彫刻家 片桐 宏典さん(再放送)第1回 ~三陸のリアス海岸が原風景にあります~ | 幸せな人が集まる会社 株式会社みんなの学び場 公式ブログ

彫刻家 片桐 宏典さん(再放送)第1回 ~三陸のリアス海岸が原風景にあります~

 

みなさま こんにちは。

彫刻工房くさか 日下育子です。

 

今日は素敵な作家をご紹介いたします。

彫刻家の片桐 宏典さんです。

 



片桐 宏典さん
ケイト・トムソンさん
お二人とも彫刻家であり、ご夫妻でもいらっしゃいます。

 


前回の日下育子からのリレーでご登場頂きます。
     第1回  第2回  第3回  第4回  第5回  

 

 

第1回の今日は、片桐 宏典さんが制作を始められたきっかけについてお聴かせ頂きました。
高校の美術部時代は具象の塑造制作、大学で石の抽象彫刻を始められたとのことです。


ご自身のルーツである、宮城県気仙沼市唐桑のリアス式海岸が原風景かもしれない

というお話をお届けします。

 

インタビューはお二人いっしょにさせて頂きましたので
ケイト・トムソンさんの言葉も含めて掲載させて頂きます。

 

どうぞお楽しみ頂ければ幸いです。

 

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ウオーターマーク

「ウォーター・マーク ~北上川の四季」
スウェーデン黒、岩手産白花崗岩
本体寸法   700x700x800cmH
いわて沼宮内アートロード計画 「シンボル・モニュメント」
岩手県岩手町いわて沼宮内駅前
2003



 


シンフォニア

「シンフォニア(交響曲)」
岩手産白花崗岩、クリ
450x180x900cmH
岩手県二戸郡奥中山いわて子供の森
県営テーマパーク施設のシンボル・モニュメント
2002


 

「コスモス」

1.[ビックバン広場ーモノリス」

岩手産白御影石、遠野産黒御影石
本体寸法  6.2mH x 30m x 25m

宮城県仙台第一高等学校

 


「コスモス」

2.「現在の時空広場」

岩手産白御影石、遠野産黒御影石
本体寸法  2mH x 30m x 25m

宮城県仙台第一高等学校

 

デザイン及び制作
片桐宏典、ケイト・トムソン、用澤修、吉田昇、ルボミア・ヤネチカ、
アンディー・アルプ、岩村俊秀、清本真右、坪井常男

岩手産白御影石、遠野産黒御影石

デザインから制作まで全て芸術家の共働制作によるプロジェクト
1993


 


七つの旅2


七つの旅1

「七つの旅」
片桐宏典+ケイト・トムソン共働制作
中国産大理石
本体寸法  150x1050x210cmH
青森県八戸市南郷区図書館
2004
メモ
この作品は、人間の知的好奇心と柔らかな精神が、
世界に広がる文化的多様性と叡智に触れる驚きと
喜びから生まれる「知的果実」を求めて、
理想と現実世界を駆け抜ける精神の旅を象徴しています



 


エクリプス2011

 

「Eclipse- Prominence 2011-e3」
スウェーデン産黒御影石
59 x 18 x 59 cm high
2011

 

 

 

覚醒する風景2011

"覚醒する風景ー邂逅"
インド産黒御影石
50 x33 x 330cmH
2011

 


 


眠る心臓07ー05

「眠る心臓 2007-05」
宮城県産玄武岩
35x9x40cmH
2007

 

 


 

よみがえる港

「よみがえる港」
宮城県産玄武岩
幅90x厚15x高25cm
2004


 

 

 

日下
制作をはじめたきっかけについてお聞かせいただけますでしょうか。

 

 

片桐 宏典さん
私は、小学校の時から絵が結構上手だと言われていたので、

前から美術に興味がありました。
高校では最初はバレー部に入ったのですが色々あって1年生の時に辞めて、
その夏休みから美術部に入ったんです。

 

そこで、普通は油絵を描くじゃない?
でも粘土があって、その時の部長が彫刻をやっていて
「片桐君、粘土もあるし石膏もあるから、彫刻だったらお金かからないよ」と言うわけです。
じゃあ僕も彫刻にしようかな、って始めたのが彫刻の始まりなんですよ。

 

だから高校の3年間は、首とか具象ばっかり作っていて、
抽象は下らないと思っていました。
当時はロダンやブールデルなどの大きい展覧会がありましたので、これしかない!みたいな。
それで宮城教育大学に入ったんですよ。

 

そしたら、土屋瑞穂教授(※)が「これからは抽象彫刻だ!」とステンレス抽象彫刻を制作していて
僕も入学当初から手伝いにかり出されていました。

 

当時、西武美術館で流政之の大きな回顧展があって、それがすごく面白くて!
「ああ、抽象もありかな。具象はつまらない。」と感じて石の抽象彫刻に移りました。
それが石の最初なんです。
 
 ※彫刻家 土屋瑞穂氏(1933-) 宮城教育大学名誉教授 一陽会運営委員

 


日下
そうだったんですか~。
宮城教育大学ではどのように制作を始められたのでしょうか。
大学の制作環境はいかがでしたか。

 

片桐 宏典さん
宮城教育大学ってすぐ隣にいろいろな学部があって、

よく一緒にお茶飲みながら世間話するんですが、
ある日、地学の先生が
「石ってみんな丸いと思っているけど、結晶を観ると
 みんな完璧な抽象的なかたちの対称形でそれこそ立方体とか平行四辺形なのに、
なんでみんな丸くしてしまうんだろうね。」と言うんですね。
「へぇ~なるほど、確かに。」と思いました。

 

宮城教育大学ってそういう意味で面白かったですよ。
土屋先生も積極的に音楽の先生などとコラボレーションされたりしていたし。

だからそういう意味ではすごくフットワークが軽くなって
芸大に行かなくて良かったと思います。行けなかったけどね。

 

当時はポップやキネティックアート、ハプニング、アースワーク全盛時代で
世界的に美術がイズムからアートに移行する時期でもありました。

 

僕の場合、大学に入った当初は、当時流行ったホログラフィーの
制作をしていたんだけど、物理の教授がそのためにレーザーとか必要な機材、
実験室まで喜んで貸してくれて。

当時、すでにコンピューターグラフィックをやっていた人もいて、
美術の学生が理系の研究室に入り浸ってました。

当時のCGってネット状の三次元地形みたいなのを描くのに1週間もかかるという代物で、
フラクタルがやっと出てきた時だから、それを作るのだって
当時のコンピュータでは3日かかるんだもの。
でも、とても楽しかったですね。

 

そういう柔軟な環境が当時の宮教大にはありました。
そこに大学1年の夏、石彫の集中講義で彫刻シンポジウム(※)で活躍していた
彫刻家の横沢英一さん(※)が来て、それもタイミング的にはすごく良かったなぁ。

 

 ※ 横沢英一さん Ukishima.Net   国際彫刻シンポジウム誕生の経緯(1959年~1970年代)
               私の参加した時代(1978年~2000年まで)参照

 

 

日下
横沢英一さんは非常勤の講師でいらしていたのですよね。

 

 

片桐 宏典さん
非常勤というか、石彫の特別授業は2年か3年に1回で、
オリンピックのような感じで来る先生だったからね。
それで、暴れて帰っていくという。

 

丁度、僕らが石彫を始めたばかりだったのと、

土屋先生も本格的に石彫をやりたくて仕方なかったようで。
で、その夏に横沢英一さんの講義を組み入れて、本格的に始まったんじゃないかな、確か。

石を始めちゃうと他のものがもう、つまんないのよね、物足りなくて。

 


日下
私もその口でした。(笑)

 


 

 


 

片桐 宏典さん
でしょ。もう決まり!みたいな。
他のものは馬鹿馬鹿しくて出来ないという感じになっちゃうんですよ。

 

 

日下
そうですね~。(共感!)
ところで、片桐さんはお父様が遠洋マグロ漁業の網元だったとお聴きしています。
何かそこから影響を受けられたことはありますか。

 

 

片桐 宏典さん
全然関係ないです。

 


日下
高校の頃はもう仙台に住んでいらしたというのは、
その頃はもう網元は辞めていらしたのでしょうか。

 

 

片桐 宏典さん
そうですね。小学校の3年生ぐらいの時に辞めたんじゃないかな。
それで後は船を貸してそれで生計を立てていたと・・・。
ああいう仕事をやった後は、他の仕事はみなつまらなかったようで。
会社勤めなど馬鹿馬鹿しくて、10年位は何も出来なかったみたいです。
ギャンブル性が強かったんですね。

 

日下
ああ~(笑)、そういうことですか。


 

片桐 宏典さん
網元というのは当時、大きな博打です。
マグロ漁って一回行ってうまく行けば、1億2億すぐ儲かる商売だからね。


 

ケイト・トムソンさん
だけど獲れないと1億赤字とか。

 

片桐 宏典さん
そう、ギャンブルだから当然ですね。

だから親父の仕事の影響というより、気仙沼、唐桑という環境の方が
彫刻的なものはあったのかなという気がします。


 

日下
観ている景観とか、原風景とかがでしょうか。

 

 

片桐 宏典さん
そうですね。後付けで考えれば、僕自身は気仙沼に住んでいたんだけど、
子供の頃、夏によく遊びにいった、父親の実家は気仙沼の唐桑の、
三陸のリアス海岸って、岩場がスゴイじゃない。
だからああいうのは後から考えると影響あるのかなと。

 

仙台一高のモニュメントを、唐桑の親戚が見に来た時に
「宏典、あ、これ、唐桑の 巨釜半造(おがまはんぞう)(※)
じゃないか」
って、言われて。
巨大な柱と、水面に波打つ、渦が巻く所。すっかりそうなんだよね。
全然、僕は気がつかなかったんだけど。

 

 ※ 巨釜半造(おがまはんぞう) ⇒ 気仙沼市HP     宮城の旅

 

 


日下
巨釜半蔵(おがまはんぞう)というのは地名なんですね。
そうだったんですか!面白いことですね~!(感心!)

 


ケイト・トムソンさん
大きいプロジェクトとかまとめるのが上手いですね、貴方。
そういうのはお父さんのお仕事と関係あるんじゃない?

 

たくさんの船の面倒をみるのとロジスティクスを全部考えるのと
プランニング、大きい仕事が入ったらどうやって進めていくかとか、
いざという時のバックアッププランを考えるのとかはすごく上手い。

 


片桐 宏典さん
そういう素地はもらっているかもしれない、自由業だからね。
就職は絶対しないし(笑)。

 

 

ケイト・トムソンさん
やっぱり大きい彫刻プロジェクトをやると
そういう考え方とイマジネーションが無いと出来ないですから。

 

 

片桐 宏典さん
それって、美術で一番面白いのは、自分が社長で、

自分が1番下のカス、お掃除屋さんだから。
上から下まで全部一人でやる、それが一番面白いわけじゃないですか。

 


ケイト・トムソンさん
ね。

 

 

片桐 宏典さん
人に命令されるわけじゃない。
クライアントは別としても、自分で決めて自分で作って、自分でボロボロになるという(笑)。
だからアシスタントが入って大きな仕事の時はしょうがないけど
基本は自分で眼を届かせるということが大事だから。


でも、最近の人はデザイナーが多いからね、どっちかっていうと。
大学だってデザイナー養成っぽくなってきているでしょう。
自分で作るよりも、デザインをしてそれを発注するというパターンだよね。

 

僕が、シンポジウムなんかが肌にあっていたのは、
自分から社会に入っていって、直接関わって、自分で直接つくる、
自分ですべてやるというところかな。

 

 

日下
はい。片桐さんは、大学卒業後すぐにヨーロッパにわたって彫刻をしていたとお聴きしています。

 


片桐 宏典さん
1年生の特別授業のあと、横沢先生の紹介で諏訪湖(1978)のシンポジウムに参加しました。
卒業後に参加した萩国際長異国シンポジウム(1981)で知り合った

オーストリアの彫刻家、マティアス・ヒッツの招待で、

彼のオルガナイズしているリンダブルン国際彫刻シンポジウムで、

アシスタント・オルガナイザーとして手伝いながら、ヨーロッパ各地のシンポジウムや、

スコットランドのワークショップでの制作で10年ほど過ごしました。

 


日下
片桐 宏典さんは、本当に20代に本格的にヨーロッパで実践的に彫刻を学ばれたのですね。
本当に素晴らしい経験を積まれているのですね。
ありがとうございました。

 


 

シクロス1982

シクロス国際彫刻シンポジウム、

マティアス・ヒッツ氏(左)と片桐宏典さん(右)、

1982

 

 


諏訪1978

諏訪湖国際彫刻シンポジウム、

横沢英一氏(右)と片桐宏典さん(左)、

1978

 

 

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編集後記

 

私が片桐 宏典さんとケイト・トムソンさんに初めてお会いしたのは、
私が大学副手1年目の冬に、お二人の住む岩手県岩手町にある

浮島彫刻スタジオを訪問した時でした。

大自然とも言えるような広大なスタジオに姫神産の巨大な原石が置いてあり
「大学の石彫場とはスケールが違うなぁ!」と感動したのを覚えています。

 

片桐 宏典さんは私が学生の頃から、地元の美術関係者の中では、
「宮城教育大学の在学中から彫刻に夢中になって、そのままヨーロッパに渡って活動している人がいる」
と有名な存在の方でした。

 

6年前にイギリスにも本格的な拠点を構えられて、
今現在は、1年の半分がイギリス、半分が日本での活動とのことで、
2カ月か1ヶ月おきに行ったり来たりされているそうです。

 

私が今回お二人とお会いしたのは、イギリスから昨日帰って来たばかりという日の午前中、
まだ時差感覚が戻ってらっしゃらないでしょうに、仙台市内の片桐 宏典さんのご実家に
お伺いしてお話をお聴かせ頂きました。(ご親切なご対応ありがとうございます!)
片桐 宏典さんにはほぼ7年ぶり、ケイト・トムソンさんには10年ぶり位でお会いしました。

 

お二人のインタビューでは、本当に国際的に、プロフェッショナルとして活動していらっしゃる
彫刻家の内容の濃い貴重なお話をお聴かせくださいました。

 

これからじっくり紹介させて頂きますので、どうぞお楽しみに。

 

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◆片桐 宏典さん、ケイト・トムソンさんのホームページ
 浮島彫刻スタジオ 

 

スターリング大学(イギリス)での展示
 片桐 宏典さんの紹介ページ 

 スターリング大学 Corridor of Dreams 「夢の回廊」 インタビュー動画)

 (全23分中、お二人と作品が映るのは11:30~15:30頃です。)

 

◆現在開催中の展覧会です。

 

「詩的抽象」二人展 / ケイト・トムソン+片桐宏典
ケイト・トムソンの大理石彫刻、片桐宏典のスウェーデン黒御影石彫刻、伊達冠石彫刻、ドローイングなどを展示。

■会期:2016年9月23日(金)—10月23日(日)
■会館時間: 午前11時---午後5時
■休館日: なし
■会場Milton Gallery,  Milton of Crathes, Banchory, AB31 5QH, Scotland, UK
tel:Tel: UK (01330) 844 664,

■オープニング:9月23日 午後6時 -9時

※ ちょうどスコットランドにいる、という方はぜひご覧ください。

 

 

日本・石の野外彫刻―ストーンアート写真集
  藤田観龍 著(写真)  本の泉社

 

 

 片桐 宏典さんの作品写真と手記「石彫というジャンル」(318ページ)
 ケイト トムソンさんの作品写真が掲載されています。


 

彫刻家 片桐 宏典さん 第1回続き 略歴のご紹介

 

 

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