの私服に着替えていると、スーツ姿のオヤジが3人私の前に現れた。

 私が居住まいを正すや否や、その中の比較的若く見えるオヤジが、

「気を付け!!礼!!直れ!!」と、号令を掛ける。

 この後に発せられる言葉が、昨日からの私の疑問を解決してくれたのではあるが・・・・・。

「あなたは、これから徳島刑務所へ移送となります」と、キャリア風のオヤジが山の手口調でこう告げたのである。

 眠たかった私の頭は一瞬にして覚醒し、私は内面のみで動揺していた。

 何せ行き先は四国なのである。

 しかもJB(その2参照)だという。

 こんなに遠くに移送される受刑者は、おそらく全体の一割にも満たないのではないだろうか??

 だから私は一人だったのである。

 私の管区は東北だったので、遠くてもせいぜい北海道か関東ぐらいだろうと決めてかかっていたのだが、その私の予想は、大幅に覆されてしまった。

 きっとこれには事件の内容が深く関係しているのだと思われる。

という訳で、その日は約9時間を掛けての大移動となったのである。

 まずは、東北新幹線に乗り、東京で東海道新幹線へと乗り継ぎ、そして岡山駅からは快速線で瀬戸大橋を渡り、高松でまたも乗換えをして・・・。

 ちんみに私はこの間の全てを手錠を掛けられた状態(手錠から伸びた縄は腰に回され後ろで握られている)で、一般の客席に座らされていたのである。

 普段、日光に当たる機会が殆ど無かった私の肌は青白い色をしているし、髪型は中途半端に伸びた坊主頭だ。

 そして、私服姿の私に対し、周りにはスーツを着込んだ3人の男が常に目を光らせ、手首には手錠が掛かっているのだから、これでは誰が見たって一目瞭然ではないか!!

 ちなみに、トイレに行くにもこの3人は私の側から決して離れてくれないし(当然か)、大便の時も手錠は片方しか外してくれなかった。(したがって扉は少し開いていた)

 相中で十数人は私の異様に気付き、驚いた顔をしていたが、私と目が合うと皆すぐに目を逸らしてしまう。

 ちょっとだけ心の中には冷たい風が吹いたが、逆に良かった事もあった。

 刑務所での暮らしがそうさせたのだろうが、久しぶりに目にした世の中はすばらしく新鮮な眺めだった。

 私は一日も早い社会復帰を心より誓うことが出来た。


 夕方になり漸く目的地に到着すると、今度は入所手続きである。

 前の施設で着ていたのと全く同じ素材の服に着替えると、自分の称呼番号(要はID番号なのだが、桁数の違いなどである程度の刑期は識別が可能であり、受刑者には出所するまで同じ番号が付きまとう)が書かれた札を持たされ、正面と横顔からの写真を撮られる。

 その後にお仕着せの健康診断を済ませれば、舎房へと連れて行かれ入所は完了となる。

 こうして、約半日掛かりの長旅ではあったが、私は無事に新天地での生活をスタートさせたのであった。


 末筆になってしまったのだが、書いておかねばならない事がある。

 それは私がこのThe Prison Chronicleをどの様にしてUPしているのか、という点である。

 現行の監獄法では残念ながら受刑者が外部の第三者と接触することは認められていない。

 現状では、受刑者は親族とのみしかやりとりが出来ず、今の私に許されているのは、月に一度の面会と、月に一度の発信のみである。

 したがって、私はThe Prison Chronicleに書きたい内容を毎月手紙に認め、それを受け取った私の細君がUPしてくれているという訳だ。

 持論ではUPすること自体はやりとりではない。

 しかし、コメントに対する返事を書くとなると話しは別なのである。

 手紙は必ず検閲されるので、発覚すれば発信が許可されなくなる可能性がある。

 それでは本末転倒だ。

 だから、その点についてはどうかご理解を頂きたいのである。

 その代わり、頂いたコメントについては、細君がそのまま手紙に書いて送ってくれるので、全て有り難く読ませてもらっている。

 只でさえ閉塞されたこの状況下で、暖かい言葉を頂けるとというのは、「書いてて良かった」と最も強く感じられる瞬間である。

 この場を借りてお礼を申し上げたい。

 それから、現行の監獄法だが、5月24日から新法が執行される為廃止になるそうだ。

 これについては次回詳述しようと思うが、上手く緩和されれば、コメントに対する返事も可能になるだろう。

 こんな手前勝手なブログではあるが、これからも読んで頂ければ幸いである。


 

AD
いいね!した人  |  コメント(5)  |  リブログ(0)

mobさんの読者になろう

ブログの更新情報が受け取れて、アクセスが簡単になります

コメント

[コメントをする]

5 ■これから暑くなりますが頑張ってください

すごく興味深く読ませてもらってます。
私も、徳島刑務所で5月中頃から一ヶ月たらず未決拘留で拘置されておりました、雑居房8人部屋でしたが、雨が降ると結露がひどく壁、床などびちゃびちゃになってました。これからの季節できるだけ身体を御自愛下さい、私も短い間でしたが、書かれていらっしゃる様にきっちり水虫をもらって帰りました(笑)。最近徳島刑務所の刑務官の書かれているブログを見つけました
http://plaza.rakuten.co.jp/porigin/です。次のupを楽しみにしてます、それでは。

4 ■長いですね

待ってられる方も大変ですよね。
うちも15年ですが、残りもやっと1桁になりました。徳島は水不足で大変だと聞きますが頑張って下さい。六月1日に面会に行った所、面会時間20分、月2回の面会に新しい法令で決まったようですが、(キッチンタイマーでしっかり20分はかってました)
色々な噂がありますが、少しでも過ごせやすくなるといいですね。それでは!

3 ■更新を楽しみにしています。

わたしの身内も今分類センターです。もう2ヵ月半になります。そろそろ移動するかもしれません。中でのことは何も教えてくれないので、とても心配しております。知ったからといって何かできるわけではないのですが、教えていただいてちょっと安心しております。性格と文章力によるものなのでしょうが、悲惨さがなくさらっと書いていらっしゃるので、わたしが救われています。毎日覘いています。処遇法改正で月2回になるんじゃないかと期待しております。新しいところに落ち着かれたら是非近況をお知らせください。

2 ■手紙の検閲

あるのは、当然ですよね。知ってました。ただ、時代が変わり、パソコン、インターネット、なるものが普及した現代でその辺りがどうなっているのか不思議でした。
ネットの仕組みも技術が上がり、子どものためのオンラインセーフティの面から色々方法がるので、決められたサイトのみアクセス可能にすることも刑務所内でできなくもないですよね。外部とのコンタクトが出来ないがニュース閲覧のみとか。かなり制限されるでしょうが。

私は務所に入るに至った経緯をまず知りたいです。事件、裁判、判決、まで。
寒さが過ぎ、まだ暑さもなく、今が一番過ごしやすいですね。
私はまたミスして監獄(保護室)に戻らないよう、なんとかやっていきます。

1 ■せめて

手紙を検閲されるのですね・・・。
ある意味プライバシーの侵害になりそうな感じもしますが(^^;

これから梅雨シーズン突入ですが風邪等お体を壊さぬよう気をつけてくださいね~。

コメント投稿

AD

Ameba人気のブログ

Amebaトピックス

      ランキング

      • 総合
      • 新登場
      • 急上昇
      • トレンド

      ブログをはじめる

      たくさんの芸能人・有名人が
      書いているAmebaブログを
      無料で簡単にはじめることができます。

      公式トップブロガーへ応募

      多くの方にご紹介したいブログを
      執筆する方を「公式トップブロガー」
      として認定しております。

      芸能人・有名人ブログを開設

      Amebaブログでは、芸能人・有名人ブログを
      ご希望される著名人の方/事務所様を
      随時募集しております。