佐賀県と南日本段ボール工業組合が防災協定締結
少し時間はさかのぼりますが、平成25年12月19日、佐賀県と九州地区の業界団体である南日本段ボール工業組合は、災害時避難所への段ボールベッドの供給に関する防災協定を締結しました。都道府県と業界団体との協定の締結としては初めての事例になりました。
市区町村単位の防災協定は、約4年間で150以上締結しましたが、全国すべての市区町村と締結するには10年以上かかってしまいます。それまでに、もし大災害起こってしまうと、締結自治体と未締結自治体でベッドの供給に濃淡がでて、すべての避難者にベッドを届けることができません。そのような観点から、都道府県にお願いをして、それぞれの市区町村同士の連携を図ってもらうために都道府県単位の締結を目指してきました。
その内容は、佐賀県県下のいくつかの市町村にまたがる大災害が発生した場合、該当の市町村と連携して県から業界団体に支援要請してもらい、その72時間後を目標に段ボールベッドを生産して届けるという仕組みです。基本的に段ボールベッドの備蓄は必要ありません。段ボールベッドなら72時間もあれば、何千、何万床でも作って届けることができるからです。
協定の流れを説明する筆者
特に大きな災害の場合は、被災地の段ボール会社は同じように被災して操業できなくなることが考えられます。ですから、被災を免れ、その上で供給可能な最寄りの段ボール会社を業界団体が佐賀県に紹介して、供給します。いわば供給のバックアップを取っておくことができるということです。
大災害が発生して避難所が開設されると、被災者はとにかく避難所に向かいます。特に電気や水道などライフラインが機能を停止すると、住居が破壊されていなくても水や食料を求めて避難所に集まって来たり、余震などで不安がある場合は避難所で一夜を過ごすことが多いと思います。
しかし、数日経つと住居が破壊されていない被災者はだんだんと自宅に戻り、住居が破壊されて自宅には住むことができない人は、避難所に残って長期の避難生活になってしまいます。この長期の避難生活を強いられる人々に段ボールベッドを支給する仕組みです。
避難生活では、体育館などに雑魚寝をすると体内に血栓ができやすくなり、場合によってはその血栓で肺塞栓症になり最悪の場合突然死してしまいます。いわゆるエコノミークラス症候群です。
また、高齢者は足腰が弱っていることが多く、昼も夜も床に雑魚寝をして動かないでいると、生活不活発病になり寝たきりになってしまいます。ですから高さ35㎝の段ボールベッドを使用すれば、段差を利用して立ち上がりやすくなり活動性が低下しにくくなるわけです。
特に被災された人は、精神的なダメージを受けていることが多いのですが、せめて体だけでも楽になるようにベッドを使用することが大事です。なぜなら気持ちと体はリンクしているからです。落ち込んだ気持では体も弱っていきますが、少しでも体を休めて元気を維持すれば気持ちも少しは楽になるようです。
このような、段ボールベッドの供給の仕組みを、できるだけ早く全国に構築することで、避難所での二次的な健康被害を防いで行かなければなりません。
避難所にいる方は災害から命を守れた幸運な人です。その幸運な人が避難所で命を落としてはいけません。
津波や地震など直接的に災害で亡くなるのはある意味致し方ないと思います。しかし、二次被害で亡くなるのは絶対に容認できません。なぜなら防ぐ手だてがあるからです。
大阪府も防災協定締結
続いて、平成26年7月29日には、大阪府と西日本段ボール工業組合が、災害時避難所への段ボールベッドの供給に関する防災協定を締結しました。今後、周辺の都道府県にも波及すると思われるので、人口885万人を擁する大規模自治体と協定が結ばれたのは大変有意義なことです。
平成27年12月現在、佐賀県、大阪府、長崎県、大分県が締結。これからどんどん拡げていきたいを思います。
手間と時間がかかる交渉
大阪府との締結は、交渉開始から2年が過ぎていました。担当の方はこの活動に大変共感してくれて、平成25年5月に開催した”ストップザ雑魚寝シンポジウム”の際もシンポジストとして参加をしてくれました。それでも2年です。佐賀県も時も、担当者はすごく積極的に動いてくれて、公務員とは思えないほどの情熱を感じました。それでも1年以上かかりました。
大きな組織は事がなかなか進みにくいです。だいたい締結までの訪問回数は最低5回以上はかかりますので、出張費用も時間もかかるのですが、全国の都道府県と防災協定を結び、段ボールベッド供給の仕組みを早く作らないと、またいつどこで大災害が発生するかわかりません。早く全国に網の目のように防災協定を張り巡らさないといけないと思っています。
私達の会社、Jパックス㈱のホームページです。
続く