ハイチ大地震の被災者に、激励の千羽鶴を贈ろう――。こんな運動を若者たちがミクシィで始め、賛否両論が出ている。情勢が落ち着いたころに届けるとしているものの、文化の違いを無視しており、むしろ医薬品や飲食物を贈るべき、と批判も出ている。ハイチの人たちは、どう受け止めるのか。

 千羽鶴を贈る運動は、呼びかけ人である大阪府在住のクリエーター女性(21)が2010年1月15日、ミクシィの日記やコミュニティを通じて訴えた。

■批判殺到も、あくまで「届けたい」

 地震で家族を失ったハイチの人たちに、1人ではないと元気づけてもらうのが狙いという。千羽鶴は、NGOなどを通じて、ハイチの情勢が落ち着いたころに被災地に届けたいともした。そして、1000人で作ろうと呼びかけたところ、参加したいなどの反響が寄せられ、25日には産経新聞がその運動を記事にした。

  ところが、その後、2ちゃんねるなどで、運動が迷惑であり、金や物を贈るべきだとの批判も続々書き込まれるようになった。ミクシィの日記でも、ハイチで援助活動中というユーザーが25日、この運動を「足手まとい」と批判して、さらに騒ぎに火が点いている。

 このユーザーによると、ハイチは貧困率が高くずっと情勢不安で、たとえ震災前の状態に戻ったとしても、千羽鶴を贈ることには賛成できないとした。調理用などに燃やされるだけであり、NGOに危害が加えられる恐れや医薬品などを運ぶ飛行機のスペースが削られる心配があるという。

 さらに、ユーザーは27日の日記で、ハイチで信仰されているブードゥー教では、鶴は「悪魔の使者」として縁起が悪いとされており、千羽鶴を贈るのは失礼に当たると訴えた。

 この騒ぎで、クリエーター女性の賛同者も含めて、ミクシィの日記やコミュニティが炎上。日記の公開が制限されたり、トピックが削除されたりしている。

 クリエーター女性は、取材に対し、「いろんな意見を受け止め、今後の動きを検討したいと思っております」と言う。とはいえ、千羽鶴は、現時点ですでに1000羽以上集まっており、時期をみて届けたい考えだ。「文化や国境も越えて想いを届けることはできると思っております」としている。

■「渡したとしても理解は難しいのかな」

 ハイチに詳しい援助団体は、この騒ぎをどうみているのか。

 NPO法人「ピースウィンズ・ジャパン」のある担当者は、日本から千羽鶴を贈る動きは聞いていないとしながらも、こう話す。

  「確かに、心を込めて作ったと理解してくれるハイチの人たちはいるかもしれません。しかし、個人的な意見としては、渡したとしても理解は難しいのかな、と思います。文化や宗教などの違いで、気持ちは伝わっても、『そんなもの』となるかもしれないからです。情勢が安定すれば渡すのは不可能ではなく、NGOが支援した地域に渡すのならいいかもしれません。ただ、食べられるものの方がありがたがられる可能性はあります」

 代表者が被災地で援助活動を始めたという「ハイチ友の会」の関係者は、ブードゥー教が支障になる可能性も認める。

   「ハイチの人たちは、ほとんどがカトリックですが、アフリカ系宗教が一部で信仰されています。千羽鶴を贈るには、配慮がいるかもしれませんね」

 ハイチには、援助物資を届けることさえ困難だという。

  「直接ハイチには入れず、赤十字さえドミニカから陸路で入ったほどです。今はコストがかかりますので、物品は受け付けておらず、千羽鶴を届けるのはかなり後でないと考えられません。それでも、貧しい国ですので、学校や教会が運営できるようになって、そこに届けることぐらいしかできないでしょう」

 もし千羽鶴を贈れるようになったとしても、ハイチの人たちはどう受け止めるのか。

 ハイチ共和国大使館の関係者は、「自己満足からではなく、相手の気持ちを考えて贈る方がやはり喜ばれます。千羽鶴の意味を伝えるのも、そんなに簡単ではないかもしれません」と話す。一方で、「鶴のことについては、問題はそんなにないと思います。日本から来れば、悪魔などと結びつけることはないからです。日本を知っている人を通じて言葉で説明すれば分かり、たぶん喜んで受け取られると思います。大使館に来れば、対応を考えますよ。危害については、気をつければ大丈夫でしょう」と話している。


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