8月9日に記事で早々に羽生選手のオータムクラシック大会参戦について取り上げました。
この時点では、
小さい大会だっていうことを皆、知ってるのかなあ
ということを咄嗟に思ったのですが、その後、どんどんと大ごとになってしまいました。
私のブログの他にも、そこかしこでブロガーさんたち、スケートファンの皆さんがこの大会の運営に関する情報を広めてくださっていますが、そこに寄せられるコメントを読んでいて少し、ピントがずれているんじゃないか、と思わされることがありました。
ごく、単純に物事を考えると
昨年は国際移動が多く、体力的にも時間的にも負担が多かったことから、今年の羽生選手と関係者の方々はなるべく、移動距離の少ない、効率の良いスケジュールを、と望んだ。
その結果、
*8月末ギリギリまで日本で(スケートの練習ではなく)お仕事をこなした羽生選手はトロントに戻り、ようやくシーズンに向けての練習を開始する。
*みっちりと振付師やコーチ達との打ち合わせをして、トレーナーの先生とも体調を整え、大事な大事な準備をする。
それが終わると
*初戦は練習拠点の近くのバリーのオータムクラシックで足慣らしをする
*その後はまたトロントで練習に励み、レスブリッジでのGPスケートカナダに挑む
*それからは日本でNHK杯
*グランプリファイナルには当然出ると想定してバルセロナに行くけれど
*その後はまた日本に戻って全日本に備える
*そこからは世界選手権までトロントで練習するために戻り、ボストンへ
という非常に効率の良い、大陸間移動を最小限に抑えた日程が組まれているんじゃないかと思います。
こう見ると
「どうしてブライアンはオータムクラシックみたいなあんな小さな大会に参加させることを選んだんだろう」
というような疑問は浮かばないはずです。
羽生選手の体調や練習状況を考えたら最善の大会だから
それしかありません。
そこへ行くと、上記の「疑問」は次のようなことを想定しています:
ファンがたくさん押し寄せるから
会場のキャパシティを超えるから
大会運営に支障があるかも知れないから
その結果、羽生選手を含めて大会に出場する選手たちが競技に集中できなくなるから
でもそんなことまで事前に心配しながらどの大会に参加するかしないか、を考えるのは本末転倒じゃありませんか。
また、そもそも「ファンがたくさん押し寄せるから」という点についても実は問題の根源は一つしかないのです。
オータムクラシックの大会会場はすでにお知らせしたとおり、540席の客席があります。例年の様子を動画などで見ていると競技によっては、氷に乗っている選手によっては、そこそこ埋まっていますが立見席が出ているほど、とは思えません。
ここにたとえば羽生選手を目当てに通常より大幅に多いファンが来たとしましょう。それでも全員が入れない状況ではないように思います。
多少のもみ合いはあっても皆、礼儀正しく並んで入り口でチケットを買って、礼儀正しく席に着くことだってできるでしょう。
問題は、
大手ツアー会社が「チケットは確保できる」と主張し、すごい数の参加者を募ったこと、
しかも実際は主催者側と交渉が成立していないのに、
参加者に情報を正確に伝えず見切り発進でツアーの実施に踏み切ったこと。
(中には良心的なツアー会社もあって、チケットの入手手段を確認した時点で最終的な募集をしたということも聞いています。)
私はすぐに例え話をしてしまうのですが、これはたとえば
どこかの田舎町に小さなレストランがあって、そこはいつも常連のお客さんが楽しく食事をするところだった。
ある年、とびきり美味しいトリュフが手に入るらしいとの情報が入り、お客さんたちは楽しみにその入荷を待っていた。
ところがどこからからその噂が広まり、大きな町から団体客がバスで来ることになった。
「うちでは予約は受け付けないんですけど。しかもそんなにたくさん一気に来られても、入れるかどうかわかりません。外で待っていただくことになるかも知れませんし、食べていただける前に売り切れてしまうかも知れません。」
と店は言う。
それでも団体客は
「予約が取れていると聞いてたからわざわざ来たのに、トリュフが食べられないかも、って…」
と言えますか?
文句を言うとすれば店に対してではなく、無理な企画を実施したバス会社に対して、じゃないですか?
ここがひとつ、ポイントとなるところですが
オータムクラシックの開催者たちは別にどこに向けても(ましてや海外に向けてなど)大々的に宣伝して、「皆さん、どうかいらしてください!チケット買ってください!」と言ったわけではありません。
(この点はグランプリシリーズの一つであるレスブリッジのスケートカナダ・インターナショナル大会とは異なります。こちらはスケートファンなら誰でも何人でも歓迎しています。)
バリーでは例年どおり開催を準備していたところ、素晴らしい選手が来てくれるということをきっと喜んだでしょうが、そのために運営方法を変えようとまでは思わなかったでしょう。
そこに昨年までは、オータムクラシックの存在さえも把握していなかった(であろう)ツアー会社が目を付けて、交渉をちゃんとせずに強引にやって来たとしても、主催者側に対応する義務はないはずです。
反対にもしも今後、さらにツアー会社がなんらかの圧力をかけて、大会スタッフに運営方針を変えさせたとしたら、というシナリオの方が身震いします。
…と、ここまで書いておいてなんですが、私を含め、他にも心配されている方々の懸念が全て杞憂で終わることもあり得るわけです。
行って見たら「なーんだ、あんだけ怖がらせるからどうなるかと思ったら」ということになるかも知れません。だとしたら本当に嬉しいです。
私がこの記事で言いたかったのは羽生選手とブライアンたちがオータムクラシックを選んだ根拠と、オータムクラシックを運営しているバリーの方々の姿勢に対して、くれぐれも皆様が理解してくださいますように、ということでした。
今後もさらに何か情報が入ればお知らせします。