新国立劇場 オペラパレス
この日のMVPはカリニャーニ&東フィル カリニャーニさんは、ここ数年間の新国立劇場の中で最悪の演出だと思う2013年の『ナブッコ』でも素晴らしい演奏を聴かせてくれたけれど、今回も素晴らしい。ストーリーは好きになれないけれど、ヴェルディ晩年の本作の音楽はやはりすごいと思う。冒頭の嵐の音楽から迫力満点。第1幕後半の「もう夜も更けて」でのチェロも官能的で非常によかった。コントラバス奏者を増やしているのか、全体的に重厚な音を出していた。カリニャーニは、テンポを揺らし、オケを煽り、時にはオケが多少乱れてもいいかのように、咆哮のような音も引き出していたのが印象的で、この作品の魅力を存分に堪能できました。カリニャーニさんは、来シーズンの20周年記念公演『アイーダ』を振る予定ということもあり、新国立劇場からの信頼が厚いことが伺えますが、今からとても楽しみです。また、合唱団はいつもながらに素晴らしい。
2013年『アイーダ』ラダメス、2016年『アンドレア・シェニエ』タイトルロールを見事に歌ったカルロ・ヴェントレはやはり別格。最初の方は前のおっさんのせいで集中して聴けなかった(←後日改めて書きます)ためか、適正な評価は出来ないですが、声がいつものように出ておらず、音程もあれれという感じで、正直言うとあまりいいとは思えず、ヴェントレらしくなかった気がした。しかし、デズデーモナとの二重唱「もう夜も更けて」あたりの甘い歌はまぁまぁ。グンとよくなったのは休憩明け。第3幕のモノローグ「神よあなたは私に不幸のすべてを与えられた」の悲痛な歌など、後半はこれぞヴェントレという感じですごい声量。非常に素晴らしい歌声を聴かせてくれました。
デズデーモナのファルノッキアさんは印象はやや弱めですが、先述の二重唱や第4幕冒頭の「柳の歌」といった要所要所ではさすがの歌唱でした。
イアーゴのストヤノフさん。多少地味めに見えますが、オテロをじっくりといたぶり、狂気に導く悪役を嫌みたらしく演じていて好演。
日本人では、エミーリアの清水さん。お人柄も大好きなのですが、この日も素晴らしい。カッシオの与儀さんも重要な役柄ですが、特にこのお二人がよかったと思いました。
マルトーネの演出は2009年、2012年に続いて3回目。もともとはキプロス島が舞台のはずですが、どう見てもヴェネツィア。約50t の水を張った舞台は確かに面白いですが、かえって、水だけの舞台になってしまっている印象でした。悪くはないですけどね。後日また書きますが、席が悪いのと前の座席の人の影響で、前半の2幕は何も見えず… オテロが客席から登場したことも松明があったことも何も分かりませんでした 後半では寝室がクルクルと回転するのですが、私の席からそれを人が後ろで回しているのがチラチラと見えて、それはそれで面白かった。
【指揮】パオロ・カリニャーニ Paolo Carignani
【演出】マリオ・マルトーネ
【美術】マルゲリータ・パッリ
【衣裳】ウルスラ・パーツァック
【照明】川口雅弘
【再演演出】菊池裕美子
【舞台監督】大澤裕
【オテロ】カルロ・ヴェントレ Carlo Ventre
【デズデーモナ】セレーナ・ファルノッキア Serena Farnocchia
【イアーゴ】ウラディーミル・ストヤノフ Vladimir Stoyanov
【ロドヴィーコ】妻屋秀和
【カッシオ】与儀 巧
【エミーリア】清水華澄
【ロデリーゴ】村上敏明
【モンターノ】伊藤貴之
【伝令】タン・ジュンボ
【合唱指揮】三澤洋史
【合 唱】新国立劇場合唱団
【児童合唱】世田谷ジュニア合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団