たびたびこのブログでも登場させていただいている母から昨日の朝、慌てた風なメールが届きました。
「今、なんと『しゃべくり007』にフェルナンデス選手と安藤美姫さんが出てる!」
私もちょうど、スケートファンの方々のブログでその番組のことを知った後でした。
メールは続きます。
「ハビエルちゃんは可愛いわねえ」
母はこの頃、すっかり私にならってスケートファン。「羽生クン」だの「ハビエルちゃん」だのがメールに登場します。こないだも雑誌を送ってくれるよう頼んでおいたのですがちゃっかり先に読んで、「羽生クンかっこいい!すっかり成長してなかなか男らしくなって。。。」とうっとりマークでもあったら飛んできそうな文面でした。
さて、その「しゃべくり007」、私は気づくのが遅れてほんの最後の部分しか見れていないのですが、あとで動画などを駆使して大体の流れをつかみました。
プル様だのジョニー様だの、私は海外のスケーターが日本のバラエティ番組に出ると、いつもドギマギしながら見てしまいます。もちろん、彼らとて大人であり、自分から進んで出演しているのだからどういじられようと覚悟の上なんでしょうが、それにしても時々、
「それはないだろ」
と画面に向かって言いたくなるような場面に遭遇します。
ソチオリンピックのシーズン後に「炎の体育会」の一環として日本の子役兼フィギュア・スケーターがパトリック・チャンにレッスンを受けに行く企画がありました。
そこに同行した女優さんがいきなりパトリックに「チャンさん、本当は(ソチで)金メダルが獲りたかったんですよね?」といったニュアンスのことを言い、さすがのパトリックも「How can you ask that?(そんなこと、聞くか~?=獲りたかったのに決まってるだろ)」と苦笑しながら答えたのが思い出されます。
考えてみてください。
日本の選手がオリンピックで金メダルの有力候補でありながら、ライバルに残念な負け方をしてしまう。それから一年も経たない内に、そのライバルの国からテレビ局がやって来て「ジュニア選手にレッスンをして欲しい、それを番組にするから」という企画を持ちかけられる。当然、そこで断っても良いのだけれど、「子ども相手のレッスンだし、まあいいか」と承諾する。
すると選手に同伴したコメディアンから薮から棒に「本当は金メダル欲しかったんでしょ?」と投げかけられる。
カメラが回っている前で、一体、どう答えたら良いのでしょうか?
その選手のファンが番組を見たらどう思うでしょうか?
まあとりあえず、私は一瞬、凍りましたね。
そんなわけでフェルナンデス選手がどんな感じで番組の出演者たちに扱われるのか、彼がどんな風に立ちまわるのか、ちょっと心配しながら見守っていたわけです。
で、感想は:
ハビエルの(性格の良さによる)一本勝ち。
最初から最後まであのトレードマークの笑顔を絶やさず、適当にノリが良く、しかし品性を保ち、持ち前の爽やかさで司会者や出演者をしっかりと自分の味方につけることに成功しました。(おまけになんとスーツの似合うこと!!理想的な体型と着こなしです。)
安藤さんが通訳として付いていてくれたとは言え、ハビエルにとってこの番組は「アウェイ戦」のようなものでした。言葉はほとんと分らない、だからと言って出演者は必ずしも自分に遠慮会釈してくれない。番組を盛り上げるためには奇天烈なリクエストも多少ぶしつけな質問も仕方がない。
それら全てにハビエルは見事に対応しました。素直な性格が功を奏して(彼はきっと「性善説」を信じているんだろうなあ)何を言われても、させられても、ニコニコしながらごく自然にスルリと通り抜ける。これでは誰も彼に意地悪をしようと思えなくなってしまいます。
無事に終わったことに胸をなでおろしつつ、この間のワールドシンクロ大会の開催中に広報担当のEちゃんから聞いたフェルナンデス選手にまつわるエピソードを思い出しました。
2012年のGPスケートカナダ大会(ウィンザー市開催)でのこと。男子の公式練習の時間が来て、選手たちがコーチと共にホテル前から送迎バスに乗り込みました。ところがバスが何らかの故障により、発進できない。
練習時間に支障をきたす、ということでたいていの選手がイラついたり、パニクったりして、バスの中は騒然。Eちゃんも対応に追われたそうです。
代わりのバスを手配したけれど、ちょっと時間がかかる。待てない選手はタクシーに乗ったり、とりあえずバスから降りる者がほとんど。
そんな中、ブライアン・オーサーが「ハビ、どうする?タクシーにする?次のバス待つ?」と聞くと、フェルナンデス選手は止まったバスに座ったまま、
"Nyaaah, I don't care"
「んー、なんでもいい」
と呑気に言ったそうです。
Eちゃんは「その時のハビの反応が忘れられない」と笑っていました。
"It's like everything rolls off his back"(「何があっても動じないんだよね」)
「で、その大会を優勝したのはハビなんだから」とも。
愛すべきキャラ、ハビエル・フェルナンデスには日本のバラエティ番組も歯が立たないのだ。