五輪シーズンを迎えるにあたって:氷上の演技からメッセージを受け取る | 覚え書きあれこれ

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記憶力が低下する今日この頃、覚え書きみたいなものを綴っておかないと...

 

 

カナダではスポーツ記事やテレビ番組というと、圧倒的にホッケー関係のものが多い。

 

その中で何度も目に・耳にする表現があるのですが、それは

 

"~~lets his play on the ice do the talking"

 

というもの。

 

直訳すると「(誰それ)は氷上のプレイにものを言わせる」となりますが、要するに「ホッケー選手なんだから、口でああだこうだと言うよりも、プレイを見てもらった方がしっかり伝わる」という風にとらえられます。

 

では何がしっかり伝わるのか?

 

それはその選手の競技への取り組み方、アスリートとしての在り方、が主なところでしょう。

 

たとえば

 

(画像をクリックすると元記事が読めます)

 

ジョー・サキックという元コロラド・アヴァランチの名選手は鋭いリスト・ショットと頭脳的なプレイで有名でしたが、そのリーダーシップにも定評がありました。チームのキャプテンだったサキックは選手代表としてインタビューにはちゃんと応じるものの、派手さはなく、どちらかというと地味なキャラだった。でもいったん氷の上に立てばチームの誰もが彼の後に付いて行きたくなる、彼のためならどんな犠牲でも払って自分の役割を果たすのだ、という気持ちにさせる。

 

そんなサキックにこそ、「氷の上での働きが全てを語る」という表現がよく似合います。

 

 

その一方で

 

 

 

 

現在ピッツバーグに所属しているフィル・ケッセルは2006年のデビュー以来、NHLの中でも屈指のスナイパーとして知られている選手です。ところが見た目はとてもそうとは思えないような(ちょっとずんぐりした)体型で、おまけに練習嫌い。ボストンからトロントにトレードされてきた当時は地元のメディアにさんざん追い回されますが、インタビューは苦手だと言ってあまり応じませんでした。それ故にやがてトロントでは「ケッセルはやる気がない、チームではなくて自分がゴールを決めることしか考えてない、ファンサービスも足らない」などという悪評が立ち始めました。

 

でも彼の華麗なゴールを、シーズンを通しての見事な実績を、そしてトロントに在籍していた6年間で彼がいかにチームに貢献したのかを目の当たりにすると、結局誰にも文句は言えない。これもひとつ、氷上でのプレイにものを言わせる、という例だと考えられます。

 

 

さて、フィギュアスケートに話を移します。

 

北米ではそろそろ幾つかの小さな大会が開催され、国際試合にも登場するような選手たちの名前がちらほら見られます。五輪シーズンがいよいよ幕を開けたのだと胸がざわつきますが、ここいらでひとつ、自分用のメモみたいな気持ちで書いておきます。

 

Let the skater's performance on the ice do the talking.

スケーターたちにも氷の上での演技にすべてを語らせよう。

 

これから7-8カ月間、マスコミを通してたくさんの情報が出回るでしょうし、ネット上にも様々な言葉が選手自身のコメントとして拡散されることでしょう。

 

でもスケーターたちがコントロールできるのは自分たちの演技だけ。だからそれをしっかりと目に焼き付け、そこから彼らの喜びや苦しみ、勇気や情熱を受け取りたい。

 

スケーターたちの言葉を聞きたいと思ったり、彼・彼女たちが言ったことに一喜一憂してしまうのももちろん、自然なファンの心理です。

 

ましてや羽生選手のように絶妙なコメントを残してくれる場合は、私も含めてファンの期待は高まります。

 

でもそれらの言葉がどんな状況・文脈で発せられたのかとか、誰によって伝えられたのかとか、そのあたりにも気を付けなければならないので、けっこう大変です。

 

(ちょっと余談になりますが、大会の記者会見場やミックスゾーンでの、選手とメディアのやり取りを見ていると、こういった状況の中で拾われる選手たちの言葉をあまり逐一、取り上げて分析しまくるのは気の毒だな、という気がします。まあ、そこのところはまた別の機会に)

 

 

 

そこへ行くと、氷上の演技から受け取ったものを語り合ったり、比べ合ったり、ファンがお互いの世界を広げる有意義な作業を積み重ねて行くのはシーズンの過ごし方として最高に楽しいし、独自の解釈や分析が想像豊かに飛び交っていても全然、問題がない。(あくまでも見ている側の勝手な想像である、ということをわきまえている必要はありますが。。。)


ちなみにその路線で行くと、私は羽生選手の過去3シーズンの演技をそれぞれ総合して、非常に大雑把だけれど以下のメッセージを受け取りました。

 

2014-2015年:オリンピック優勝消化のシーズン

誰が休むって言ったんだよ。羽生結弦を欠場させられるのは怪我と病気だけ!(それでもたいがい、出るけど)

プログラム選択のココロ:ジェフから心を静めるためのSPを贈られ、FSは自分がずっとやりたかった曲目がソチのご褒美。


2015-2016年:開拓と飛躍のシーズン
新しい魅力を披露しての世界記録更新は嬉しかった。でもワールド二年連続銀メダルは羽生結弦に似合わない。
プログラム選択のココロ:ショパンSPの完成形と萬斎さん直伝の独創的なFSで世界の度肝を抜く。

 

2016-2017年:戦略のシーズン
怪我も乗り越えたし、プレ五輪シーズンこそ超・強気チャレンジ精神で行く → 結果:ほれ、やっぱり。
プログラム選択のココロ:SPでとりあえずブッ飛ばして、幻想的なFSでしっかり任務遂行。



はたして2017-2018年、私は羽生選手の演技からどんなメッセージを受け取るのか?

 

楽しみでしかたありません。